表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第七章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

385/487

秘密裏の作戦

 魔物のヌシは最後に言いたいことを言って立ち去った。残された俺とミリアは少しの間沈黙し……先に口を開いたのはミリア。


「なんというか、驚きの連続ね」

「ビックリ案件ではあるな。ただ向こうは手慣れていた。交渉事が初めてでないことは理解できた」

「信用できるのかしら?」

「魔物のヌシとしては平穏に暮らしたいという思惑があるんだろう。全面的に信用するというのは難しいが、無碍に扱って敵を増やすのも避けたい。オージュとも相談するが、まあ手を組むという方向で落ち着くだろう」


 というか、言外に断ったら面倒なことになるぞ、みたいな雰囲気はあった……こちらが何もかも信用しないというのも想定済み。利害関係で手を組むという形に終始すればそちらも問題ないだろう、という内容になっている。

 本当に魔物かと思ってしまうほどの交渉術である……とりあえず、オージュに相談してみようと思い、ミリアと共に帰ることにした。






「……はあ、なるほどな」


 そしてオージュへ伝えるとなんだか微妙な顔をした。仕方のない話ではある。


「正直、相手がディアスじゃなかったら夢でも見ていたんだろ、で終わる話だな」

「残念だが事実だ……俺達がどう決断するにしろ、金の瞳を持つ魔物……そのヌシは、青い瞳の魔物を倒すために動くようだ」

「で、人間が討伐すると」

「そうみたいだな。なおかつ魔物の長を瀕死にして、追い込むことで情報も手に入れる」

「そこまでやるのは難しいと思うんだが……だが、一気に事態を解決するには良い方法ではある。問題は、果たして魔物のヌシが信用できるかどうか、だな」


 俺は小さく首肯した。結局はそこに行き着いてしまうわけだが、


「まあ、魔物のヌシの眷属……その動きからして、人間とは対立したくないという思惑は感じ取れた。全面的に信用できなくとも、敵対することがないのは間違いないんじゃないかな」

「……取引とか交渉というよりは、利害により一時的に手を組むという感じか」

「魔物のヌシもそれなら信用できるだろう、という考えみたいだな」

「正直、魔物と組んで大丈夫なのかという不安要素が大きいわけだが……けれどそれ以上に、もし魔物のヌシに別な思惑があろうとも、提案に従って動いた方が良いという内容だな」


 うん、まさしくそれだ。俺達は魔物の主の提案に対しどうすべきか悩んでいるわけだが、その大きな理由はここまで人間の考えを汲み取った上で提案をするヌシの高い知性に驚愕し、少なからず畏怖を抱いているためだ。

 ただ、非常に好都合なのもまた事実……上手く事が運べばトントン拍子に話が進むだろう。


「ディアスはどうすべきだと考える?」


 オージュが問い掛ける。それに対する答えは、


「魔物のヌシからの提案で驚愕するばかりだけど、手を組んだ方が事態の解決は早いと思う。それに、青い瞳の魔物はまだ人里を攻撃してはいないが、そういう事態がいつ何時始まってもおかしくない」

「そうだな……人命などを優先するなら、手を組むべきか。ただ騎士には話さないんだな?」

「ああ、魔物のヌシも話すべきではないと考えている様子だし、秘密裏にやろう。ミリア、アルザ、二人もそれでいいか?」


 両者は黙ったまま頷いた。そしてオージュも俺へ向け答えた。


「俺もディアスの方針に従おう……ただそうなると明日は戦闘になるのか?」

「可能性は高いな。魔物のヌシの口ぶりからすると、青い瞳を持つ魔物の長については、どこにいるのか目星はついているみたいだ。よって、俺達が調査に出た際に向こうは作戦を開始するだろう」

「で、攻撃をしている所へ俺達が向かい、魔物を倒していくと」

「問題は騎士の動向だな。金と青……二種の魔物がいるにしても、騎士が青い瞳だけを狙えと指示するはずもないし」


 魔物がいるのであれば全滅させるべきだと考えるはずだ。そもそも金の瞳の魔物だって人間を避けるように動くにしろ、騎士側の情報では安全だと断定できるものでもないし。


「ただ、俺達が交戦を開始したら金色は逃げていく……そういう動きをとったら、話は変わってくるかな」

「そういう展開なら騎士もまず青の瞳を持つ魔物を優先的に狙うだろうな……とはいえ、そう上手くいくのかわからないが……」


 ――正直、俺としては成功する可能性は高いと感じていた。理由としては魔物のヌシが上手いこと段取りしてくれそうな気がする。

 信用、とは違うのだが直に話してみて今回の提案は、必ず自分の語ったようになる……否、してみせるという強い意気込みを感じたし、説得力もあった。不安要素はあるし、戦いの流れによって予想外の事態になる可能性は十二分にあるが……今回の状況を進展させるには、ベストであることは間違いない。


「……深夜だし眠いが、作戦会議をしておくか?」


 オージュが提案する……が、俺は首を左右に振った。


「現場判断で動く必要性が高そうだし、話し合いはあんまり意味はないだろう。それよりもさっさと寝て明日に備えよう……それと明日、騎士達へ今日採取した魔力に関する調査報告はしないといけない。そこで金の瞳を持つ魔物については、いくらかフォローすべきだな――」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ