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次に向かう町

 俺達はツーランドの町を離れ、旅を再開した。前回関わった事件で魔族と繋がっている人間については判明した――が、策がなければ勝てる相手ではない。よって、英傑の一人であるヘレンが証拠集めなどに奔走し、その間他の英傑や俺達は彼女が本格的に動き出すまでは自由に行動する……というわけで、俺達は次の目的地を定め歩いている。


「ミリアには解説が必要だよな?」


 これから行く場所について尋ねると、ミリアは頷いた。


「ええ、そうね……戦士同士が戦う場所、というくらいしか」

「魔界でそういう場所はないのか?」

「ないわね。そもそも魔族は一度戦いが始まれば甚大な被害が生じる。それがわかっているから、基本は戦ったりはしないのよ。決闘だって、場所が悪ければ無茶苦茶になるから」

「魔族同士の戦いは恐ろしいってことだな……なら説明しよう。これから向かう町――ラダルクは、剣術、魔法問わず、様々な技術を磨くために多くの人が集う、闘技の町だ」


 ――闘技場、と呼ばれる娯楽施設があるのもここ。聖王国では複数こういった町があって、それらだけに闘技というものが許可されているのだが、ラダルクはその中で一番規模が大きい町だ。


「剣術を始めとした武器の技術だけでなく、実戦的な魔法技術も学べる……ミリアの目的はこの魔法に関して教わることだな」

「私は魔族だけど、なんとかなるかしら?」

「魔力的な問題はあるけど、技術というのは人も魔族も関係ないだろ? おそらくは大丈夫……あ、そうそう。あてがあるといった師匠に、魔族ということをバラしても問題はないよ」

「……なぜ?」

「弟子の中には魔族もいるからな」

「なるほど……種族は問わず教わることができるということかしら」

「そういうことだな。ちょっと癖のある人なんだけど……で、アルザは大会に参加する」

「そうだね」


 三年に一回、ラダルクが中心となって聖王国主催の闘技大会が開かれる。優勝者には相応の栄誉と賞金が贈られるわけだが、


「優勝者は賞金以外にも様々な恩恵がある……元々、アルザは冒険者としては名が知られていたけど、一般の人にまで浸透していない」

「普通の人が知っているのは『六大英傑』クラスの人じゃない?」

「そうだな。騎士のクラウスやセリーナなんかは有名……だけど、英傑全員を言える人がどのくらいいるのか……ともあれ、大会で優勝したら話は別だ。特に女性剣士はここ二十年くらいは優勝者がいない。そこで優勝して、村の復興をする……なんてことを言えば、支援してくれる人だって現れる可能性はある」

「私としては目標が達成できる近道になるけど、問題はこの旅が続けられるかだよね」

「有名になったら大丈夫なのか、って話だな。そこについてはそんなに心配してないよ。実際、大会優勝者は大会以降も旅を続けた戦士がいたくらいだ。有名になるための近道ではあるけど、旅に支障をきたすレベルにはならないさ」


 ここで俺はアルザを見据えつつ、


「ただ、村の復興の近道になる以上……その目的が果たせたら、旅を終えてもいいんじゃないか?」

「私だってギリュア大臣との戦いの顛末、見たいんだけど」


 あ、そっちにも興味ありか。


「なら、大会終了後も付き合ってもらうしかなさそうだな」

「……そっち方面で問題は出ないのかな?」

「ギリュア大臣のことで? まあ色々と考えられるけど……むしろ煙に巻く機会にできるかもしれない」

「煙に巻く?」

「魔族のことを調べて回っている、という中で突然大会に参加するというのは矛盾しているだろ」

「確かにそうだね」

「で、仲間の一人……アルザの目的が故郷の復興、ということになったら、ギリュア大臣としては金を稼ぐために率先して事件に首を突っ込んでいた、という解釈にならないか?」

「そっか。私達が旅した理由が明確になるのか」

「実際は単なる偶然だけど……ということで、こういった大規模イベントに参加するのなら、今までの旅路について理由付けになるからむしろ良いかなと」

「ちなみにディアスは参加しないの?」


 アルザからの問い掛けに対し、俺は迷わず首を左右に振った。


「出場する理由がないからな。今回はアルザのアシスタント役ってことにしておくさ」

「まず大会出場の登録方法から教えて欲しいかなあ」

「……出場したことなかったか?」

「そもそもラダルクを訪れるのが初めて」

「わかった。俺は出場したことないけど、戦士団のメンバーが参加したことがあるし、登録方法なんかはわかってる。付き合うことにするか」

「よし」


 ガッツポーズをするアルザ……あれ、これもしかして厄介事を押しつけられた?


「頑張ってね、ディアス」


 そしてミリアが応援する……これはやられたかなと思いつつも、特に不満を言うこともなくアルザの手伝いをしようと決めたのだった。


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