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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第七章

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村の異変

 薬草採取の過程は特段障害があるわけでもなく、目的地である崖まで辿り着いた。で、あっさりと目当ての薬草を手に入れることに成功した。


「俺も少しもらって大丈夫かな?」

「それなりに生えているし、大丈夫だろ」


 俺の言葉にオージュはそう答えつつ、採取に勤しむ。


「ディアス、ポーションを作成するんだよな?」

「ああ、そうだな。薬草の効能とかは知っているか?」

「魔法で解析はしているが、ディアスの方でも確認はした方がいいぞ」

「そうだな」


 俺もまたいくらか薬草を採取する。


「あ、ただポーションを生成する道具がいるか」

「持っているぞ」

「オージュが?」

「持ち歩ける程度の研究資材は持って旅をしていたからな。ただ、現在は倉庫の奥に眠っているが」

「ならそれを遠慮無く使わせてもらうか」


 俺は持参してきた袋で薬草を取りながら応じる。


「研究資材があるってことは、研究する気はあったのか?」

「ここへ来る前まで、こんな生活をするとは思わなかったからな」


 ああそうか。彼自身も研究は続けると考えていたのか。


「ただ、心のどこかで思うことはあった……どこかへ流れ着いたとしても、もう研究はしないだろうと」

「限界を悟ったから、か」

「そんなところだ」


 俺としては気になる雰囲気を見せつつ、オージュは作業を完了する。


「とりあえず、これで終わりだな。後は薬草を渡して終了だ」

「平和な仕事だな。これで食材がもらえると考えるとおいしいのか?」

「俺達が崖に魔法で登れるから楽だと思えるだけさ」


 確かに険しい場所を徒歩で進むのは危険だな。


「それじゃあ戻ろう……魔物は少ないがゼロじゃない。警戒だけはしてくれよ」


 俺は彼の言葉に頷きつつ、元来た道を進む。帰りは下りなので行きよりもあっさりと村へ戻ることができたのだが……何やら人だかりができていた。


「何だあれ?」

「……どうやら、何かあったらしいな」


 オージュは異変を察知して村人達へ近寄っていく。それに対し俺は少し距離を置いた。彼は村人にとっても顔なじみだが、こちらは部外者だ。距離を置いて様子を見た方がいいだろう。

 彼はいくらか話をしてから、薬草を依頼した男性へまずは袋を預ける。そして俺の所までオージュは戻ってきて、


「騒動だ」

「何があった?」

「朝、子供が遊びに出かけて戻らないらしい」


 子供が……森の中で迷子になっているとしたら危険だな。


「今、子供の生活用品を持ってきてもらうようお願いした」

「そこに残留している魔力を用いて捜索するというわけだな」


 人探しでよく使われる手法だ。魔力を索敵に使うのと同じ形で利用するのだが、探している人物の魔力を捕捉できた方が明らかに探しやすい。


「その子供、いくつくらいだ?」

「八歳だ。それなりに足腰も強いし、森の奥へ進むことはできるだろう」

「なるほど、魔法がなければかなりキツいな」

「その点、俺ならばすぐに捜索できる……が」

「時間との勝負だろうな」


 魔物があまりいないけれど、オージュが先ほど言ったようにゼロではないし、怪我をしていて動けないなんて可能性もある。

 やがて子供の親と思しき人物がハンカチのような物を持ってくる。それを受け取ったオージュは即座に索敵を始めた。


「オージュ、索敵魔法って使えたっけ?」

「自作の魔法が中心とはいえ、他の魔法が使えないわけじゃない。索敵については、基本的に他の人と変わらない術式だぞ」


 やがて彼は魔力を捕捉したか、小さく頷いた。


「場所はわかった。おそらく無事だ。ディアス、付き合ってくれ」

「もちろんだ」

「お願いします」


 母親が告げるとオージュは頷き返し、走り出す。俺はそれに追随し、村の外へと出た。






 目標地点はそれなりに村から離れており、八歳の子供が来れるのかという疑問さえ湧くくらいだったのだが……いや、子供というのは存外動き回るし、予想などできないような動きをすることもある。今回もそうした事例だろう。


「子供を見つけたら即座に保護して帰還か?」


 俺の問い掛けにオージュは頷きつつ、


「もし魔物が出現した場合、任せていいか?」

「ああ、子供の保護は任せる」


 こちらの返答にオージュは「よし」と答え……とうとう子供のいる場所の近くまで到達した。そこは山から流れる川が見える開けた場所。


「……いた」


 オージュが言う。見れば川岸に座り込んで石を触っている子供の姿。


「川に入っていなくて良かった。ひとまず保護して――」


 オージュが言いかけた時だった。


 ――オオオオォォォォ――


「ん?」


 俺は周囲を見回す。獣の遠吠え……のようにも聞こえたが、何だ?

 その間にオージュが子供に話し掛けて保護に成功。彼は子供を抱きかかえると、


「よし、戻るぞ」

「わかった――」


 その時だった。俺達が立っている場所から川の対岸……そこに、気配が生まれた。

 まだ距離はあるのだが、それは明らかに魔物の気配……オージュも気づき首を向けた直後、俺の視界に魔物の姿が映った。


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