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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第六章

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守る力

 俺は試合を観戦する中でエリオットの戦いを振り返る。優勝候補相手でも危なげない戦い……どこまで想定していたかはわからないが、終わってみれば最初から計算ずくという雰囲気もあった。

 なんだか底が知れない戦いぶりであり、あれが全て戦術通りであったなら、英傑クラスに大変な相手かもしれない。


 たぶん可能な限り対戦相手を下調べしていたはずで、そうした情報を基に戦術を考案する彼の戦い方は、闘技大会と相性が良いのかもしれない……そんなことを思っていると今日の日程が終了。時間は夕刻前ということで、俺も闘技場を出た。


 本戦からは一つの闘技場でしか戦わないため、ここからは進みが遅くなる。まだカインやヴィルマーは出場していない。明日以降、戦うことになる。

 俺は闘技場を出た足でカトレアが待つ道場へ向かう。外から音が聞こえたのでミリアが訓練しているのだろうと思いつつ入ると、予想通り彼女が魔法訓練を受けていた。


「よし、今日はこの辺りにしておくか」


 カトレアがそう述べ、ミリアは息をつく……俺が来たタイミングで丁度良いと感じたのかもしれない。


「ディアス、アルザの試合はどうだったんだい?」

「危なげなく勝利しましたよ。あの調子ならエリオットと戦うことになるでしょうね」

「彼も勝ったか」


 頷く俺に対しカトレアは口元に手を当てつつ、


「エリオットの相手はかなりの実力者だったが……圧勝だったかい?」

「長期戦になりましたが……終わってみれば彼の持ち味を活かした試合だったかと」

「なるほど、実力は申し分ないみたいだね。今後確実に注目されるのは間違いない」


 と、ここでアルザも道場に来た。さらにカインやヴィルマーの姿もあり、大会出場者の三人は囲むように立って会話を始めた。


「カイン、あの戦いぶりどう思う?」


 話を切り出したのはヴィルマー。エリオットの戦いぶりを観戦していたようだ。


「結構な実力者だな。酒場に顔を出したら彼の話題で持ちきりだった」

「話題の人物ということなら、戦士団勧誘をやるかもしれないない……そっちにかまけて情報収集を怠ってくれたら、まだ戦いやすいかもしれないが」

「さすがにそんなことはしないだろう」


 カインの言葉にヴィルマーもアルザも頷いていた……ここで俺はカトレアへ首を向け、


「エリオットの鼻っ柱を折ることで戦士団結成を防ぐというのが作戦ですけど、現段階では彼の目論見通りになっていませんか?」

「対戦相手が優勝候補だったからね。ただまあ、色々と種は蒔いているさ。今日の戦いで顔が知れ渡って勧誘そのものはスムーズになるかもしれないが、果たしてどれだけの人間が参加しようと思うのか」

「……何をしたんですか?」


 問い掛けたがカトレアは何も語らなかった……あんまり深入りしない方がいいかもしれない。


「まあいいです……エリオットはまだ力を隠している雰囲気もあります。この道場で訓練するメンバーの中で、いち早く対戦するのはアルザ。俺としては仲間だからこそ優勝して欲しいと考えていますし、何かしら考えないといけないような気が……」

「今やっていることを続けるしかないだろうね。何度も言うが付け焼き刃は逆効果だ。アルザの方は一回戦が終わったし、少しだけ余裕がある。鍛錬を続ければ退魔に関する能力については彼と戦うまでに間に合わせるだろう」

「……今日はその技術を使っていませんでしたね」

「完全に使いこなせるまでは使うなとあたしの方から言ってあるからね」


 それは隠し通しておくというよりは、新技だからといって未完成なものを使うとまずい、ということだろう。


「ま、すんなり勝てるような相手だとは思っていないさ。アルザ、今日のところは体を休め、明日締めの鍛錬に入るとしよう」

「わかった」

「ディアス、そちらにも手を貸してもらうかもしれないよ」

「アルザの修行に関することであれば喜んで協力しますよ」


 そう述べつつ……本戦一日目は終了。その後、明日の予定などを相談して、俺とアルザ、ミリアの三人は宿へ戻ることになった。


「アルザ、本戦はどうだった?」


 帰り道で俺はアルザに問い掛ける。それに対し彼女は、


「……さすがに緊張するかな、と思ったけど正直観客はほとんど目に入らなかったんだよね」

「ちゃんと集中している証拠だな。アルザは本当に闘士に向いているのかも」

「そうかな……」

「大会終了後も闘士として活動していく、というわけじゃないみたいだな」

「大会の雰囲気は問題ないにしても、私が持っている能力の本質を考えると、魔物や魔族と戦う方が合っているだろうから……それに」


 と、アルザは俺へ顔を向け、


「最終目標は村の復興……そのためには、大観衆の前で戦う力よりも人を背にして守る力の方が大切だろうし」

「……そのために、強くなることを決意したか」

「うん」


 彼女なりに、色々と学んだようだ。その事実で、俺はここへ来て良かったと心の底から感じたのだった。


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