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精鋭の騎士

 そして、俺達は闘技の町ラダルクへ到着した……その町は様々な形をした闘技場を囲むようにして町が形成されており、多数の人々が東西南北に伸びる街道によって町へ吸い込まれていく光景が見える。

 冒険者の姿も多く、観戦するために訪れたのかそれとも自らが戦うのか……俺は町へ視線を送りながら懐から書状を取り出す。それはヘレンから渡された紹介状だ。


「今回、国が主催ということで運営として騎士がいるはずだ。まずはそこへ挨拶へ行こう」

「……便宜を図ったりするのかしら?」


 そんな疑問がミリアの口から漏れたが、俺は首を左右に振った。


「あくまで挨拶で、精々ラダルク滞在中に良い宿を手配してもらうくらいがいいかな。闘技大会は正々堂々と、純粋な実力だけで決まるものと観客は考えている……そこに何かしら便宜とかあったら、その情報が漏れた瞬間例え優勝しても大ブーイングになるぞ」

「確かにそうね……けれどそうだとしたら、ヘレンが紹介状を渡したのは――」

「そこそこ顔も知られているし、何かしら対策しないと人が押し寄せる可能性もあるから、そういうことを考慮して、かな。その辺りのことを説明すれば、何かしら対策してもらえるだろ」


 そんな会話をしつつ俺達は町へと入る。そこは……大会が始まる前の時点でお祭り騒ぎとなっていた。

 大通りには露店が並び立って呼びかけの声が鳴り止まない。観光に来た人達は通りを歩きながら笑顔であり、これから始まる大会を心待ちにしていることがわかる。


 中には誰が優勝するか、という賭けを行っている者もいるようで……激論を交わしている人の姿も見受けられる。


「……出場者は、そのほとんどが決まっているのかしら」


 そうした声を耳に入れたのかミリアが呟く。そこで俺は、


「大会出場者……常連というのは割と決まっているからな」

「常連?」

「普段から闘技によって腕を磨いている人とかだ。後は、名うての冒険者とか……ただ、英傑のように魔物や魔族と戦っている人とは少し違うし、そうした人は戦士団との関わりも薄い。俺はあまり知らないな」

「魔族と戦う人と、そうでない人で違うということ?」

「優勝候補くらいは俺も名前を聞いたことがあるレベルだとは思うけど」


 俺は町を見回し、目当ての建物を見つける。


「まずは紹介状を活用しよう。町の中央に位置する闘技場……あの近くに騎士団の詰め所がある。たぶん運営をやっているはずで、そこで紹介状を提示すればよさそうだ」


 俺達は人混みの中を歩いて行く……王都を含め、魔族や魔物が精力的に活動している。けれどこの町はそんなこと知らないとばかりに活気に溢れ、これから始まる大会に向けて準備が進められている。

 ただ、こういう一大イベントで魔族が動かないとも限らない……のだが、それは国もわかっているだろう。今回は国主催のイベントだし、相応の警戒はしているはずだ。


 詰め所へ赴き、もし運営をしている騎士の中に王都にいる精鋭の騎士が混ざっていたとしたら……国としても相当気合いが入っているということになるだろう。今回の大会をどのように扱っているか、そこを見定めるのにもよさそうだ。

 町の中央にある闘技場周辺も人は多く、そうした中で俺は詰め所へと入った。騎士が応対したので紹介状を差し出すと、宛名を見て騎士は息をのんだ。


「……少々お待ちください」


 奥へ引っ込んでいく。無碍にはされないだろうということで少し待っていると……やがて騎士が戻ってきた。


「どうぞこちらへ」

「俺達は運営側に立つわけじゃないけど……奥へ入っていいのか?」

「お話ししたい方がいますので」


 誰だろう? 疑問に思いつつ俺は頷き騎士の案内に従って詰め所の奥へ。

 そして通されたのはどうやら個室……誰かいるのだろうか?


「お連れしました」


 騎士はノックをしながら言った後、扉を開けた。そこにいたのは、


「……は?」


 俺は間の抜けた声を上げてしまった――国側が大会に対しどう考えているのか。これまでの襲撃事件から、運営側の態勢によってどの程度の警戒なのか見極めることができると思っていたのだが……最上級レベルだと確信できる相手がそこにはいた。


「やれやれ、まさかディアスの顔を見ることになるとは思わなかったぞ」


 ――その相手は『六大英傑』のクラウスだった。


「……どうしてここに?」

「どうしてって、大会運営の詰め所にいるのだからやることは一つだろう?」

「そうじゃなくて……王都を離れていいのか? ということなのだが」


 ――まだヘレンから話は聞いていないだろう。ギリュア大臣のことは、黙っていなければならない。


「ああ、その点については説明するとしようか……と、さすがにこの部屋では狭いな。客室へ移動しよう」


 クラウスが部屋から出てくる。そして彼は、


「そちらの事情はおおよそ聞いている。ツーランドでも活躍したそうじゃないか……よければ、これまでの旅路についても直接聞きたい――」


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