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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第七章

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青い瞳

「オージュ、子供を連れて先に戻っていろ」


 俺の言葉を受け、オージュは頷きながら子供と共に後退する。


「援護は必要か?」

「ヤバそうだったらおとなしく退避するさ。他に魔物がいるかもしれないから、索敵だけはしっかりやってくれよ」

「ああ……頼む」


 オージュ達は走り去る。その中で魔物は相変わらず俺のことを見据えていたが……やがて、咆哮を上げた。

 見た目は漆黒かつ獅子のような姿。四本足の獣という出で立ちではあるのだが、瞳の部分は青く、どこか冷静に状況を見据えているようにも見える。


 俺は杖を構えつつ魔物の動向を窺う。今にも飛びかかってきそうな雰囲気ではあるのだが、俺の能力を探っているのか突撃などはしてこない。いや、むしろこちらの実力を察して警戒しているのか。

 かなり思慮深い魔物のようだが……もしや、山にいる魔物のヌシと関係があるのだろうか?


 とはいえ、魔物の能力についてはさすがに魔族レベルではない。魔法を撃てば確実に倒せると思うが……やがて後方の気配が消える。オージュ達はかなり距離を置いた。うん、これなら大丈夫そうだな。

 俺は杖先に魔力を集める。使う魔法は雷撃。魔物の身体能力が如何ほどなのか想像は難しいが、さすがに雷撃ほどの速度を避けるのは無理だろうという判断だった。


 その時、魔物も動いた。こちらが魔法を使うと察して機先を制するように――とはいえ、観察をしていたのがまずかった。魔物が突撃を開始した時、既に準備を終えていた。

 杖の先端から雷撃が放たれた。それは大気を切り裂きあっという間に魔物の頭部へ到達し、破裂音が響いた。俺の目には雷撃が魔物の頭を貫いたように見えたが、果たして――


 直後、魔物はゆっくりと倒れ伏し、塵となって消滅した。


「魔族が使役する魔物と比べれば弱いけど、並の冒険者や戦士相手ではどうにもできないレベルではあるな」


 強敵であるのは間違いなく、普段魔物を見かけることがないというこの場所において、相当厄介なレベルだろう。ふむ、オージュとかから魔物についてもう少し詳しく聞いておく必要があるかもしれない――

 そう思いながら踵を返した時、再び気配を感じ取りもう一度振り返った。先ほど魔物がいた場所に、別の個体。しかも今回は複数体。


「……どれもこれもさっきの個体と同レベルだな」


 人はいない山奥である以上は魔物がいても不思議ではないのだが……俺達がやってきたタイミングというのは、何か意味があるのか? それとも、偶然か?


「こんな所にまで来て騒動か? でもまあ、さすがにギリュア大臣とか反魔王同盟とか、そういうのに関わっている可能性は低いだろうけど」


 ただ相手が魔物のヌシであった場合、さすがに単なる冒険者の領分は越えてしまっている。それなりに実戦経験のある騎士団を連れてこないとどうにもならないだろうな。

 俺は色々と考えつつ、杖先に魔力を収束。魔物達は相次いで俺へ突撃を開始し――こちらは魔法で迎え撃った。






 そして……交戦後、俺は怪我も無く村へ戻ってきた。入口付近にオージュがいて、他に住人の姿はない。


「オージュ、子供は?」

「引き渡した。お礼がずいぶんと多くてどうしようか悩んでいるよ」


 見れば彼の横においてある背負いかご。そこに入りきらないほどの食材が詰め込まれていた。


「客人がいるからと半ば押しつけられた」

「アルザに食べさせればいいよ。彼女も喜ぶさ」

「そうか? なら、そういう形で消費させてもらうか……ディアスの方は問題なかったか?」

「オージュ達がいなくなった後、複数の魔物が出現したよ。でもまあ、魔法で瞬殺だった」

「複数体……か」

「気になるか?」


 聞き返すとオージュは神妙な顔つきで頷いた。


「ああ、まあな」

「こういう事例は今までなかったのか?」

「ゼロとは言わない。魔物が村の近くに出現するというケースはあったが、基本的には村に入ってくるようなことはなかったし、大体は気付けば姿を消していた。でも、今回は明らかに人間に狙いを定めていたな」

「……今までに無かったパターンか。これ、俺達がやってきたからとか、そういう理由じゃないよな?」

「さすがにディアスやアルザの噂を魔物が聞きつけ、なんてことあるはずがないから偶然だろう」


 ……さすがに俺も気にしすぎかな?


「ただ、魔物が襲ってくるなら色々と対策をしないとまずいだろうな」

「村の人は自衛とか……できるのか?」

「魔物を追い払う魔法を習得している人はいるが、あくまで追い払うだけだ」

「となると、戦闘できる人間は足りないか」

「村の人に近くの町へ行ってもらって騎士団に連絡しよう。人を寄越してくれるかどうかわからないが……魔物関係の話だ。何かしらアクションを起こしてくれる可能性はある」


 ……今は魔族や魔物に注意を払っているし、場合によってはそれなりの部隊が来る可能性はあるな。


「ただ、根本的な解決には至らない」


 オージュはさらに続ける。うん、まさにその通り。


「今回のことがこれっきりだったら良いんだが……魔物相手である以上は楽観視はできない。物々しくなってきたが……対策は立てないといけないだろうな――」


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