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興味本位

「やあやあ、お二人とも」


 声がしてヘレンはようやく気付いたか振り返り……瞠目した。声をなくすほどであり、一方の俺も似たような心境であった。


「……どういう風の吹き回しだ? シュウラ」


 本来、ここにいるはずがない……いや、来るはずがないと思っていた英傑の一人、シュウラがここに現れた。


「そう警戒しないでくださいよ」


 俺達が凝視する中で、シュウラは苦笑する。


「他ならぬセリーナが動いたんです。私が興味本位で首を突っ込もうとするのはわかりきったことでしょう?」

「……セリーナはたぶん、戦士団にも今回のことは言っていないと思うんだが」


 俺が応じるとシュウラは同じテーブルにある椅子に座りつつ、


「ええそうですね。私的な用事ということで『暁の扉』の団員にも詳細は語っていませんね」

「ならなんでシュウラが知っているんだよ」

「そこはまあ、色々と」

「そういう風に隠すから、怪しまれるんだよ」


 と、鋭い指摘がヘレンからもたらされた……いや、別に鋭くもなんともないな。ただ単に事実を言っただけだ。


「で、そっちは何をしに来たの?」

「セリーナがディアスさんに会おうとした……彼女が独自に動いているとわかり、なおかつディアスさんのいる方角ということでここへ来ました。セリーナがやることは……可能性として高いのは、因縁を終わらせるための決闘か何かでしょう」

「で、見届けに来たと?」

「ええ、そんなところです」


 笑みを浮かべたままシュウラが言う。


「間違いなく現代において最強の魔術師であるセリーナと、魔王に一矢報いた英傑に次ぐ存在。興味があるのは当然でしょう?」

「……というか、よくセリーナの心情をそこまで察せられたな。そもそも因縁についても――」

「因縁のことを知っているのは、彼女の師匠と少し関わったことがあるからですよ。実力はありますし、一定のカリスマ性を持っていたのは間違いありませんが、やや性格に難がある方でした。とはいえ彼女はそれを理解してなお、因縁を持ち続けているわけですが」


 改めて思うが、シュウラの情報収集能力は恐ろしいな。


「会いに行く理由として、浮かぶ理由はそのくらいかなと思ったわけです。ディアスさんとの関係について考えれば、闇討ちなんてやらかす可能性はないと思いましたし、正々堂々と決着をつけようと考えている……まあそこまでは推測したわけです」

「……とりあえず、面白そうなことがあると感じる嗅覚はさすがだな」

「ありがとうございます」

「褒めてないんだけどな」


 シュウラは笑みを絶やさず向けてくる。そんな表情をする彼に何を言っても無駄だろうと察し、俺は肩をすくめる。


「まあいい、勝負は三日後だ。それまでにセリーナと顔を合わせておかないと追い返されるぞ」

「ああ確かにそうですね。ただ、さすがに彼女が宿泊している宿とかは知らないんですよね……ディアスさん、知りませんか?」

「出しゃばっている自覚がある以上は、申し訳ないが自分でなんとかしてくれ。世話を焼くつもりはないぞ」


 シュウラは「そうですか」と笑いながら応じる……まったく。


「ヘレン、会話が中断したけどどうする?」

「あー……もういいかな。とりあえずシュウラを見張っとくべき?」

「決闘に手を出してくることはないから別にいいよ……シュウラ、町の事件は既に解決している。余計なことはしないでくれよ」

「わかっています。解決した事件をほじくり返すような真似はしませんからご心配なく」


 本当かなあ、と内心で思ったけれど口には出さないでおく。


「ちなみにですがディアスさん」

「どうした?」

「もしよければ、知り合いが近くにいるのでその人物と一緒に決闘を観戦したいのですが」

「……見世物じゃない、と言いたいところだけど止める気はないな。ちなみに大人数か?」

「いえ別に。一人か二人でしょう」

「なら別にいいんじゃないか? まあ、セリーナの気に障ったら追い返されそうだけど」

「大丈夫でしょう」


 そしてシュウラは再度笑みを浮かべる……明らかに何か思いついているような雰囲気である。

 とはいえ、興味本位で尋ねるようなことはしない……別に会話をしているこちらの考えを悟らせそうだからとか、そういうわけじゃない。単に面倒なだけだ。


「まあ、今後のことを考えると話が早くなったという面もあるにはあるか」

「話が早い?」


 聞き返してくるシュウラ。俺はそれに「何でもない」と応じつつ、


「頼まれていたアルザのことは……別に話さなくてもいいか。既に情報は得ているだろうし」

「ええ、様子を見に行ってありがとうございました。とはいえ、まさか一緒に旅をするとは予想外でしたが」

「色々あったからな……さて、俺も食事を終えたらさっさと宿へ戻るとするか。準備について仕上げないといけないからな――」


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