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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第六章

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優勝へ向けて

 その後、食事は穏やかに進んだ。ただ、ヴィルマーは俺がここにいる経緯について知りたい様子であり、アルザのこともあるので話すことにした……クラウスから始まり、三度目の説明である。


「へえ、なるほどな」


 と、一通り話したヴィルマーの感想はそれだった。


「それで今回はアルザの意向を汲んでここに来たというわけか」

「ああ」

「……英傑と直接対決したのは気になるな。明日、どこかで決闘でもしないか?」


 笑顔のまま問い掛けてくるのだが、凄みがあって結構怖い。


「やめとくよ。正直、勝ち負けについては興味もないからな……そもそも、魔法使いと戦士とでは勝負する土台がない」

「決戦術式とやらを使えば対抗できるのでは?」

「それにしたって本職の戦士相手にするのはさすがに無茶さ。強化魔法による接近戦に持ち込むわけだが、その接近戦において技量で遙かに上回る相手だ。勝ち目はない」

「魔王の場合は通用したのにか?」

「魔王は剣などを用いて攻撃をしていたが、技量という面では人間の達人級と比べればさほどではなかったからな……戦いの中で接近戦に持ち込んでもなんとかなると判断して、実行に移したんだよ」


 ……まあ、やり方がないわけではない。決戦術式による強化は確かに接近戦に持ち込めるくらいの能力向上が見込まれるわけだが、魔法などの威力も上昇する。戦士相手ならば無詠唱魔法を駆使した遠距離戦に持ち込めば、十二分に勝算はある。

 ただ、それはヴィルマーが望む決闘とは程遠いものになるだろう……どんな手段を使ってもいい、という前提ならば有用だが、実力を出し切るという戦いにおいて、戦士相手にはあまり意味がない。


「今回の闘技大会には魔法使いも出場している」


 ヴィルマーは俺へ言い聞かせるように語る。


「直接的に攻撃ができなくとも、立ち回り方はあると思うが」


 ……別に接近戦に持ち込まなくてもいいということか。


「その辺りはどうだ?」

「……申し訳ないけど、決闘をする気はないな」

「そうか。残念だな」


 あっさりと引き下がった。無理強いはしないらしい。

 ただ、魔法使いも出場するということは……俺はここで一考し、


「ヴィルマーを含め、それこそ色々な戦士が出場する以上、情報収集くらいはしておくべきなのか?」

「そう思うぞ、実際に俺も調べている」

「調べている……対策を何かやろうとしていると?」

「先に言っておくが、下調べもなく戦うようなことはあまりないぞ。魔族や魔物相手でも事前に情報がとれるのであればそうするだろう? あるいはダンジョンに潜る際、可能な限り情報を集めようとするだろ?」


 それもそうである……俺はここでアルザを見る。


「なあアルザ、明日以降はどうする?」

「町を見て回ろうかと思っているけど……参加できそうな大会があったら出てみようかな」

「観戦者ありの戦いをやって、場数を踏むと」

「うん。それと良い店があったら入る」


 ……大食いチャレンジとかやったら、別の意味で目立ちそうだけどな。アルザは周囲の目とか気にしなさそうだけど。


「なら俺は、出場者について調べてみようか」

「え、でも……」

「アルザは仲間である以上、何もしないのは心苦しいからな」


 俺が発言した時、ミリアがこちらへ視線を向けてきた。

「私も何かするべき? 鍛錬している時間以外はどうしようか考えていたのだけれど……」

「うーん……カトレアさん、どうです?」

「――出場者において、魔法使いというのは情報があまりないことが多い」


 俺の問い掛けを受け、カトレアが口を開く。


「出場者かつ本戦まで到達する実力者は、宮廷魔術師を目指しているとかのパターンが多いからねえ。ギルドなどで情報が出ないんだよ。とはいえ、だ。同じ魔法使いとしてそれなりに情報網はある。調べてもいいかもしれないね」

「なるほど……カトレアさん、ずいぶんと協力的ですね?」

「女性には優しいと言ったろ? 何より、ヴィルマーが優勝するよりアルザが優勝した方が面白いことになりそうだしねえ」

「面白い、で手を貸そうとするのは怖いですね」


 苦笑するヴィルマーは、念を押すようにカトレアへ尋ねる。


「カトレアさんはアルザの味方、ということでよろしいか?」

「女性の味方だね」

「……なるほど。理解しました。元々聖王国中の人間が集う大会。英傑が来るとは思いませんでしたが、相当厳しいだろうと考えていた。さらに警戒を強める必要がありそうですね」


 そこまで言うとヴィルマーは立ち上がった。


「ディアス、お暇させてもらう」

「次は闘技大会の決勝で、ってことか?」

「さすがにそんなことを言うつもりはないぞ。俺自身、勝てるかどうかわからないが……まあ」


 と、彼はアルザへ目を向け、


「彼女と戦う時は、しかるべき舞台の方が良いかもしれないな」

「決勝で待ってるよ」


 その言葉にヴィルマーは笑みを浮かべた後……立ち去った。


「何にせよ、面白いことになりそうだ」


 ここでカトレアが口を開いた。


「アルザ、魔法について何かやるかい? 金さえ払えば多少なりとも指導してやれるけど」

「もう少し色々と見聞きして、判断したいと思う」

「そうかい」


 会話を聞きながら俺はアルザへ視線を送る。ヴィルマーとの邂逅で彼女自身に特別変化はない……が、優勝が過酷なものになるという確信は得たようだった。


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