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優先すべき相手

 ――数日後、ツーランドの町はまだ喧噪に包まれてはいたが、魔族という脅威がなくなったためか人々の表情は明るくなった。

 俺達は今後についてどうするのか話し合い、その結果魔族を探すこととなった……のだが、居場所について手がかりが皆無である以上は、手段としては一つしかないという結論に至った。


「ディアスが関わってきた事件について、その全てが一つの線で繋がっているのかはわからない」


 ヘレンは俺へ向けそう語る――場所は酒場。町の状況を改めて確認して俺達は昼食をとりながら話し合いを行う。ちなみにアルザやミリアは町に繰り出していてこの場にはいない。


「でも、魔王が滅んでも魔族達は人間界で精力的に活動している……ならそれを利用して情報を得るのが一番でしょうね」

「つまり、わざわざ騒動の渦中に入り込むわけだ」

「そう。ディアスみたいにね」

「……本当に、偶然なんだけどな」


 俺はここでため息を一つ吐いた後、


「なあヘレン。ギリュア大臣が敵だとして、俺のことはどう考えているんだろうな? もし一連の騒動が反魔王同盟の仕業だったとして、ギリュア大臣がそうした魔族と関わりがあるとしたら……俺がやっていることは完全に妨害行為なわけだろ?」

「正直微妙。だけど、ディアスに対し監視の目を付けていないってことは、まあ放置はされているんだと思うけど」


 ここでヘレンはやれやれといった様子で肩をすくめる。


「ディアスって自己評価が低いけど、王宮内の評判は悪くないし、下手に手を出したら逆に気付かれてしまう、なんて可能性を考慮しているのかも」

「そうなのか?」

「久遠の英傑……英傑入りはしていないにしろ、強化魔法で多大な貢献をしてきたのは事実。むしろ人によっては英傑以上に評価している人もいる」

「おいおい……初耳だし、そもそも虚像なんだけど」

「それを虚像と言い切ってしまうところが、ディアスの良いところでもあり悪いところでもあるかな」


 なんだそれ? 首を傾げるとヘレンはさらに続ける。


「ディアス、戦士団を抜けてどれだけ影響があったのか知ってる?」

「まあ、団員が抜けるとか色々あったみたいだな」

「ディアスが所属していた『暁の扉』だけじゃない。一体何をするのかと、ディアスの動向を冒険者ギルドを介して調べていた人だっている。場合によっては戦士団に勧誘できないかとか、そういう動きをしていた一団もいたっぽい」

「……評価してくれるのはありがたいけど」

「ま、ディアスの能力は味方の底上げ……つまり、いるだけで戦士団そのものが強くなる。場合によっては戦士団の勢力図を塗り替えるかもしれないくらいには……だからこそ、注目の的になっていたりする」


 ……まあ、俺の支援能力は簡易的なものであれば効果範囲は大きいからな。


「ただ、悠々自適に旅をしているみたいな噂が立った結果、戦士を引退したのかなと思ってディアスに対する動きはなくなったんだけど」

「……だけど?」

「アルザとか仲間に入れて魔族と戦っているから、何をする気だとまたも注目の的になっている」

「……そうか」


 今後ヘレンと仕事をすることにはなるし、色々ありそうな気配だな。


「ま、基本的にはディアスのことを観察する程度だろうし、旅に影響はないよ。ただ、実は色んな場所に影響を与えていて、行動次第では騒動になるかもしれない、ということは理解しておいた方がいいよ」

「アドバイスありがとう……まあだからといって行動方針は変わらないけど……と、そうだ。ヘレン、俺達は旅を続けるけど、率先して魔族を追うべきなのか?」

「そこは自分探しの旅を優先してもらって構わないよ。率先して関わるのは私がやる。力が必要になったら連絡する。ま、ディアスは放っておいても関わりそうな気配だけど」

「……さすがに、これ以上はないと思いたいけどな」


 俺は肩をすくめる。


「ここまで関わるというのはなんだか呪われているようにも思えるけどな……」

「でも気になるのは事実でしょ?」

「それは確かにそうだけど……」


 親友であった魔族と関連のある存在まで出てきてしまったのだ。この騒動の結末を確かめたいという願望はある。

 それに、だ。様々な事情が絡んでいるように思える今回の騒動について……これに関わり続ければ、魔王そのものについてだって、何か知ることができるかもしれない。


「……ヘレン」

「何?」

「ヘレンは、魔王のことについて……隠されている何かがあるとしたら、知りたいと思うか?」

「うーん……それが害にならないのであれ放置でも構わないけど」

「そうか……」

「ディアスは知りたいと思うの?」

「それが友人に関わることであるなら、な……ただ、相手が相手だ。こっちも慎重に動きたいし、優先すべきは大臣の方だな」


 俺のコメントに対し、ヘレンは「ありがとう」と礼を述べたのだった。


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