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捕まえるために

 俺は騎士団を呼ぶとかの作業はできないので、町長に関する証拠集めに動くことに……監視しているだけでそんなものが見つかるわけじゃないので、敵に見咎められないよう色々と動き回る。


「ふむ……」


 俺はいくらか使い魔で探りを入れつつ……なおかつアルザと協力して調査した結果、町長が住む屋敷などは特定し、なおかつそこに多少なりとも魔力的な気配があるのを悟る。そこからさらにじっくり調べ……といっても精々三日ほどなのだが、怪しい人物が所持する道具と類似する魔力を放った物が屋敷にあることはわかった。


「役所関連の施設内にいる人間が持つ道具が思考誘導魔法のための物であったら、町長の仕業なのはほぼ確実だな」


 そんな呟きを発したのだが……調査中に相手は一度だけ魔法を発動させた。それは極めて薄い魔力を放出するものであり、また同時に俺達がマークした人物が持つ物……そこから放出されたことを確認。

 なおかつそれはヘレンも理解し、彼女が証言者となって動く形に……その間に俺は町長から潜伏できそうな廃屋や空き家などを教えてもらった。その中にはアルザが最初に見つけた家も含まれており、やはり奇妙な沈黙は誤魔化すためだったのだと確信できた。


 現時点でまだ町長が魔物を使役して襲った張本人かどうかはわからないが、町に魔法によって干渉していることは間違いない。よって騎士の応援を呼んで相手が証拠隠滅などをする前に決着を付けるということとなった。


「ま、捕り物などをする必要はないね」


 そうヘレンは俺へと語る……おおよそ行動計画も固まり、俺達は宿屋の一室で確認のために話し合いを行う。


「騎士の手配はなったよ。私が証人であることから、問題なく動く」

「それは良かった……俺達は動かない方がいいか?」

「そうだね。これまで通り進捗報告などをして油断させつつ、屋敷前で捕まえる」

「……残る可能性はその場で抵抗されて逃げられることか」


 とはいえ、町長自身に戦闘能力はないだろうし、装備が整った騎士の前には無力か。


「後詰めに控えておくのもありだけど」

「大丈夫大丈夫。それよりディアス達は町長を捕まえる間も調査を続行して」

「魔族がいる可能性……もし町中にいたら、町長を助けるために動くかもしれないと」

「そういうこと。魔族が来てもいいように騎士の装備は万全にするけど、念のため」

「わかった。なら、ヘレンに任せよう。それで、捕まえるのはいつだ?」

「明後日」

「予想以上に早いな」

「モタモタしていると町長が動いてしまうだろうから。それに、再度思考誘導の魔法を実行した以上、何か思惑があるかもしれない」


 なるほどな……魔法を使われた後、軽く聞き込みをしてみたけど、さらに騎士に対する心象が悪くなっていた。さすがにそれで騎士団を追い出すということはしないと思うが、着々と町長が動いているのはわかった。


「町の騎士団の方は問題ないか?」


 確認の問い掛けにヘレンは小さく頷いた。


「うん、問題ないよ。町長が敵だとヴァナに教えたら、憤慨していたよ」

「……騎士団のトップだから、話す機会も多かったのかな?」

「そうだね。少なくとも騎士ヴァナにとっては良い町長だったみたい」


 それが一転、騎士団をどうにかしようとしているのだから怒るのも無理はないか。


「念のため内通者が絶対にないような人選をした。そこは私も確認しているから間違いない」

「わかった……なら後は作戦を遂行するだけだな」


 町長を仮に捕まえたとして、町の攻撃と無関係であるならさらなる脅威が現れるかもしれない。まあ俺とアルザ、そしてヘレンという英傑クラスの人員もいる。多少の脅威でならはね除けることはできるだろう。


「ヘレン、明後日までは自由行動ということでいいか?」

「そうね……ただ、アルザは調査を続けるでしょう?」

「俺の方も使い魔を用いて調査はするよ。だから実質、町長を捕まえるまでは仕事だな」


 そこで俺は小さく息を吐く。


「町長を捕まえるまであと一手……だけど、まだ詰んでいるわけじゃないからな」

「わかってる。私の指示で来る騎士達は真面目だし仕事に手は抜かないから」

「……王族直属の騎士団とか呼んだんじゃないよな?」


 俺の問い掛けに対しヘレンは小さく肩をすくめる……って、もしかして俺の質問通りなのか?


「ずいぶんと無茶をするなあ」

「この周辺まで来ていた騎士団に声を掛けただけよ」

「町の周辺に……それは王都襲撃とかがあって防備を固めるために?」

「そうだね。加えて町の状況などを検分する意味合いもある。ツーランドの場合は……思考誘導の魔法に気付かなかったら、魔物による攻撃以外は比較的安定している、といった感じか?」

「そうね」


 ヘレンは返事をした後、俺と視線を重ね、


「あとは証拠がどっさり出てくることを祈っておいて」

「ああ、わかった」






 ――そして数日後、ヘレンは宿を出る。その日は帰ってくることがないまま……俺は使い魔を飛ばし、町長の屋敷周辺の観察を始めた。


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