森の中の戦い
俺が魔法を使用し周囲にいる人間全てを強化した矢先、魔物の動きが鋭くなった。それを見て俺はミリアが先ほど語ったことを思い返す。
魔力を捕捉して襲い掛かっている……つまり、より魔力を保有する存在を獲物としているということ。つまり、魔力を取り込んで強くなろうとしている? だとすれば、普通の魔物と違うな。
基本的に魔物は生きるために……野生の動物と同様に生きるために魔力を喰う。形は違えど自然を形成する存在ではあるのだが、そうした魔物において例外も存在する。
その筆頭が魔族による使役。魔物は魔族の命令を受けて人間に攻撃をする。例えばの話、目の前にいる青い瞳の魔物が魔族の命令を受けているのならこの状況は容易く理解できる……のだが、それにしては不可解な点が多い。
色々と考察していると、騎士が動き出した。魔物達はそれに対抗するように疾駆し、騎士へ襲い掛かる……が、彼らはそれにしかと対応できる様子だった。
「はっ!」
騎士の一人が飛びかかってくる狼に対し剣を振った。狼の突進と斬撃――両者の攻防は騎士の剣が狼を弾き飛ばしたことで勝ち負けがついた。強化魔法による恩恵もあるが、それ以前に騎士の能力が高いために魔物を弾き飛ばしたのだ。
他の騎士も応戦を開始し……戦いはこちらが優勢となる。魔物も並の戦士なら厄介なレベルではあるのだが、それ以上にこちらが強い……そして魔物は逃げない。魔力を取り込み強くなるために人間を襲うのはいいが、力量を把握できないのか、あるいは例え強くても襲えと命令されているのか――
魔物の数は多いが、騎士達は一人で確実に魔物を倒していく。調査、という名目ではあるがおそらく近隣の騎士団の中でも精鋭クラスなのだろう。彼らは複数体同時に攻撃されても容易く応じることができ……時間にして十五分ほどだろうか。勝負は決し、魔物は全滅した。
「ありがとうございます」
隊長の騎士が俺へ礼を述べる。それに対しこっちは、
「援護は余計なくらいじゃないか?」
「そんなことはありません。負傷者なども出なかったのはディアスさんのおかげです」
謙遜ではなく確信を持って言っているな……それだけ彼らにとって厄介な敵だと考えているのだろう。
「俺の出番はなさそうか?」
横からオージュが尋ねてくる。そこで俺は、
「いや、これからだろう……で、だ。オージュ、あの魔物をどう見る?」
騎士の一人が魔物のいた場所の地面を調べる。魔力か何かを採取するのだろう。どうやら装備は画一的だが、解析する人間が混ざっているらしい。
「現時点では色々と考えられるな」
そうした光景を見ながらオージュは語り出す。
「ただ、ディアスも違和感を覚えているはずだ……まず野生の魔物ではない。本能に従って人間を襲うなら、村へ近づく個体が出るはずだ」
「そうだな」
「では魔族から命令を与えられている魔物? そうだとしたら、なぜ魔物は村ではなく俺達を襲う? 動き方からして魔力を多大に保有する存在を狙っているようだが、魔物の能力を踏まえれば無茶苦茶だ」
「確かに、魔物を強くするだけなら村人から狙って……というやり方が筋だろうな」
ただ魔族が命令していると仮定したらあまりにやり方が稚拙……。
「魔族の仕業とは思えないわね」
そこでミリアが声を上げた。
「なんというか、命令をして魔物を好き勝手にさせる、という方針だとしてもやり方がお粗末だし。ディアス、そういうことよね?」
「ああ、そうだ……とはいえ、まだまだ情報は少ないしさらに森の奥へ進まないといけないな。ただわかったことが一つ……青い瞳を持つ魔物は、俺達を発見したら見境無く襲ってくる」
俺の言葉に仲間やオージュ、さらに騎士達も厳しい表情となる。
「そして、だ。魔物の動き方が急に変化した場合は俺達のことを観察し、魔物に命令を与えた存在がいることになる。金の瞳を持つ魔物についてはわからないことが多いけど、青い瞳の方は魔物の動き方によって魔族の仕業なのかは判別できるだろう……隊長さん」
俺はここで隊長へ向け質問した。
「このままさらに進んで、もし青い瞳の魔物がいたら……」
「殲滅したいところですね。ただ、先ほど襲ってきた数を考えると、私達の予想以上に魔物がいる可能性があります」
そこまで語った隊長は険しい表情を変えぬまま続ける。
「どういった経緯であの魔物が生まれているのか……それをつかまない限り、調査が終わることはないでしょう。ただ、森の奥、山の奥へ進んだからといって、解決するような話かどうかも不明瞭です」
彼の言葉を聞いて、次に口を開いたのはオージュ。
「ここまではひたすら森の奥へと進んできたが、どうするんだ?」
「……まずは、さらに進んで森の状況がどうなっているのかを確かめましょう。道中魔物がいれば迎撃します。こちらの体力面などを考慮し探り探り進み、夕刻までには戻ります。とにかく、森の状況をまずは知ることからです――」




