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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第六章

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町中の騒動

 俺やミリアは大会出場者と共に鍛錬を続け……二次予選がスタートした。見立としてアルザ達は油断しなければ大丈夫とのことだったが……、


「おおおおっ!?」


 二次予選初日、アルザの試合を観戦に行くと、剣技によって圧倒する彼女の姿があった。

 相手も一次予選は突破した猛者のはずなのだが……これまでに得てきた技術に加え、小規模ながら大会に参加して人間相手の動き方を学んだアルザに対し、相手は太刀打ちできない様子だった。


 正直、彼女であればエリオットが長期戦を挑んだとしても対抗できないのでは? と思うくらい鮮やかに勝負は決し、アルザの勝利が実況から言い渡された。途端、響き渡る歓声。アルザは無表情で闘技場を去って行くが……その雰囲気は、どこか楽しげなものだ。


 彼女としては知らなかった世界というわけだが、闘士として性に合っているのかもしれない……冒険者としては一匹狼だったし、目立つようなことはしなかったのだが、歓声を力に変えることができる、というのは思わぬ発見だ。


 観客も彼女の姿からファンになる人が増えているようで……しかし単純にファンになるわけではなく、


「彼女が、例の……」

「ああ、大通りのあの店で極盛りメニューを易々と完食してみせた人物だ……おまけに、食べた後に別の店でまた大食いチャレンジをやったらしいぞ」


 うん、既に食に関することでも彼女は噂が立っている……退魔の力を持つ剣士、というだけで近寄りがたい雰囲気を持っていそうだけど、大食いというファクターが加わることによってどこか身近な存在に感じてファンが増えているということらしい。

 この調子なら問題はないだろう……そう結論づけて闘技場を出た。


 今日も訓練をする予定なのだが、時間がある。食事でもするかなあと思いつつ大通りを進んでいると……何やら人だかりができていた。


「何だ?」


 ちょっと近寄ってみる。直後、


「てめえ、どういうつもりだ?」


 男性の声。すると、


「すまない、こちらとしては騒動を起こす気はない。興味があって色々声を掛けていただけだ。不快に思ったのなら謝罪しよう」


 エリオットの声だ。何事かと気になったが、ここで立ち止まって様子を見ると目を付けられる可能性があるけど――


「他ならぬ本人から情報収集といくか」


 懐に飛び込むのはリスクはあるが、警戒して近寄らないようにするというのもそれはそれで怪しまれるだろう。どのみち既に顔を合わせているのだ。通りがかって声を聞いたのなら様子を見るのが自然な行動だな。

 俺は野次馬達が並ぶ隙間から様子を見る。使い魔を用いてもいいのだが……いや、戦士ばかりがいるこの町で下手にそういうのを飛ばすと面倒事が起きるかもしれないし、やめておこう。


 視界にエリオットの姿が入る。相対する男性はスキンヘッドのいかつい戦士であり、エリオットが何かをやって非難しているような状況だった。


「お前、一次予選を通過しているからといって浮かれていないか?」

「そういうつもりじゃない。横にいる彼には話したが、戦士団を新たに創設しようとしている。そのメンバー集めをしているところで、実力に見合った人物には積極的に声を掛けている。それだけだ。不快に思ったのであれば――」


 ……なんとなく状況が読めてきた。エリオットは戦士に声を掛けたが、相手は戦士団所属とか、そういう類いの人間だったのだろう。で、怒鳴る男性は相棒が誘われて怒っていると。

 フリーの冒険者の中には誰かとペアやトリオを組んで行動している人もいるし、そういうケースは結束も強い。下手に「戦士団に入らないか?」とスカウトすれば、相方なんかに喧嘩を売られるみたいなパターンもある。目の前の状況はまさしくそれだろう。


 で、エリオットとしては下手に出ている。ここで高圧的な態度をとったり引っ掛かる物言いをすると余計に話はこじれるのだが、さすがにそれはしない……しばし彼らはにらみ合っていたが、これ以上は無駄だと悟ったのかスキンヘッドの戦士は、


「……二度はねえぞ」


 立ち去った。それで周囲にいる野次馬も散らばり始めた。

 そうした中で俺はエリオットへ近づく。向こうも気付いたらしく首を向けてきた。


「ディアスか」

「あちこち声を掛けた弊害が出たみたいだな」

「こっちとしては必死だから、とりあえず声を掛けようという方針なんだが」

「……なあ、戦士団を設立するのはわかったんだが、そこまで性急にする必要があるのか? 確かに今、この町には優れた戦士や闘士が集結している。でも、とりあえずリサーチしておいて後で声を掛けるとか、そういう手順でも良くはないか?」

「あるいは、優勝した後とかな」

「そうそう」

「ディアスが言うことも一理あるが……大会が終了してからでは遅い」

「遅い?」

「ああ……大会が終わるまでに戦士団が結成できる形くらいは整えておかなければ」


 そう言いつつ彼もまた立ち去った……俺はそこで気付く。なんだろう、最初に出会った時と比べ余裕がなさそうに見えた。


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