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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第七章

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探究の成果

 俺はヘレンと砦の中を見て回り、騎士団の魔力の質を逐次確認していく。で、その結果どういった魔法を使うべきかの判断はできた。とりあえず彼らに効くものを付与することはできそうだ。


「あとは戦士団だが……現地に集合してからでもいいか。そんな人数というわけじゃなさそうだし、調整はできるだろ」

「なら、ディアスの仕事は終わり?」


 ヘレンからの問い掛けに対し俺は首を左右に振り、


「修行とかオージュとの研究によって、強化魔法にも少しは進歩の兆しが見えた。今回騎士団に行う魔法も以前と比べればより効果的になる……かもしれない」

「そこは断定して欲しいところね」

「実際、どのくらいやれるのか俺も未知数だからな……というわけで、部屋に入って作業するよ。個室だよな?」

「ディアス達は貴重な戦力だし、ちゃんと個室よ。ま、その分しっかり働いてもらうけど」

「……念のため言っておくが、ヘレンは前線に出ないんだよな?」

「私が出たらさすがに騎士達も大慌てだろうし、ね」

「切り札として後方にいる、といった感じかな」

「そうなると思う」


 ――本人は不満そうな顔をしている。最前線に立って指揮したいんだろうな。


「ここは俺やアルザが頑張るからなんとか矛を収めてくれ」

「わかった……その代わり、満足のいく形で勝ってね」

「ヘレンが言う満足とはどのくらいだ?」

「魔族を全て滅ぼしてギリュア大臣に関する資料をゲットする」

「資料については正直どうなるかわからないぞ……そもそも、魔族が逃げ帰っている時点で証拠隠滅されている可能性もあるし」

「そこは賭けだけど、魔族側からすればいけると思っているかもしれないし、そうなったらわざわざ資料を破棄しようなんて思わないでしょう?」

「……魔族が複数いることで根拠なく勝てる、なんて思っていると?」

「魔族って、血統とか能力とかを踏まえて序列をつけたがるけど、徒党を組むとなぜか増長しがちだよね」


 ああ、うん……まあそうだな、と俺は小さく頷く。


「魔族特有の考えなのか?」

「ピンチに陥った場合でも、同胞がいるから大丈夫だ、自分達が人間に負けるはずがない……と、理由もなく勝てると思い込むのよね」


 うん、確かに……そうなったら俺達は戦いやすくなるな。


「今、窮地に追い込まれた魔族は立て続けに作戦を失敗している状況。拠点へ舞い戻り他の魔族にとっては迷惑極まりないけど……潜伏する魔族達は仕方がない、ここらで人間に思い知らせてやろう、みたいな感じでいると思う」

「ああ、なんとなくわかる」


 そういう状況が頭の中で想像できる……もちろん、そうだと断定できるわけでもないけれど、追い込まれた魔族というのは割とどんな生い立ちでも似たような動きをすることが多いので――


「私は霊脈の確認と騎士達にディアスのことを通達してくる」

「出発はいつだ?」

「準備が整い次第すぐ……だけど、少々時間が掛かる。明日は無理だろうから、明後日だね」

「それでも魔族達に策を仕込む隙は与えないだろうし、それでいいだろう」


 ――そして俺は用意された部屋へと入り、強化魔法の準備を始める。ヘレンが言ったとおり、ある程度騎士達の特性をつかめば通常使っているものより強力な魔法は使える……のだが、こっちも時間との勝負になりそうだ。

 やり方そのものはヘレンに語った通りだ。しかし、色分けをして魔法を付与するにしても、細かい微調整については慎重にやらないといけない。そこが少しでもズレてしまうと、効き目に大きく影響する。


「明後日か……ま、明日一日没頭すればなんとかなりそうか?」


 呟きつつ作業を開始する。魔力を練り上げ確認した騎士達の魔力を頭の中で考察し、ベストな魔法を組み上げていく。


 ――ここで、オージュとの研究による効果が出た。この作業は言わば研究に近い。魔力の質を見極め、検証し続ける。身の内で魔法を構築するため研究施設など必要ないけれど、実験を繰り返し考察していくのは間違いなく研究のそれだ。

 オージュとそれを事前に行っていたことによって、自分自身の魔力について考察がある程度済んでおり、応用ができた点が良かった。さらに研究を行った実績から、やり方のコツみたいなものをつかんで今まで以上に集中できた。


 特に集中の維持が、俺にもっとも恩恵をもたらした。今までであれば、作業をしていて一時間もすれば集中が途切れてしまうくらいだったのだが、今は没頭できる……作業のペースは以前と比べ段違いに早く、明日一日費やせば完成――などというレベルではないかもしれなかった。


「思った以上に……早く終わりそうだな」


 核心に近い呟きを行いつつ、俺は作業を続ける。



 そして――翌日の朝には完成し、残る時間は決戦に備えて休めるだけの時間を確保することができたのだった。


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