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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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伏魔殿

 俺達は城門から町の中へと入る。レインダールの大通りは活気もあり、その様子は他の町――例えば王都のメインストリートの様子と比べ、パッと見た感じ違いはあまりないように見える。

 大きく異なる点は、町を歩く人達の出で立ち。観光客以外だとローブ姿の研究者や、学園の制服らしき物を着ている人物の姿もある。メインストリートには研究資材を始め、勉強するための参考書なんかを販売している店もあるのだろう。結果として他の町にはない、独特の人混みが形成されていた。


「これが研究者の町……その世界というわけね」


 ミリアも人々が今まで訪れた町とは違うと認識し、そう呟いた。


「そして……なるほど、あれが目的地ね」


 次いで彼女は言う。メインストリートの先、町の中心部には、他の建物と一線を画するほどの大きさを持つ建物が。城のように権威を示すような出で立ちではないが、その見た目は城塞と変わらないものであり……ミリアの言うとおり、あの場所こそ図書館である。


「正直、図書『館』と呼称するのも躊躇われるほどの大きさではあるな。言い回しとしては微妙だけど、図書『城』と言ってもいいか」

「書物のために城を建てるとは、さすが研究者の町といったところかしら」

「研究者にとっては研究成果こそが何より価値のあるものだ。それを集積する場所はもっとも堅牢であるべき、というのは至極当然な話かもしれない」

「彼ら的には宝物庫かしら?」

「そういう見方もできそうだな……あいにく、蔵にしては大きすぎるけど」


 まあ、多種多様な研究機関がある以上、大規模な書庫を用意するのは当然、と言えるかもしれない。


「……ねえ」


 ふいに、アルザが俺へ向け口を開いた。


「それだけ色んな研究が集まっている場所なら、情報はありそうだけど……逆に、魔族とかが手を伸ばしている可能性は?」

「気になる部分ではあるな」


 俺の言葉にアルザとミリアは見返してくる。


「当然ながらこれだけ人が集まっている以上、権力争いみたいなものも当然あるし、力や知識を欲して魔族と手を組み良からぬことをしでかす人間もいるだろう……魔族絡みじゃなくとも、国から予算を得るために足の引っ張り合いをするとか、研究をしたいがために露骨に悪評を立てるとか……ある意味、王城に比肩する伏魔殿と言えるかもしれない」

「……あんまり関わり合いにはなりたくないね」

「俺も同感だ。でも、資料を調べる……それこそ、あの巨大な図書館で調べ物をするくらいなら問題はないよ。観光客がいることからわかるように、この場所はオープンだ。もちろん研究施設内に踏み込めばどうなるかわかったものじゃないけど、公共施設なら面倒事もないだろうさ」

「なら、いいけど」


 アルザはチラチラと周囲を見回している。そこで俺は、


「よさげな店を見つけたか?」

「さすが学生の町、ってところかな。安くて量が多そうな店がたくさんある」

「頭を使えば腹も減るからなあ……それに、学園だけを見れば武闘派も結構多い。宮廷魔術師なんかを多数輩出している学園もあるし、当然そういう所は研究よりも実戦を重視しているからな。闘技大会と比べて規模は小さいけど、この町が主催の魔法大会、なんてのもあるんだ」

「へえ、そうなんだ……ディアスは興味とかないの?」

「俺は以前、研究に参加してこの町のことを色々と知った結果、ここで研究をしようとは思わなかったな……魔法大会とかにも興味はない。あ、これは権力争いに辟易したとかではなく、純粋に俺に合わないだろうな、と思ったからだ」


 ただ、以前あったオージュ……彼と研究を行った経験を踏まえると、今なら多少違う見解になるかもしれない。


「ま、とにかく深入りしなければ問題はないさ。単に調べるだけだし、騒動が起きることはないだろ」

「でも反魔王同盟がこの町にも影響を及ぼしていたら?」


 ……あり得ない話ではないし、研究機関の中にギリュア大臣の息が掛かっている場所だってあるかもしれないわけで、そう考えると騒動が起きる可能性はゼロじゃない。


「まあ、さすがにこれだけ人がいる中で自発的に騒動を引き起こす輩はいないだろ」

「なんだか段々と自信がなくなってきた言い方だね」

「ははは」


 乾いた笑い。たぶん大丈夫……だよな?


「ちなみにだけどディアス、リューオン研究所もここにあるの?」

「いや、別所だ。霊脈の恩恵を受けなければこの町に研究機関を構える意味はないし、他の場所に施設を建設するケースもある。研究はここでしかできないわけでもないからな。あくまでやりやすい、というだけで」


 と、俺はここで飲食店が目に入った。時刻は昼に回ったくらい。そろそろ腹が減ってきたな。


「宿を探す前に食事をするか。俺が店を決めて良いか?」

「あてはあるの?」

「ああ、ここを訪れた際に利用した店だ。値段なんかもまあまあだし、問題なければそこにするけど」


 俺の言葉に対しミリアとアルザは否定せず、俺の案内によって店へ入ることとなった――


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