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集結

 俺はシュウラやニックと遭遇した足で冒険者ギルドを訪れた。ギルド側から見て町の状況はどうなっているのかを確認したかったためだ。

 結果から言えば、多少の混乱はあれど問題はなくなっている……ギルド側としても騎士団に協力する立場のようなので、混乱もいずれ解消されるだろう。


 俺やヘレンの出番は終わったと考えていいだろう……そんな時、ギルドへ入ってくる人間が。

 一瞬そちらに目を向け、また視線を町の状況が記されている資料に向けようとした時……二度見した。


「……は?」

「あれ? ディアス?」


 思わず声を上げ、それに対し相手は苦笑しつつ近づいてきた。


「まだこの町にいたんだね」

「……エーナ、何をしているんだ?」


 冒険者ギルド本部で仕事をしているはずの、エーナの姿。なおかつその後方には側近であるノナもいた。


「というか、仕事は?」

「放り出しているわけじゃないよ。緊急で仕事を任せられる人を探して、どうにかお願いしてきた」

「ここには何の用で来たんだ?」

「ツーランドで起こった事件については、町長が主犯者だったでしょ? そういうことで騎士団が色々と動いているみたいだけど、調査協力を頼まれて」

「調査?」

「今回のこの事件について、果たして反魔王同盟……それが関わっているのか、冒険者ギルドの代表者として本部の事件に携わった私の方から見解が聞きたいと」


 なるほど、そういうことか……。


「ヘレン辺りが根回ししたのか?」

「うん? いや、そういうわけじゃないと思うけど……私は国の要請に従っただけだし、どちらかというとクラウスからの案件じゃない?」


 ……そうか。ただこうなると、


「なあエーナ」

「うん、どうしたの?」

「ヘレン以外にセリーナが町にいるけど」

「その原因は私」

「ああやっぱりか。そこは予想していた」

「もう既に会っているのか」

「それで決闘をするということになった」

「そっか。頑張ってね」

「ああ、それで……とシュウラとニックもこの町にいるんだけど」

「……は!?」


 さすがにそれは予想外だったか、エーナ達は目を丸くした。






 その後、俺達は冒険者ギルドの奥――職員専用の部屋に入って話をした。そこでエーナは、


「観戦に来たと……つまり、この町にはクラウスを除く英傑が集結していると」

「そうなるな……魔物に対抗するためとかいう理由でも、過剰戦力だな」


 さすがにクラウスがここに来るとは考えにくいので、英傑は打ち止めだろうけど。


「ただこれ、別の意味でまずくないか?」

「どうして?」

「俺達の情報についてはおそらく魔族や騒動を引き起こしている存在の耳に入っている可能性は高い。まして相手は王宮内にいるとしたら、騎士団や冒険者ギルドから情報がとれる」

「ああそこか。大丈夫じゃない? セリーナやシュウラ、そしてニックは完全に個人で動いている。戦士団が報告をしない限りは問題ないと思う」

「エーナがここにいることは……」

「さすがに情報はいっているだろうし、ヘレンがいることもわかっているはずだけど……ま、騒動は解決したしディアス達が町を離れれば怪しまれることはないんじゃないかな」


 と、ここでエーナは苦笑。


「そもそも何か裏があるわけじゃないけど」

「……エーナ達は単純に指示でここに来たわけだからな」

「そういうディアスはどうなの? 旅の目的を考えたら偶然っぽいけど」

「うん、偶然だよ……騒動があって、なおかつヘレンと顔を合わせたのも偶然だよ。ただ敵さんにこれは偶然だと片付けられるのかどうか疑問だけど……」

「まあまあ、大丈夫だって」


 あくまで楽観的に語るエーナ……彼女は多くの情報を集めることができる。それを踏まえ、英傑達が集結しても大丈夫だろうと考えているのだろうか。


「ふむ、しかし決闘……私も観戦しちゃだめ?」

「俺に対し許可取りは必要ない。セリーナに言ってくれ。断られそうだけどな」

「どうだろうね? シュウラ達もいるわけだし、案外簡単に同意してくれるかもしれないよ」

「……機嫌を損ねるのだけは勘弁してくれよ」


 俺は頭をかきつつ、今後のことを考える。


 ――現時点でヘレンはまだ俺やミリア達にだけ、騒動の中心人物に関する情報は伝えていない。英傑にはいずれ話すことになるだろうけど、それはきっとヘレン自身が英傑達の所を訪れて密かに、という形をとった可能性が高い。

 けれど偶然にも、ここに集まってしまった……ある意味話が早いわけだが、こうも急展開だと正直ついていけない。


「……新しい情報でもつかんだ?」


 俺が沈黙したためかエーナは問い掛けてくる。


「難しい顔をしているけど」

「そのあたりのことは、決闘が終わってからだな。ヘレンの口から語られることになるだろうけど」

「そっか……決闘、正直どう?」

「勝てるかどうか? それはわからないな……勝機がないわけじゃない。けど今回ばかりはさすがに相手が強すぎる」


 俺は、彼女と同じ戦士団の一員として戦ってきた。だからこそ、彼女の強さは――俺が一番よく知っている。団長であるロイド以上に。


「ま、やれることは全てやるさ」


 そう気軽に言うとエーナは「頑張れ」と俺を応援したのだった。


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