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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第一章

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断崖の城

 町を見て回った結果、ミリアはこれから赴く場所にいる親族に対しプレゼントを購入した。商品そのものはそう珍しい物ではないが、ミリア自身は納得がいくもののようだった。


 そして翌日から旅を再開し、俺達は今まで以上に和やかな雰囲気の中で街道を進んだ。その道中で魔物の退治などをやったりもしたので、なんだか殺伐とした雰囲気になりそうだったのだが……笑いの絶えない旅路になったのは間違いない。

 アルザがミリアに懐いたのも大きいだろう。どうやらアルザは綺麗なミリアの姿を見て憧れを抱いたっぽい感じだ。当のアルザだって冒険者仲間から美人だともてはやされていたくらいなのだが、そこはやはり女性同士だから感じるものがあるのかもしれない……道中で時折俺が蚊帳の外になるくらい、喋り倒す時もあった。


 まあ険悪な関係となって旅をするよりはよっぽどいい……ちなみに話の内容に俺はついていけなかった。それは俺が男だからなのか、それともおっさんで流行に疎いからなのか……前者であることを祈ることにしよう。


 そんな風に旅を続け――俺達は、とうとう目的地へと辿り着く。


「これは、また……」


 目前に見えた景色に、俺は絶句した。アルザの方も迫力に言葉を失っている。


「どういう風に建造したの?」


 そして彼女の口から質問が飛び出した。するとミリアは苦笑し、


「頑張った、と言っていたわよ」

「頑張ってあんな建物ができるの?」

「私も詳しいことはわからないけれど……魔法を利用したのではないかしら」


 それでアルザも納得したか……どうかはわからないが、とりあえず「なるほど」と呟いた。


 俺達がいる所の名はジェムザ渓谷。最寄りの町から山へと入り、その先に見えた渓谷……そこに、目的地となる魔族の居城があった。

 とはいえ驚くのはその佇まい。俺達の真正面、渓谷を挟んだ向こう側に城があるのだが……その出で立ちは渓谷と融合しているようだった。つまり断崖に建物が埋め込まれているように見えるもので、俺達としてはその異様な姿に呆然となる。


「防衛的な観点も考慮して、あんな建物に?」

「そうかもしれないわね。あ、入口は上側にあるわよ」

「つまり、上から下へ向かっていく感じになるのか」

「上側だけ守ればいいからわかりやすいのかもね」


 ちなみに上には結構な数の魔物がいる。ただその風体は暗くよどんだものではなく、明確に形を成している。銀色の毛並みを持った狼とか、あるいは渓谷を飛び回っている怪鳥とか。

 あれほど生物に似せているのは自然発生しないため、城にいる魔族が生み出したということだろう……それを証明するかのように、俺達へ視線を向けても本能に任せ行動はしない。


「魔物は……大丈夫かな?」


 頭の中で推測する間に、アルザはミリアへ問い掛ける。


「近づいたら攻撃してこない?」

「私の気配は既に伝わっているはずだし、襲われることはないわ」

「……俺達は人間だし、誤解を生む可能性はゼロじゃないだろ」

「その辺りも大丈夫よ」


 楽観的に言うミリア。それだけ城主に信頼を持っているということか。

 まあここまで来て引き返すことなどあり得ない。俺は報酬をもらうべく、進んでいく。反対側にある城へ向かうには、橋が存在する。渓谷は結構幅もあり深いため吊り橋とかだったら渡るのも恐怖だが……かなり堅牢な石の橋である。


「この橋も作成したんだよな?」

「そう聞いているわよ」

「建築が得意な魔族なのか?」

「どうなのかしら……あ、でも人間にデザインを頼まれて建築したこともあると言っていたわね。相当前の話だけど」

「魔族の相当って、何百年も前かな? ともあれ頼まれて、か……人間と交流のあった魔族なのは間違いないよな」


 そういえばシュウラは会ったことがあると言っていたな。となれば、この城を訪れたのだろうか? それとも、戦士団の活動の中で顔を合わせる機会があったのだろうか?

 疑問はあったが、とりあえずそれは棚に上げて橋を進んでいく。非常に強固で、かなり安心感がある。


 それと共に城も橋も重厚なイメージを抱くものであるため、魔族がどういう見た目なのかが気になり始める。ミリアから見て叔父と言っていたので、相当年齢を重ねた魔族であるのは間違いないだろう。

 ただ、そうである場合姪のミリアは……年齢とかそういえば聞いていなかったな。まあ女性に聞くようなことではない、として尋ねる気もなかったが。


 そうこうする内に俺達は橋を渡って城の上部まで辿り着いた。そこに、山の窪地を利用して作られた下り階段――つまり入口があった。


「雰囲気がすごいな」

「入りづらくしているとは以前言っていたわね」


 うん、なんというか尻込みしそうな雰囲気をまとっている。


「とはいえ問題はないわよ。進みましょう」


 ここに至り、ミリアが先導する形。俺とアルザは小さく頷き……重厚な階段をゆっくりと下り始めた。


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