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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第七章

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執念の研究

 俺達は元の戦場に戻ってくる……と、休憩をするアルザやオージュ、そして騎士達の姿があった。


「突然魔物が消えた」


 と、オージュは語った。どうやら青い瞳の魔物――そのリーダー格を倒したことで消えてしまったらしい。

 魔族が魔物を生み出す場合、魔族が倒れれば魔物が消滅することもある。今回はどうやらそのケースと同じようで、隊長の騎士はしばし思案した後、俺達へ言った。


「念のため、探索を続行しましょう。索敵を行い、青い瞳の魔物……それが消えたか確認します」


 そして俺達は索敵魔法を使用して森の中を調べ回ったが……青い瞳の魔物を発見することはできなかった。魔物を目撃しても全て金色の瞳を持つ魔物であり、俺達の姿を見たら即座に逃げるため、交戦することは皆無だった。

 結果として交戦は一度だけかつ、それで決着がついてしまったらしい……金の瞳を持つ魔物は健在であるため、騎士達としては判断が難しいところなのだが、一通り調べた後に隊長は述べた。


「ひとまず騎士団側へ報告を行います。金色の魔物をどうするかについては、協議が必要ですし」


 まあそれもそうだな……というわけで、俺達は村へ帰還することに。

 騎士達としてもひとまず騒動については終わり、と考えている様子だった。けれど結局青い瞳を持つ魔物の出所についてはわからないままであり、


「正体不明の魔物については少々気に掛かりますが……これ以上調査をしてもおそらく情報を得ることはできないでしょう」


 隊長としてはそういう結論に至り、これ以上の調査については消極的な様子だった。


「金の瞳を持つ魔物については健在なので、当面の間は観察が必要ですが、今回のように大規模な調査隊が動くということはないと思います」


 ――ひとまず、騒動については終結か。実際は魔物のヌシによる協力があってのことだが、村に被害が出なくて良かった。

 この日の夕刻には解散を言い渡され、報酬については別途オージュの家へ持ってくることになった。俺達は彼の家へと戻り、夕食をとる。


「とりあえず、被害もなく対処できたことは良かった」


 オージュはそう今回の騒動について感想を述べた。


「まさか魔物のヌシによる協力があるとは思わなかったが……ディアス、今日中に昨日と同様ヌシが来るんだな?」

「ああ、おそらく夜に入ってから魔物がやってきて、魔物のヌシの所に案内すると思うが……今回はオージュやアルザが立ち会うか?」

「いや、相手に警戒されて情報がもらえないとなったら面倒だ。ディアスとミリアさんの二人で対応、でいいんじゃないか? そちらが良ければ」

「俺はそれで構わないよ。ミリアは」

「私もいいわ」


 というわけで、こちらの対応は決まった。夕食をすませた後、俺はオージュへ一つ提案する。


「オージュ、早速資料を見せてくれないか?」

「構わないが、ディアスも物好きだな」

「ちなみにだが、研究内容を見せることに抵抗はないのか?」

「別に。自分のことを突き詰めたものだから他者に価値があるのかもわからないし、何か役立つなら俺としては嬉しい」


 オージュは倉庫から色々と資料を引っ張り出してくれた。俺は紙束を受け取り、読み始めることにした。

 ミリアとアルザが温泉に入ろうとしているタイミングで、俺は資料に没頭した。内容としてはオージュがどれだけ魔法開発に取り組み、研鑽をし続けたか……それが明瞭にわかるものだ。


 正直、俺はここまで自分の技術を高めようとは思わなかった……いや、強化魔法を用いて戦士団の一員としてやれるだけのことはやった。でも、それはあくまで戦闘技術という面である。自分の魔力のことを追及し、それを技術向上に活かすというのは……俺とはベクトルが違う手法であり、また執念とも言うべき研究がオージュの強さを支えていた。


 彼としては限界を感じて引退をしたとのことだが……これほどまでに研究を続けてきたのだから、何かしら活かすことはできるだろうとも思う。まあ限界を感じ冷めてしまったのであれば仕方の無いことなのかもしれないが……。


「……うん?」


 色々と考えていながら読んでいたのだが、俺は資料の内容に違和感を覚えた。それが何なのか文面を読んでいくことで理解し始め――


「……これは」

「どうした?」


 俺の顔つきが変わったことで近くにいたオージュが反応した。彼は食器を片付け魔物のヌシの使いがいないか外を確認しているところだった。


「何か気になることでも?」

「……ああ、えっと」


 とはいえ、俺としてはどう説明して良いのか咄嗟に判断できなかった。資料を読んだことで気付いた違和感。それが明瞭な形となり、どう話すべきか思考する。

 そうこうする内にミリア達が戻ってくる。俺も温泉に入るか――そう思った時、外から気配がした。


「お出ましだな」


 オージュも気付いた。俺はひとまず資料についてのことは棚上げし、魔物のヌシと話し合いに応じるべく、ミリアと共に家を出たのだった。


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