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才能

 俺は改めて仲間達と相談し、今後の動き方を決定……その日のうちにポーションを作成して、翌朝を迎えた。


「というわけで、早速始めるか」


 宿屋の一室、全員個室で泊まっているのだが、その中で俺の部屋に集まって行動を開始する。

 その目的は、町中にいるかもしれない敵の捜索だ。


「というわけで、アルザ」


 俺は昨日作成したポーションを渡す。小さな瓶に入っているのだが、


「一気にいってくれ」

「……大丈夫? 飲んだら倒れたりしない?」

「大丈夫大丈夫。昨日俺も試しに飲んでみたし」


 狙い通り感覚が鋭敏となり、強化魔法と合わせて気配探知能力はかなり向上した。もっとも索敵魔法と霊脈を利用する魔法と比べれば差は歴然としているけど。


「ポーションを飲んだ後、強化魔法を使う……その状態で気配探知を行ってくれ。ただし、あくまで町中に存在する魔力を探るだけだ。こちらから索敵をやった場合、町中に敵がいるなら悟られて逃げられてしまうからな」

「わかった」


 アルザは少し躊躇いつつもポーションを飲む。


「……苦い」

「悪いな、味まではさすがに調整する余裕がなかったんだ」

「今後、ポーションを作るなら美味しさも重要になってくると思うよ」

「……善処する」


 そんなやりとりに対しミリアやヘレンは笑う。俺は小さく肩をすくめつつ、


「で、どんな感じだ?」

「飲んでからすぐに効果が発揮されるみたいだね……確かに、すごく研ぎ澄まされた感じがある」


 アルザは部屋の中を見回す。視線を通して何かを感じ取っているのか。

 それに加え、俺は彼女に強化魔法を付与。結果、


「おお、建造物に存在する魔力まで感じられる」

「……ポーションと強化魔法だけでそこまで感じられるのなら、アルザにはそういう才能があるのは間違いなさそうだな」

「構造物……?」


 疑問を呈したのはヘレン。それに対し俺は答える。


「無機物だろうが生物だろうが、魔力というのは必ず存在している。生物であれば魔力は血流などと一緒に動いているし意識すれば魔力を放出することもできるから感じるのはそれほど難しくない。でも、家屋の材料だったり家具の素材だったり……そういう物から魔力を感じ取るというのは至難だ」

「でもアルザはそれができる」

「ポーションと強化魔法によって……だな。とはいえ能力を増幅させただけだから、アルザは気配探知とかに才能があるってことなんだろう」


 ダンジョン攻略もそうだし、王都襲撃についても……さらに言えば犯罪組織の調査についても、彼女の能力が遺憾なく発揮された。退魔の能力……際だったその能力によって英傑入りするだけの力を得たわけだが、もしかするとそれに付随する能力なのかもしれない。


「さて、アルザ……町中で人がひしめいているわけだし、怪しい気配なんてものが見つかるかはわからないけど……気になることがあれば言ってくれ」

「わかった」


 というわけで作業を始めるアルザ。ここからは彼女の能力だけが頼りであり、俺を含め他の仲間達は出番なしだ。


「ディアス、私は何かやった方がいい?」


 という問い掛けをヘレンがしてくるのだが、


「あー、そうだな……アルザが小休止する際のお菓子でも買ってきてくれ」

「長期戦になるってこと?」

「そうだな。どこにいるのかもわからない敵を探すんだ……そもそも、いるのかどうかも不明であるし、時間は掛かる」

「わかった。ならお茶とお菓子を買ってくる」


 そう言ってヘレンは部屋を飛び出す。


「私はどうしようかしら?」


 続いてミリアが尋ねてくるのだが、


「そうだな……アルザ、俺達は話していて問題ないか?」

「うん、平気」


 視線を宙に漂わせながらアルザは応じる。


「わかった……それじゃあミリア、俺と一つ相談を。まあヘレンが戻ってきてからでもいいけど」

「何かしら?」

「長期戦ということで、当然ながらポーションの効果も切れてしまう。だから数は作ったんだが……味のことについては考慮に入れてなかったからな。アルザのモチベーションを上げるためにも、ここから少し改良して味を良くしようかと」

「……できるの?」

「成分は変えられないけど、魔力で風味付けとかできるしやりようはあるかなと。ただ正直、俺の方は大した知識が無いんだよな」

「私だってないけれど……」

「一人で悩むより多人数でやった方がよさそうだろ? 今後もポーションを作成する機会はありそうだし、今のうちにその辺りも試しておきたいと思って」

「わかった。なら相談を引き受けましょう……良いアドバイスができるかはわからないけどね」

「ありがとう……ちなみにアルザ、あと二回くらいはまずいのを我慢してくれよ」

「ぐへー」


 変な声を上げながらもアルザは作業を進める……集中力がどれほど続くのかわからないし、この作業そのものについてもやり方を色々検討する必要がありそうだ。

 というわけで、俺はミリアと相談しつつポーションの改良作業に入る。思考誘導の魔法はあるにしろ、急展開という事態に陥る可能性は低い。まあ、ゆっくりやるとしよう――


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