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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第七章

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自作の魔法

 目的地へ辿り着くより前に、俺達は宿場町へと到達し、一泊する。宿を手配して酒場に入り食事をしていると、声を掛けられた。


「お、ディアスじゃないか」


 知り合いの戦士……魔王との戦いに参戦はしていなかったが、戦士団の仕事で何度か顔を合わせたことのある男性である。


「久しぶりだな、噂は聞いているぜ……と、アルザも久しぶりだな」

「どうも」

「彼女とも会ったことがあるのか?」


 俺の疑問に対し男は「まあな」と答え、


「所属していた戦士団の方針か、彼女と仕事がかち合うことが多くてなあ……まあわかると思うが魔物討伐なんかはアルザの独壇場だったからな。俺が所属していた戦士団は大した戦果も挙げられず、規模を縮小するばかりで」

「今はどうしている?」

「とっくに解散したよ。俺の方は根無し草として旅を続けていたが……その中で魔王を倒したという話が舞い込んでびっくりしたよ」


 男は笑いつつ俺へ視線を向ける。


「で、偶然見つけたから声を掛けたわけだ……しかし、最近は知り合いと顔を合わせることが多くなったな。王都以外にも色々見て回る冒険者が多くなったのか?」

「他にも遭遇したのか?」

「ああ。最近ビックリしたのがオージュだな」


 オージュ……俺はその名を聞いて目を丸くした。

 俺が所属していた『暁の扉』とよく一緒に仕事をしていた戦士だ。年齢は俺とほぼ同じくらいであり、俺よりも先に引退して、どこかへ行ってしまい見かけなくなっていたのだが、


「オージュが……アイツはこの近くにいるのか?」

「ああ。この辺りに家があるらしい。気が向いたら立ち寄ってくれと言われ住所も教えてもらったんだが……結構遠いんだよな」


 俺は少し気になった。オージュは年齢が近いこともあって割と交流していたのだ。まあお互いいい歳だし久しぶりに顔を合わせて決闘なんてするつもりはないのだが……。


「その家の場所は?」


 何気なく尋ねると男はあっさりと答えた。俺達の進路は南なのだが、オージュが住む場所は西……そちらには南北に延びる山脈が存在し、その麓らしい。


「山の手前には村がいくつも点在しているんだが、その中で規模の大きい村……その近くに住んでいるようだ」

「そうか」

「会いに行くのか?」

「どうかはわからないが……」


 仮に会いに行ってみるにしても、アルザやミリアに確認しないといけないわけで……と思っていたら両者は小さく頷いていた。別に構わないらしい。

 まあ二人は俺の方針に従ってくれるので、この反応は別段不思議ではない……そもそも目的地があるとはいえ、自分探しという名目でとりあえずこの場所へ行こうと決めているに過ぎない。寄り道なんて問題ない。


「……そうだな、戦士を引退して以降顔も見ていないし、久しぶりに会ってみるか」

「そうか。どうして家を知っているのか質問されたら、俺の名前を引き合いに出せばいい」

「ありがとう」

「礼はいらんさ。それじゃあ俺はこれで」


 立ち去っていく男性。そこで俺はアルザ達へ向き直り、


「というわけで少し寄り道をしよう」


 頷く両者。そこで先に口を開いたのはミリア。


「友人なのかしら?」

「顔見知りではあるが、友人と呼べるかどうかは……仕事でかち合って勝負したこともあるけどな。年齢が近かったため、よく張り合っていたんだ」

「面白い関係ね」

「どうだろうなあ……戦士を引退してからは一度も会っていないし、こういう機会でもなければ顔を合わせることもないだろうから、ひとまず彼の家を訪ねてみよう」


 アルザやミリアに関する説明は……まあ適当にすればいいか。


「ちなみにだが、アルザは会ったことあったか?」

「憶えがないなあ」

「そうか。戦士団に所属していたわけじゃないが、戦士団が請け負うような大きな仕事を引き受けていたからな。アルザと交流がなくても仕方がないか」

「強いのかしら?」


 ミリアの単純な疑問に対し、俺は小さく肩をすくめる。


「強くはあるけど、英傑入りすることはなかったな。なんというか、強さがわかりにくいんだよな」

「わかりにくい?」

「オージュは魔法使いなんだが、得意とするのは強化とか強力な魔法ではなく、緻密に構築された自作の魔法……教科書に記載されているような術式ではなく、自らが構築し作成した魔法。これが結構特殊で、評価を難しくしていた」

「自作の魔法……かなりすごそうに思えるけど」

「実際、才覚はあった。俺みたいに必死に戦士団に食らいついて鍛練を重ねていたのとは違い、彼は呼吸をするように魔法を開発した。それこそ聖王国の研究機関に入れば、凄まじい功績を手にしていたに違いない」

「でも……そうはならなかった」

「ああ。研究そのものに興味はなかった。自分の魔法がどこまで魔物や魔族に通用するのか……それに全てを費やす人物だった。戦闘面以外は取り立てて癖のある人じゃないし、初対面であるミリア達もすぐに馴染めるとは思う……が、戦いのことについてだけは一家言持ちだ。話をする場合、そこには注意しないといけないぞ――」


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