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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第七章

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敬遠する魔物

 戦いの結果は金の瞳を持つ魔物が勝利した。とはいえ数が激減し、その数は五頭にまで減った。

 俺や騎士達は戦闘を終えた魔物に対し警戒を強めながらにじり寄る。距離的には既に気付いているはず。ならば、襲い掛かってきてもおかしくない。


 やがて魔物達はこちらの接近に気付いた。俺達へ向け首を向け……しばし注視した後、背を向け五頭全部は森の中へ走り去った。


「……俺達を敬遠しているな」


 そう呟く。それと共に一つの事実が判明する。


「どうやら青と金は敵対しているな」

「そんなこと、あるんですか?」


 騎士の隊長が戸惑った様子で俺に言葉を向けた。


「魔物同士が食い合うということはありますが、先ほどの交戦は単なる群れ同士の争いという風には見えませんでした……使役している魔族同士の抗争でしょうか?」

「うーん、魔族同士がこんなところで戦闘をする理由がないんだよな。そもそも、どういう理由で戦っているのかも不明だし……かといって、他に思い浮かぶ理由があるかというと……」


 その場にいた多くの人が首を傾げる。俺はなんとなくミリアに視線を向けてみたが、彼女も首を左右に振った。


「こんなところで魔族同士が抗争、というのは考えにくいけれど……元々魔族が隠れ住んでいて、新たに入り込んだ魔族と戦っている、とすれば一応説明がつく」

「仮にそうだとしたら魔物のヌシに加えて魔族もいることになるんだが……魔族が主導して動いているにしては、ずいぶんと雑なんだよな」


 魔力を持っている人間を襲え、と命令して俺達へ攻撃を仕掛けたとしたら、力量すら察することができないということになる。青い瞳の魔物はただ目についたものを狙うだけの獣同然ということになり、魔族がこんな魔物を作成するだろうか?


 俺が疑問に思っているとミリアはさらに話を続ける。


「それに、これだけの数、魔物が存在しているのならもっと人里に被害が出てもおかしくないのに……」

「青い瞳の方も好戦的ではあるが、村へ赴いて人間に攻撃するほどの積極性はない……なんだかよくわからないな。オージュ、そっちはどう思う?」

「とりあえず、そうだな……まだ情報が少ないし、金の瞳の方も発見できたんだ。双方の魔力を採取して質なんかを調べるか」


 ――騎士側もそれに同意し、隊長は部下に魔力採取を指示した。俺やオージュもそれを手伝い、作業は十五分ほどで完了する。


「今日はここまでですね」


 そして隊長は発言した。


「夜を迎えたら危険ですし……夕刻でも魔物の動きが変わる可能性があるため危ない。夜になったら村で森側を観測して動きがないか確認しましょう」


 徹夜で見張るということか。まあ、魔物の数を考えれば無難か。


「村へ戻ったら周辺にある村々に騎士を派遣し、魔物の動きに対応できる態勢を構築します。魔物は予想以上に数が多い……動きが変化しても対応できるようにしなければ」


 本当に面倒な仕事だな……長期戦になったら騎士も疲弊する。せめて情報だけでも短期間で収集したいところだが……俺は色々頭を悩ませつつ、騎士達と共に撤収を始めた。






 調査一日目は終了し、騎士側が慌ただしく動く中で俺達はオージュの家へと戻ってくる。


「採取した魔力を調べよう」


 オージュはそう述べて色々な機具を倉庫から引っ張ってきた――騎士側も別立てで調査し、二つの情報を統合して結論を決めるらしい。得られた情報を正確に検証するには有効な手段だ。


「ディアスにも手伝ってもらうぞ」

「喜んでやらせてもらうさ……ミリアとアルザは休んでいてくれ」

「いいのかしら?」


 ミリアが疑問を呈す。魔族である彼女ならば何かしら気付くことがあるかもしれないが、


「助けが必要になったら言うさ」

「……わかったわ」


 ミリアは引き下がった。そして俺とオージュで作業を進める。


「まさかこんな形で持ってきた資材が役に立つとはな」


 オージュはそう言いつつ作業を進める。ここで俺は、


「この家に住み始めて機具を引っ張り出したのは初めてか?」

「そうだな。最初はやろうやろうと思っていたがさすがに忙しかったからな……それに、冒険者稼業を辞めている以上は、やっても意味がないと思い始め結局何もしなかった。日常生活で必要な魔法は、今までの経験があれば簡単に応用もできたからな」

「そうか……で、今回役に立ったと」

「役に立ってしまった、と表現するべきかもしれないな。本来ならこういう事態は起こらない方がいいだろうし」

「そうだな」


 ……青い瞳の魔物が出現し始めた時期を考えると、魔王を倒してから異変が起こり始めたと考えるのが妥当だろう。だとすれば俺が関わった事件と繋がっている可能性が高い。

 こんな場所にも魔族は影響を及ぼすのだろうか? もしかするとダンジョンの一つや二つどこかに存在しているかもしれない。


 派遣された騎士だけで対処できるのか? そんな思いを胸に抱きつつ、俺はオージュと共に作業を進めたのだった。


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