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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第六章

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勝負の終わり

 アルザとエリオットの剣が、激突する。幾度となく行われてきたわけだが……今回ばかりは少し事情が違っていた。

 今度の攻防は、エリオットの剣が大きく弾かれた。双方の全力――力比べはアルザの勝利ということだ。


 ただし、押し切ったからといって勝利ではない。彼女は大きく隙が生じたエリオットへ向け、追撃を放つ。

 相手はそれをどうにか弾くが――余裕がないことは明確にわかった。彼女の斬撃によろけ、体勢を崩している。


 演技という可能性もゼロではなかったが、わざわざ体勢を崩してまで誘い込む理由もない……ただ、俺は瞬間的に一つ悟った。

 戦いは終盤に差し掛かり、このまま勢いでアルザが勝利する可能性は高い……が、まだエリオットにも手はある。それは――


 俺が考えた矢先、エリオットは魔力を開放した。瞬間的な能力の強化。俺が使用する強化魔法と比べ極めて瞬間的にしか効果は発揮しないが、この一時押し返すのであれば効果はある。いや、それどころかアルザの攻撃が少しでも甘ければ彼女が弾かれ形勢が逆転する可能性がある。

 むしろ今のエリオットとしては勝ち筋はそこだけ――両者の刃が激突する寸前、俺はアルザからも魔力が高まったのを感じた。力には力で対抗する。そういう意思が明確にあった。


 そして、剣が衝突した矢先、エリオットがさらに後退した。彼の判断ではなく、アルザの剣によって弾かれた格好だ。体勢がさらに崩れ、彼の表情が険しくなった。

 次の瞬間、アルザの剣が煌めきとうとうエリオットの腕から剣が弾き飛ばされた。魔力を開放してから一瞬の出来事。観客が声を上げる暇すらない時間の攻防であり、遅れて周囲の人々が声を上げようとする。


 しかし、まだ終わらない――エリオットが両腕をかざし、最後の抵抗を試みる。アルザは間合いを詰め決定打を与えるより先に、彼は無詠唱魔法を放った。その時、俺は彼の両腕だけではなく体の至るところから魔力を生み出しているのを悟る。

 これは、仕込んでいた魔法の道具を使い、魔法の威力を増幅している……ここまで追い込まれて使う以上、彼の切り札であることは想像に難くない。もしかすると決勝戦など、最後の最後で用意していたものかもしれない。


 ゼロ距離で増幅した魔法を受ければ、例え無詠唱であっても相当なダメージになるだろう……もしかするとヴィルマーなどの強敵を想定したものだろうか?


 そんな疑問を抱く間にとうとう彼の魔法が炸裂する。単純な光弾ではあったが、その威力は今まで使ってきたものと比べものにならない……紛れもなく、彼にとって全力の魔法だ。

 けれど、アルザには――通用しなかった。例え結界などを張っていても直撃すれば吹き飛ばされるどころか気絶するであろうその魔法をアルザは斬った。退魔の力……両腕に凝縮された剣が魔法を一刀両断したのだ。


 結果、強力な魔法はあっさりと消滅し、残るは剣を持たないエリオットだけとあり――アルザは彼に刃を突きつけ、勝負は決した。

 実況がアルザ勝利だと宣言する。終わってみれば危なげない戦い……とはいえ、エリオットの攻撃が彼女へ届く可能性も十分あり得た。そう考えると、実は結構ギリギリの戦いだったのかもしれない。


 ――かくして、エリオットが優勝という結末を辿ることはなく、準々決勝は終わった。会場は興奮冷めやらぬ様子で、アルザ達が闘技場から消えた後も周囲の人々からは話し声が聞こえてきた。

 エリオットは優勝候補を倒したわけだが、その彼をアルザは打倒した……よって、彼女が今度は優勝候補に名乗りを上げることになるだろう。


 とはいえ、まだ大会は続く。次の準決勝だって何が起こるかわからないし、ヴィルマーやカインのこともある……俺は座ったまま次の試合を眺めることにする。次はカイン、そしてその次はヴィルマーの試合だ。

 準決勝で二人は戦うことになるわけだが……鍛錬の風景を見ていると、おそらくヴィルマーの方に分があると思うのだが――


 まだ会場が熱気に包まれる中、次の試合が始まろうとする。カインが姿を現し、試合開始の宣言が成され――激闘が始まった。

 準々決勝まで来ると、もう強豪しか残っていないのは間違いなく、カインの相手も達人だった。両者は純粋な剣の応酬を繰り広げ、やがてカインが優勢となる。彼もアルザやヴィルマーと共に鍛錬を行ってきたため、剣の腕が向上している……アルザが準決勝に勝利し、カインがヴィルマーに勝って決勝で戦うことになったとしたら……相当厄介な敵となるに違いないだろう。


 アルザ達のように長期戦にはならず、カインが優勢となり一気に決着をつけようと動く……その時だった。


「ん?」


 一瞬、対戦相手の剣が光った。カインも瞬時に気付いたが、高速で繰り出される剣を止めることはできず……やがて、二人を中心に爆発が起こった。

 観客が驚きの声を上げる。どうやら仕込んでいた魔法……そう考えた時に二人の姿が映り……歓声が、轟いた。


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