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決戦の魔法

 俺達は町を出て、街道を進み……やがてヘレンとアルザが決闘をした場所に辿り着いた。そこには既に杖を持つセリーナが待っていて、横手にはシュウラとニックの姿がある。


「来たわね」

「ああ……審判とかいるか?」

「決闘ではあるけれど、さすがにそこまで必要ないと思うけど」

「わかった……が、さすがに納得がいくまで戦い続けるとかいうのは、ナシにしてもらいたいけど」

「誰もが見て納得がいくような勝ち方でなければ、私の負けでいいわ」

「そんなことを言って大丈夫か?」


 問い返したがセリーナは何も答えないまま杖を構えた――綺麗な装飾が施された宝杖であり、彼女が魔法を上手く扱えるよう細工したオーダーメイドの一品だ。

 それに倣うように俺は杖を構え……後方にいたミリア達は横へ。そうして俺とセリーナは戦闘態勢に入った。


 周囲には既に結界が張られている。魔力が周囲に拡散しないようにするための処置だが、どうやらこれはシュウラがやったらしく彼の魔力が漏れ出ている。

 風が吹き、葉擦れの音が耳に入ってくる。俺とセリーナは共に動かず、双方とも出方を窺うような状況だ。


「……こっちが本気を出すのを待っている感じか?」


 問い掛けたが、セリーナは無反応。とはいえ、何かあれば差し込んできそうな気配もある。

 まあ仕方がない……強化魔法については準備もあるため瞬時にできるが、そのわずかな時間でもセリーナは先手を打ってくるだろう。当初の想定通り、初撃を防げるか否か……そこに集中するとしよう。


 俺は魔力を発露する……強化魔法を使うまでの前兆とでも言うべきか。自分自身に掛ける場合……特に強力な魔法を使用する場合にだけ起きる現象だ。

 そしてそれをセリーナは見逃さず――杖先に魔力を集める。


 刹那、俺は一瞬で魔法を起動する。魔王との戦いで使用した決戦術式。全身に血流が駆け巡るがごとく、魔力が頭の先から足の先まで一挙に流れる。

 そこでセリーナが動いた。杖先に生じていた魔力が、俺へ向け放たれる。それは極めて単純な光弾。だが速度は相当なもので、術式を起動させたが回避が難しいタイミングだった。


 避けるか、受けるか――俺は避けることを選択。体をひねり、杖に魔力を集めつつ光弾へ向けかざした。

 そして、光弾が触れる。同時に感じる重い感触。それと共に、即座に悟った。これ以上の衝撃を与えれば光弾は爆散する。


 俺は体を動かしてどうにか光弾を受け流した。下手に衝撃を与えないまま軌道が変わり、俺の後方へすっ飛んでいく。

 誘導するような特性を持っていたらまずかったが、どうやらそうした機能はなくシュウラが構築した結界へ目がけて突き進み、直後――背後から閃光と、結界内を満たす耳が痛くなるような轟音が響いた。全身を震わせるほどのものであり、粉塵が巻き上がり観戦していたミリア達が瞠目する。


「……ちょ、ちょっと待ってください! セリーナ!」


 ここでたまらずシュウラが声を上げた。


「霊脈を利用した結界だったからよかったものの、もし結界が破壊されれば街道まで影響が――」

「ちゃんと強度は確認した上で魔法は使ったわよ」


 あっさりと返答したセリーナは、俺を見据える。


「それに、相手はディアスである以上……加減なんてできないもの」

「怖い顔をしながらそこまで俺の能力を買っているのは意外だが……まあ、このくらいは想定内だ」


 言いながら構え直す――決戦術式だが、魔力を身の内で循環させる形式であるため、何もしなければ魔法は維持できる。とはいえそれはあくまで維持できるだけで魔法が解除される猶予が少し延びるくらいの影響しかない。


 どうにか防いだが――俺が動き出すより先に、セリーナがさらなる光弾を放った。魔力を練りに練った高威力の魔法。俺は杖先から溢れる魔力を見て、どういうからくりなのかを悟る。

 身の内から一気に魔力を高めればあのくらいの魔法は生み出せるはずだが、どうやら杖先に充填していた魔力を用いて放ったらしい。彼女の杖は、それ自体に魔力を貯め込むことができる。つまり魔力のタンクを別に一つ持っているというわけであり、この有用性を活かして長期戦も彼女はできる。


 とはいえ、先ほどの威力を持った光弾を連発すればいくら充填しているとはいえ……セリーナが魔法を解き放つ。加減はなし、というわけだ。

 いくつもの光弾が生み出され、それが俺へと迫る。ここでまたも選択に迫られた。避けるか受けるか……とはいえ、光弾を一発受けて動きを止められたらその時点で他の光弾が襲い掛かってくる。受けるという選択肢は悪手だ。


 とはいえ、避けるという選択は……ここで俺は三つ目の選択を見いだした。杖先に秘められた魔力は明らかに少なくなっている。出し惜しみはしないという腹づもりであり、最初から全力ということだろう。

 ならば――俺は足を前に出した。多数迫る光弾。その一つ一つが先ほどの威力を持っているであろう予想はできる。


 だが逆に言えば、一気に魔力を消費したことで次に放つ杖利用の即時魔法は威力が弱まる……よって、セリーナの懐へ飛び込むべく、一気に駆けた。


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