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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第七章

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仮面の魔族

 仮面の魔族による突撃は巨大な腕を広げた姿勢であり、まず俺達は対応に迫られた……と、ここで先んじて動いたのはシュウラ。

 周囲の戦士に指示を出した直後、彼はすぐさま片膝をついて地面に手を当てた。刹那、真正面に結界が生まれ、それに魔族が激突する。


 障壁によって進撃を止められたわけだが……まともに結界とぶつかるという光景はなんだか滑稽にも思えるが、ダメージはない様子。


「いけ!」


 そこで、オージュが追撃を仕掛けた。彼の周囲には無数の金色の矢があり、それが一挙に魔族へと注がれる。シュウラの結界は魔族を通さないが俺達の魔法は通す――結果、轟音と閃光が周囲を満たした。

 オージュの魔法は数で押し込むという意図がありそうだったが、彼のことだから何か仕掛けがあるだろう。


「オージュ、効果は?」

「着弾すると魔力が破裂するような形で弾ける。単純に突き刺すよりも爆発を加えたことによって殺傷能力を上げている」


 答えながらオージュはさらなる魔法準備を始める。光の矢は爆発することで突き刺さるよりも影響が残り、まだ轟音が周囲にこだましている。やがて光が消えると、超然とする魔族の姿があったのだが、


「はっ!」


 そこへさらなるオージュの魔法。気合いの入った声と共に今度は光の剣。しかもそれは魔族の周囲に一瞬で顕現する。

 さらなる攻撃によって再び魔族は光に包まれる……俺はその間にシュウラとオージュ、そして周囲の戦士や騎士に強化魔法を付与する。


「ありがとうございます」


 シュウラが代表して礼を述べた後、手をかざし魔法を放つ準備をする。


「結界でさらに進路を塞いでもいいですが、それだとジリ貧でしょうからね……」

「魔族に何か手が残っていると?」

「おそらくは。結界に対し激突したわけですが、オージュが放った光の剣……それが直撃する寸前に、身じろぎをしていました。おそらく攻撃を受けるごとに学習し、対抗策を構築しているのではないかと」

「魔族なら最初から防御していそうなものだけど」

「魔族の中には知性ではなく純粋な身体能力に特化しているタイプもいます。今回の敵はそれでしょう」


 シュウラが淡々と説明している間に、光が途切れる。魔族はなおも健在であり、相変わらず巨大な腕を広げ攻撃する態勢をとっている。

 俺は念のためシュウラが形成した結界に魔力を注ぐ。他者の構築した魔法だが、強化魔法の応用で魔法そのものも補強はできる。


「硬いな、かなり」


 オージュはそう呟きつつさらなる魔法を撃とうとする。そこで俺は、


「待てオージュ、ひとまず様子を見てくれ」

「何故だ?」

「オージュの魔法が通用していない……外皮が強固なのか、それとも単純に魔法耐性が高いのか、検証しなければならない」

「なら、他にも魔法を試そう。どれかは通用するだろう」


 悠長に語るオージュ。彼は魔族を見据えながらも魔力を練り上げ……どこか警戒感は薄い。

 そこで最前線の方角から轟音が響いた。もしかすると総大将である魔族グレイルスと戦闘を行っているかもしれない……そんな推測をした時、オージュもまた同様に感じたのか、


「ふむ、ここで足止めを食らっている暇はなさそうだ。ひとまず多種多様な効果を乗せた魔法を使ってみて――」


 言い終えぬ内に、魔族が動いた。巨大な腕を振りかざして、シュウラの形成した結界を一挙に破壊する!


「なっ!?」


 オージュは瞠目し、魔法を撃とうとした。しかし魔族の方が圧倒的に早かった。

 俺は半ば本能的にオージュと魔族の間に割って入った。全力で強化魔法を自分自身に付与しつつ、杖をかざし巨大な腕による攻撃を……まずは防いだ。


 ガキン! と大きな音を上げ杖と腕がせめぎ合う。とはいえ、魔族の膂力に人間が勝てるはずもない。正直、この状況を保ち続けるのは厳しい――


 そこへ、シュウラの魔法が魔族の背中へ突き刺さった。途端、魔族は金切り声のようなものを上げて後退する。どうやら彼の魔法は効いている……そこで俺はシュウラを見やり、


「どういう魔法だ?」

「いえ、単純な威力を強化したものですよ。魔力を限界まで凝縮させて……通用していなければ危なかったですね」


 魔族の方は俺達と距離を置いて警戒している。一方で戦士や騎士は踏み込むことはできず、周囲で魔物と人間が戦っている状況下で、俺達だけが立ち止まっている。


「……シュウラ」


 俺は杖を構え直しながら名を告げる。


「本能的に動いているのか、それとも何か命令通りなのか……その辺りもまったくわからない相手だ。これは出方を窺うより、一気に決着を付けるべきだと思う」

「こちらも同感です。ではどうしますか?」

「とにかく強力な一撃だ……周囲の人間が牽制し、俺がシュウラを強化しそちらは渾身の魔法を叩き込む……どうだ?」

「賭けには違いありませんが、それしかなさそうですね」


 応じたシュウラ――そして魔族が動き出した。


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