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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第七章

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英傑の魔法

「おおお!」


 騎士の一人が魔族の攻撃に対し前に出る。その人物はクラウスの配下である側近の一人。腕も十分であり、魔力を大いに注いだ剣戟は魔族の巨大な腕を止めることに成功した。

 さらに周りの騎士達が援護を行う……この時点で俺はシュウラへ強化魔法を付与。それなりに付き合いのある間柄だからこそ、瞬間的な強化についても多少ながら彼の能力に配慮したものとなっている。


 そして彼は詠唱を開始――英傑の中でもシュウラはどちらかというと策謀とかで魔族を出し抜くため、魔法の技量面はセリーナなどと比べれば一歩劣ると思われているかもしれない。実際、英傑の候補として名が上がっていた人物からは「なぜシュウラが選ばれた」などと愚痴をこぼす光景を見たことがある。

 近くにいるオージュもまた、似たような心境なのだろうか……ともあれ、シュウラはその能力からどうしても他の英傑と比べ強さにおいて下に見られる傾向があった。シュウラとしてはよろしくない状況、と思いきや彼はなんとそんな自分の立ち位置すら利用して情報収集をしていたので、敵に回したくないと思った。


 で、魔族に対する魔法を放つわけだが……策謀がメインとはいえ彼もまた英傑。俺からすれば――化け物だ。

 シュウラの魔力が収束し、魔族は途端に警戒を強めた。明らかにこれまでの攻撃とは違う、ということで標的を彼へと向ける。しかし騎士が進撃を阻み、オージュを始めとした魔法使いが魔法で牽制し……とはいえ、彼らの魔法はあまり通用していない様子だった。


 魔力に対する耐性が高いのか? と思いつつも俺はシュウラへ強化を注ぎ――やがて、彼が放ったのは光の槍。俺の強化と彼自身が限界まで高めた一撃は……魔物に直撃し、その腹をぶち抜いた。

 ガアアアア――と、羽音にも聞こえる魔族の絶叫が耳に入る。だがまだ戦意はあるようで、シュウラへ向けなおも攻撃を仕掛けようとして、


「畳みかけろ!」


 騎士が号令を掛け、周囲にいた騎士達が一斉に魔族へ刃を突き立てた。それが決定打となってとうとう魔族は動きが止まる。そして、消滅した。


「よし……それじゃあ」


 俺は杖を構え直し、魔族グレイルスがいるであろう方向を見やる。セリーナやクラウスが戦っているだろうと思いつつ、


「シュウラ、このまま進むか?」

「そうしましょう。周囲に目立った魔族もいなくなりましたので」

「先へ進め!」


 騎士もまた号令を掛け、俺達は動き出す。剣を交わす金属音を耳に入れながら俺達はいよいよ魔族グレイルスがいる場所へ到達する――


「はあっ!」


 そこで最初に聞こえたのはクラウスの声。彼の一閃によって魔族回避し、そこへセリーナによる追撃の魔法が突き刺さる。


「ぐうっ……!?」


 魔族は呻きながらも体勢を崩すこと無く距離を置く。見た目は老齢な貴族だが……発せられる気配は、身震いするほどに濃密かつ恐怖を与えてくる。


「人間風情が……!」

「そうやって人を見下していることこそ、敗因だ」


 クラウスが冷徹に告げる。どうやら戦いも終わりに差し掛かっている……俺はそこでダメ押しとばかりにクラウスとセリーナへ強化魔法を付与した。

 二人はこちらを見ることはなかったが、強化魔法を受けたことはもちろん気づき、


「こちらは勢揃いだな……決めるぞ!」

「舐めるなあああ!」


 雄叫びのように声を発する魔族グレイルスは、全身から魔力を噴出し徹底抗戦の構え。それに対しクラウスとセリーナは臆することなく前に出た。さらにシュウラもまた二人へ続くべく駆けだし、俺もその後に続いた。


 ――その攻防は、一瞬の内に行われた。魔族グレイルスは大剣を持っているのだが、その斬撃をクラウスは巧みにいなして剣を決めた。そこへセリーナの魔法――炎熱系の魔法が突き刺さり、魔族の体が炎に包まれる。


「がああああっ!?」


 そして、悲鳴が上がる。どうやら魔族グレイルスにセリーナの魔法は通用している。

 そこへ間髪入れずにシュウラの魔法――螺旋状に収束した槍が魔族へ突き刺さった。両者の魔法とも、どちらかというとさほど派手ではなく、果たして魔族に通用するのかという感じではある。


 ただ、俺は二人の意図を理解していた。もちろん派手な魔法もたくさんある。だが今この時は、魔族一体だけを相手にする……それにはド派手な広範囲魔法ではなく、一点に集中した威力を持たせた魔法が有効であると。

 そうしたことを実践し、両者の魔法が魔族グレイルスへ届いた……そして、クラウスが渾身の剣戟を決めた。それにより魔族の体は上下に分かれ、


「――陛下――」


 最後にそう声をこぼした魔族グレイルスは、消滅した。


「どうにか、勝てたな」


 息をつくクラウス……楽勝にも見えるが、実際はかなりギリギリの勝負だったのだろう。魔力的な余裕はほとんどなかった。

 とはいえ、これで……周囲の魔物達が暴れ出す。勝つには勝ったが、魔物を駆逐しなければ面倒なことになる。


「魔物の掃討を始めるぞ!」


 そしてクラウスは指示を出し……騎士も、戦士も揃って魔物を倒し始めた――


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