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町の調査

 やがてヘレンがお茶とお菓子を買ってきて、彼女を交えポーションの改良を行う……結果として、思ったよりも早く成果が出て、香りを足すことで苦みはあるけどだいぶマシなポーションが完成した。

 アルザの作業そのものは、一時間ほどで休憩となった。ポーションと強化魔法の効果は長くて二、三時間程度……彼女は「なんだか変な気分」と言いながらお茶をすする。


「アルザ、気配についてはどうだ?」

「人が多いから、一個一個の気配を切り分けるのが大変だね。でもまあ、少しずつ慣れてきた。この調子だったらそんなに時間を掛けずとも町全体の気配を探れるんじゃないかな」

「……索敵範囲、町全体なのか?」

「町の外からやってくる商人らしき気配とかつかめたし、たぶんそう」

「マジか……状況によって場所を変えようか提案しようか考えていたんだが」

「その必要はなさそう」


 それならそれで楽だからいいけど……少し休憩した後、アルザは作業を再開。その間、俺達はポーションの改良は終了したので別の話を行う。


「ヘレン、戦闘になった場合の立ち回りを決めよう」

「お、いいね。どうする?」

「アルザ、ヘレンと前衛で俺が後衛……問題はミリアだな」

「圧倒的に強い二人が前にいるからね」


 ミリアは考え込む。戦いになった場合、どうすべきか――


「そうね……なら、私は後衛に回ろうかしら」

「魔法で援護をするってことだな」

「ええ。とはいえ私の技量でどこまでやれるのかわからないけれど」

「確認だけどミリア、魔法というのは主に攻撃魔法だよな?」

「そうね」


 そこから俺は彼女が扱える魔法について尋ねる……魔族、ということで人間の魔法にはないタイプのものもあり――


「それなら、魔族の特性を活かしてもよさそうだな」

「特性?」

「相手にもよるけど、例えば魔族と結託している人間が相手だったとしよう。その場合、仮想の敵というのは基本騎士とか、あるいは冒険者……英傑……まあその辺りだ。つまり人間相手に戦うことを想定しているはず」

「そうか、魔族の力を利用している以上、魔族の魔法というのは意表を突くことができるというわけね」

「今回の敵がどうかはわからないけど……ただ魔族相手だからといって、通用しないわけじゃないだろ?」

「そうね。とはいえ手の内がバレている可能性はあるけれど」

「人間が扱うような魔法も使えるみたいだし、相手と状況に合わせて使う魔法を選んでいけばいいさ。戦闘中に助言はできないから、ミリアの判断で魔法を選択してもらう必要があるけど」

「そこが難しいわね……魔法をどう運用するか、という点については学ぶべきかしら」

「そうだが、すぐにというのは望めないから今は手持ちの能力でなんとかするしかないな」


 剣の指南を行ったように、魔法の指導者も紹介した方がいいだろうか……とはいえ彼女の求める技術を教えることができる人員というのは、そう簡単に見つかるのかわからないな。


「ま、その辺りはなんとでもなるよ」


 と、ここでヘレンが楽観的に告げた。


「ミリアさん、私やアルザについてはよっぽどのことがない限り大丈夫だし、遠慮無く魔法を撃ってもらって構わないよ」

「そう……?」


 疑わしげに返すミリアに対しヘレンは笑う。


「戦闘中、魔力の流れは常に把握しているし……私達を巻き込むような魔法でなければ平気平気」

「……ある程度、戦いの型を作ってどういう魔法で攻撃するか決めておくか? その方がミリアも安心だろ」


 気楽な提案をするヘレンに対し、俺がそう提言するとミリアは小さく頷いた。


「個人的にはその方がやりやすいわね」

「わかった。ならその方式でいこう。もちろん、例外の状況に陥る可能性もあるからそこは現場判断で動くしかないけど」

「ミリアさんは結構真面目な性格みたいね」


 ヘレンの論評。俺は彼女に「そうだな」と同意しつつ、


「というわけで、メモにでも戦術を書き出してまとめてみようか……アルザ、そっちは何か意見はあるのか?」

「特にないよ」


 相変わらず宙に視線を投げながらアルザは応じる。


「わかった。なら俺達で決めさせてもらう……ヘレンとは正式に仲間になったわけではないから今回限りの戦術になると思うが……ま、応用の利くやり方だし、良い練習になるかもな」

「頑張るわ」


 やる気を見せるミリア。そこで俺は紙を取りだして色々と書き込んでいく。


「ヘレンの方は意見を出してくれよ。アルザの動きとかは一緒に旅をして戦った経験があるからわかるけど、そっちのことはわからないことも多いからな」


 俺の言葉にヘレンは頷き、色々と説明を加える……そうやって戦い方の相談をしている間に時間は経過していき、時間はやがて昼前を迎える。

 アルザは作業を開始してから一度ポーションを飲み直して作業をなおも続けている……よくここまで集中が続くなと驚嘆しているところに、彼女はとうとう発言した。


「ディアス」

「何か見つかったか?」

「うん……明らかに怪しい場所が。ただこれが魔族なのかはわからない」

「わかった。なら検討を始めようか――」


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