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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第一章

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侵攻の真実

 ある可能性……何やらきな臭い雰囲気であり、俺はオーベルクの言葉を待つ。


「依頼内容を語る前に一つ質問がある」


 と、オーベルクはまず俺へ尋ねる。


「魔王と直接戦った君は、その戦い……どのように感じた?」

「どのように……それはつまり、魔王に何か感じるものがあったのか、ってことか?」

「そうだ」

「……正直、戦っている間は必死で魔王の内心なんてものを考える余裕はなかった。とはいえ戦う前は、なんで侵攻してきたのか疑問に思ったことはあったし、戦士団の中でも首を傾げる人間はいたな」

「うむ、そこについては魔族の中でも疑問を持つ者は多かった」

「魔王がなぜ人間界に侵攻したのか……その理由については誰にもわからないと?」

「そうだ。人間の君達にしたら単純に野心があった、と考えれば一応筋が通る……そもそも、魔王がなぜ戦争を引き起こしたという理由まで考察する人間は少ないだろうし、確かめる手段もない」

「後の歴史家がこうかもしれない、とか適当に推測して本にでも記述するんじゃないか?」

「かもしれないな……さて、私が語るのはその部分だ」

「何か知っているのか?」

「知っている、とまでは言えんな。私が言いたいのは……」


 と、オーベルクは俺の目を真っ直ぐ見据える。


「――此度の魔王が引き起こした戦い。それは謀略によるものであり、魔王はそれに知らず乗っかったという形らしい」

「……乗っかった?」

「魔王自身が決めたわけではなく、誰かが魔王を戦うように誘導した」

「もしそれが真実だとしたら、あの戦いには裏があって、まだ終わっていないということか?」

「その可能性がある」


 またずいぶん大層な話だな……。


「とはいえ、だ。魔界は後継者争いが始まっている段階で、魔王をそそのかした何者かが動いている様子はない」

「……現在の魔王候補の誰かが仕組んだとは考えないのか?」

「その可能性もあるが、だとすれば仕組んだ輩の目的はわかりやすいから問題はない」

「自分が魔王になること、だからな」

「ただ、私の見解としては現在の状況は予定外なのではないかと考えている」

「ああ、つまり魔王が人間に負けるとは思わなかったと」

「そうだ。よって、仕組んだ者がいるとしても、自分がそそのかしたとバレないよう潜伏している可能性もある」


 だとしたら、俺達は敵の目論見を潰したことになるわけだが……。


「それで、俺は何をすればいいんだ?」

「先も言ったが、興味があれば調べてくれといったレベルの話だ。君が立ち会った魔王との決戦にはどうやら裏がある……最大の問題は、これが魔族の仕業なのか、それとも人間の仕業なのかわからないことだ」

「ちょっと待て、人間の仕業?」

「私の知人に、魔王に近しい存在がいたのだが、人間とやりとりをしている手紙を発見したらしい」

「おいおい……本当に面倒な話になってきたな。でも、仮に人間の手引きだとしても魔王が勝つことが前提の謀略だろうな」

「ああ。現状は予想外だろうから、敵も右往左往しているに違いない……が、捨て置くのはまずいだろうと考える」

「……それで俺に話を振ったのか」

「とはいえ強制ではない。魔王が滅んでいる以上は何かがある可能性は低い……ただ、真実があるとしたら、興味はないかね?」


 ――俺にここまで話したのは、俺が魔王との戦いに臨んだ人物だから、なのかもしれない。


 そしてオーベルクが語った内容だが……俺は魔王の姿を思い出す。圧倒的な存在感と、暴虐とも呼べる魔力。


「……つまり、俺は人間側に何かないか調べればいいってことか?」

「そうだな。とはいえ、期限もなければどうやって調べればいいかもわからない話だ。報酬などを支払うことはできないぞ」

「俺だったら動くかもしれない、と期待して話を振ったんだろ?」


 オーベルクは否定しなかった……まあ、魔王に関することだし興味を抱いたのは間違いない。


「わかった。重要情報を教えてもらったし、興味が湧いたら調べてみる」

「うむ、ありがとう」

「別に礼を言われることもないけどな……魔物退治については、滞在中に実行すればいいだろ?」

「そうだな」

「ミリアのことについては彼女に確認してもらって……俺からは何も言及しないから、そのつもりで頼む」

「いいだろう」


 ――そうして話が終わり、俺は部屋を出た。そして、大きく息をつく。


「ずいぶんと濃い話だったな……」


 ミリアの件は別段苦にならないし問題はない。魔物討伐についても依頼主が魔族というだけで、今までとやることは変わりない。

 しかし、魔王の侵攻に対する真実……か。


「戦いが終わった以上、完全に蛇足ではあるけど……ま、何かの縁だ。調べるだけ調べてみるか」


 もし周辺に誰かいたら「当てはあるのか」と問い掛けられたことだろう。それについては、確実に情報がもらえるのかどうかわからないが、候補はある。


「とりあえず、手紙を書くところからスタートだな」


 俺はそう呟くと、自室へ戻るべく歩き出した。


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