表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

354/487

魔王と戦った二人

 最終的にエリオットを追い詰めた場所は、路地の先にあった行き止まりであった。数メートルくらいの壁がそそり立ち、その裏側は既に結界が形勢され逃げ場をなくしている。

 クラウスの指示によってエリオットを誘い込むことができた……が、彼の姿はない。町中のどこかで騎士を指揮して逃がさないようさらなる策を準備していることだろう。


「……追ってきたのはディアスか」


 俺の姿を見て、エリオットは口を開く。装備は闘技大会に参加していた時と変わっていない。


「金で雇われたか?」

「そんなところだ。俺はエリオットを捕まえる証拠なんてのは見ていないが……ま、クラウスが依頼してきたんだ。魔王と戦ったよしみとして手を貸すのは当然……と、言いたいところだが」


 俺は肩をすくめながらエリオットへ語る。


「魔王と戦った、という点はエリオットも同じだな……正直、残念としか言いようがない」


 エリオットは俺の言葉に反応せず、剣を抜く。


「俺を倒せば騎士達はどうにか追い返せる……と考えているのか?」

「……どうだろうな。だが確実に言えるのは、ディアスを倒さなければ逃亡は絶対にできない、ということだ」


 ま、確かに……俺は杖を構える。ある種、観客のいない試合みたいな状況だな。

 周囲からは騎士の声が増えていく。そう遠くない内にクラウスもここへ来るだろう。そうなったらエリオットは逃亡がさらに難しくなる。つまり、こちらはただ待つだけで有利になる。仕掛けるとしたら彼からだ。


 その推測をした矢先、エリオットは動いた――その鋭さは大会で見せたものに匹敵する。まさしく、窮地を脱するために……目の前の障害である俺を排除しようと動いた。


 それに対しこちらは、魔力を高め――決戦術式を、発動させた。

 時間を稼ぐのであれば通常の強化魔法を用いて防戦に徹すればいいのだが……闘技大会で散々見てきた彼の実力を踏まえれば、相応に力を出さなければ厳しいだろうという判断だった。


 そして――俺の杖とエリオットの剣が激突する。魔力が拡散し、俺の周囲にいた騎士達が呻いた。けれど同時に包囲しようと動き出す。鍔迫り合いの中で騎士が背後に回ればさらに勝ち目がなくなる。よって、先に退いたのは彼の方だった。


「強化魔法……しかも、手の内がわからないレベルか。さすがに力押しは難しいな」


 そう評しつつ、エリオットは距離を置こうとする。とはいえ背後は壁。奥に結界があるため飛び越すこともできない。

 騎士達が徐々に包囲を狭める中で俺はエリオットへ向け近づく。さらに杖先に魔力を溜め無詠唱魔法を使う準備を整える。仮に魔法を使わずとも、魔力が存在しているというだけで牽制になるはずだ。


 それは相手も理解したようで、こちらへ仕掛けようとしていたのだが……足を止めた。強化魔法になおかつそれを維持しながら無詠唱魔法を使える……エリオットにしたら厄介な相手、ということだろう。


「……ディアス、もし大会に出たら、ヴィルマーに代わり優勝していたんじゃないか?」

「無理だろうな。そもそも今使っている魔法はそう長くはもたない上に乱発もできないからな……とはいえ」


 騎士達が続々と近づいてくる。


「今回の場合は俺が力尽きるより包囲が完成する方が圧倒的に早い……そちらは仕掛けなければ、終わるぞ」

「そのようだ――なら、最後の勝負に出るとしよう」


 魔力が高まる。一撃――それで全てを終わらせるという腹づもりの、膨大な魔力。

 リスクを避ける戦いをしていたエリオットからは考えられない動きだが、もし負ければ後がない状況である以上、一か八かの策に賭けるのも当然と言えるだろう。


 そして、エリオットは足を前に出した。そのタイミングで俺もまた足を出す。杖先にはなおも魔力が込められており、俺はまず接近するエリオットへ向け魔法――雷撃を放った。

 相手はそれを、剣をかざすことによって防いだ。雷が刀身に当たり、彼の表情がわずかに歪む。手に多少なりとも衝撃が走ったらしいが、魔力をまとわせていたためかダメージはそれほど大きくない。


 俺は次の魔法を使おうとしたが、それよりも先にエリオットはこちらをすり抜けようと駆けた。多少のダメージを無視して強引に突破しようとする……が、俺はその動きを見極め彼の正面を阻んだ。

 エリオットはすぐさま方向転換しようとするが、その動きに追随し俺はどこまでも彼を追う……決戦術式の恩恵は歴戦の戦士による動きでさえも見極めることができる。そこで彼は苛立ったように表情を変えながら――最後の賭けに出る。


 それは俺へ真正面から挑むこと。ここまでの動きで戦えば心底面倒なことになると認識はしたはずだが、他に選択肢がない……クラウスだっていつ来るかわからない。だからこそ、俺を倒し突破する――そういう決断を下した。

 そしてさらに魔力を高め、こちらもそれに応じるべく杖を構えた。この攻防が終わった時、決着がつくだろう――そんな予感を抱きながら俺は、全身に加え杖に魔力を叩き込み、エリオットを迎え撃った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ