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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第六章

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魔王という存在

 やがて料理が運ばれてきて和やかな食事が始まる……会話の内容そのものも当たり障りのない雑談であり、なんというか冒険者とか歴戦の戦士とかが混ざっているような感じではない。

 けれど雰囲気はよく、笑いながら食事を進めることができた……と、ふいにヴィルマーが俺へ話し掛けてきた。


「ディアスは大会に参加しないんだったな」

「ああ。正直強さとか興味ないからな」

「……個人的には興味があったんだが」

「俺に?」

「最前線で英傑と共に魔王と戦っていた……興味があるのは当然だろう?」

「そういえばヴィルマーは魔王との戦いには参戦していなかったな」

「別の仕事で負傷してしまったからな……参戦できなかったことは悔やまれる」


 本当に悔しそうに語るヴィルマー……ここでカトレアが口を開いた。


「ディアス、魔王という存在はどうだった?」

「……正直、なぜ勝てたのかわからないくらいには強大だったと思いますよ」


 俺は答えつつ、スープを飲む。


「例え英傑であっても、魔王の力を完全に把握することはできなかったはず……俺達にできたのは、自分の力を信じ戦うことだけでした」

「それで最終的に勝利したと……ただその顔を見ると、様々な奇跡があって勝てたと言いたげだね」

「実際、そうだと思います」

「ふむ、魔王を倒してっきり尊大になっているかと思いきや、実際はそうじゃないみたいだね」

「魔王と直接戦った英傑達なら、俺と同じように思っていますよ……あの戦い、勝てたのは奇跡であり、もっと強くならなければ、と」


 ――現在の魔界において魔王以上に強大な存在はいないと考えられる。しかし、同等の力を持つ者がいて、人間界に押し寄せてきたらどうなるか予想もつかない。そして聖王国の現状を考えると、決して絵空事ではない。


「……今回、運営に英傑のクラウスが加わっています」


 俺の言葉にカトレアは「ほう」と短く呟いた。どうやら知らなかったらしい。


「初耳だね。けれどすぐに話には上るか」

「だとは思います……国側としては闘技大会は開催するが、警戒の度合いを最大限に、という考えのようです」

「王都の襲撃を始め、魔王を倒して以降魔族の動きが活発になっている。本来ならば中止になってもおかしくはないが、被害があまり出ていないことを考慮し、警戒を強めつつ開催する方向に動いた、といったところかねえ」


 カトレアの見解は正解だ。


「それに、大した被害が出ていないのに中止すれば魔王を倒したのに魔界側の攻撃に聖王国は屈服した形になる。それは間違いなく魔族にとって付け入る隙になる」

「そういう面も考え、というわけですね……」

「色々と大変な情勢みたいだな」


 ヴィルマーは面白くない、といった表情で告げた。


「俺も何かしら手を貸したいところだが……」

「そこについては冒険者ギルドとかに掛け合ってみるしかないな。個人でできることというのは高が知れているし」

「そうか……大会が終わった後、どうするべきかは考えよう」


 ヴィルマーが戦いに加わってくれるのであれば、個人的にも頼もしく思うが……あ、そうだ。エリオットのことについて、アルザに話しておかないといけないな。

 とはいえ、さすがに食事の席で言及する必要性もないか……と思っていたのだが、俺が何か言いたそうな視線を向けていることを察した彼女は、


「何かあるの?」

「あ、いや……」

「別にあたしゃ内々の話でも構わないよ」


 と、カトレアが俺へと言い含める。


「誰かに聞かれたくないのなら話は別だけどね」

「……まあ、別に誤魔化す必要はないか。アルザ、戦士団『白銀の座』に所属していたエリオットという人物、聞いたことはあるか?」

「知らない」


 即答である。一匹狼だった彼女としてはそれはそうか。


「英傑入りできるかはわからないが結構な実力者だ。アルザが参加する大会へ赴く前にその人物と遭遇したんだけど……戦士団を脱けて新たに創設するらしく、自分の実力を示すことに加え団員を探し今回、闘技大会に出場するらしい」

「……それはわかってけど、何かあるの?」

「アルザは小さなものだったけど大会の優勝者になった。元英傑であるアルザに勧誘が来るかもしれないから、面倒だったら俺の名前を出してもらって逃げてもいいということを言いたいんだが」

「なるほどね。憶えておくよ」

「ちなみにヴィルマーに対してもそういう話が来るかもしれないが」

「適当にあしらっておくさ」


 肩をすくめつつヴィルマーは応じる。ちなみに、


「エリオットについては知っているか?」

「その戦士団、魔族や魔物相手に活動していたんだろう? 知るはずがないな」


 うん、そうだな……と、ここで俺はカトレアの視線に気付く。当の彼女は面倒そうだなという顔つきである。


「カトレアさんは知っていますか?」

「知らないねえ。ただ、色々な理由で参戦する人間がいるというのはわかった。出場する門下生にも、色々言い含めておくとしよう」


 ……エリオットの勧誘は面倒だと思ったのかな? 彼の勧誘は前途多難かもしれないなあ、などと思ったのであった。



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