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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第七章

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彼に関する話

 オージュは即座に村の人へ指示を出した後、村全体の雰囲気が物々しくなった。俺の方は村人について詳しく知らない以上、住民への指示はオージュに任せて索敵を行うことにする。

 ミリアとアルザについては使い魔を飛ばして現状を報告し、指示があるまで家で待機ということになった。これはオージュの判断であり、動くにしても騎士の対応が決定してから、という結論に至った。


「ディアス達がいてくれて助かったぞ」

「それは何よりだ。ところで、さっきの荷物はどうしたんだ?」

「食材のことか? さすがに持って帰るのは後にして預かってもらったよ。さて、騎士団がやってくるまではここで待機だな」

「本当に来るのか?」

「来なかったとしても、連絡をした結果を知らないと動けない」


 それもそうだな……というわけで俺達は村の周辺を索敵することに。


「ディアス、敵はいるのか?」

「少なくとも村の周辺にはいない……あ、そうだ。アルザがいれば索敵範囲なんかも上げられるけど」

「……いや、村の周辺に留めよう」

「どうして?」

「今回の魔物が、山の奥にいるヌシのせいなのかわからない。ただ、人語すら操れる魔物というのは、索敵魔法すら感知してしまう可能性があるらしい」

「こちらが無闇に魔法を使えば、刺激してしまう可能性があると」

「そういうことだ」

「厄介だな……この場所では索敵についても注意をしなければいけないのか……」


 魔物のヌシがどういう存在なのかはわからないが、オージュの話から考えると魔族と戦う場合とは違うやり方で応戦する必要がありそうだ。


「オージュ、他の村については俺達が赴いて情報を取るとかしないのか?」

「魔物の動向が気になるし、出現場所から一番近いこの村が一番気になるからな」


 彼はそう言いつつ腕を組んだ。


「判断が難しいのは間違いないが、とにかく応援が来てくれないと……」


 さすがに俺とオージュだけでは対応できない可能性が高いからな。


「なあオージュ、魔物が突然出現したことについて何か心当たりとかはあるか?」

「あったらとっくに話している。ああ、ただ」

「ただ?」

「狩人の一人が、森の方が何やらざわついている、みたいなことを十日前くらいに言っていたな。それと関係しているのかは不明だが……」

「その言葉が正解だとすると、十日以上前から魔物が動いていたと?」

「そういうことになるな。ただ人的な被害は出ていないし、戦闘自体も今回が初めてだ。よって、魔物がどういう意図で動いたのかなどは不明だな」


 ……オージュとしてはどうにかして情報を得たいと考えている様子。とはいえ、それをするには森の奥へと踏み込まなければいけないわけで、下手に魔物を刺激するのも危険だということで、二の足を踏んでいる。

 魔物を相手に色々と考察している様子は、間違いなく戦士としての一面を覗かせている。森の奥で一人暮らしている状況ではあるが、培った戦士としての力はまだ衰えていないようだ。


「オージュ、俺は索敵を続けるが……魔物が複数現れた場合は、村の人を避難させる必要とかあるかもしれないぞ」

「わかっている。一応、魔物の出現に備えて対応マニュアルは作成しているから、それに基づいて行動することになるな」

「対応マニュアル?」

「戦士としての経験から要求されたんだ。魔物が村を襲うことはない。しかし、もし現れても自分達は逃げることしかできないわけで……どう動けばいいのかもわからない以上、対策を立てる必要があると常々考えていたらしい」

「そこで魔物の対処法を知るオージュに頼んだのか」

「魔物と言っても色々と種類があるため、どんな相手にも対応できるというものではないが……今一度それを確認するか」

「俺は索敵を続ける。近隣の村からこの村に誰かが来たなら、ここへ到達する前に報告する」

「ああ、わかった」


 ――俺とオージュは分担して仕事を始める。とはいっても俺は魔法を使い周辺の様子を探るだけで、動き回っていたのはオージュの方だ。

 彼は間違いなく精力的に動き回っていた。人々も彼の言葉に耳を傾けており、信頼関係があるのだと理解できる。そうした中で俺も魔法を使い魔物を探していると知ったためか、声を掛ける者が出始めた。


 その中から俺はオージュに関する話を聞いた。この村を訪れた当初は、それこそかなり硬質な気配をまとっていたらしい。今のように村人と気軽に話せるわけではなく、狩人の家に住み始めた時は警戒していたくらいだった。しかし彼が村の助力を行うようになって信頼を獲得したらしい。


「最初、戦士としての雰囲気で近寄りがたかったとか?」


 俺は村の男性に尋ねる。けれど相手は首を左右に振り、


「いや、そういうのとは違うな。なんというか……何かに逃げているような……」

「逃げる?」

「違うかな、追われている……みたいな感じだった。とにかくそんな印象が強く残っているよ――」


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