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情報収集

 昼食後から、俺達はそれぞれ分かれて聞き込みを開始した。騎士団や町長側について……それ以外にも改めて町の状況について情報を集めることに。

 その行動そのものを怪しまれると面倒だが……誰かが俺達を監視している様子はない。英傑クラスの面々であることから下手に干渉すると怪しまれる、と考えたのかもしれない。


 俺達としては好きに動けるので良いけど……で、聞き込みの結果だが、


「町の人間と騎士団……これだけ規模が大きいと大変だというのがわかるな」

「そうだね」


 夕刻、酒場に集合して俺が告げた嘆息混じりの言葉に対し、ヘレンは淡泊な返答で応じた。王族であり為政者がどういう存在なのか理解する彼女にとっては、驚くような情報ではないようだ。


 ――ツーランドという町の自治は、町長が語っていたように役場と騎士団の双方が担っていた。町は合議制であり基本的には役場の方針が概ね反映されるらしいのだが、自治において重要な治安維持を騎士団が担っているため、騎士団側に結構影響が大きいらしい。

 少し聞き込みをすると、その辺りの話が結構出た……基本、町の人間の多くは町長を支持しており、現在の町長は真面目に仕事をする実直な人間というイメージらしい。


 とはいえ騎士団が怠慢だったかと言うとそういうわけでもないが……聖王国東部はそもそも魔物などの攻撃が少なかったこともあり、騎士団として活躍の場があまりなかった。そのため時折「騎士団の人数を減らす」という議論が出ては騎士団の猛烈な反対があって立ち消える、ということを繰り返していたらしい。


 まあこればっかりは仕方がない……そもそもツーランド周辺にはダンジョンもない状況だったからな。目先に脅威が無ければ町の人間からは騎士団の影響力が強いのは何故だ、と疑問を抱く人間が現れてもおかしくない。


 そして、今回の魔物の攻撃……結果として冒険者の援護――さらに言えばヘレンの加勢が――によってどうにか対処はできたが、これで騎士団は何をやっているのだと批判の対象になっているわけだ。

 騎士団の人数を減らすなんてことを議題に挙げておきながら批判というのは矛盾しているのだが、人はネガティブな事件があれば誰かのせいにしたいものだ。今回はその対象が騎士団ということなのだろう。


 ただ、そうした聞き込みの中で俺は一つ引っ掛かったことがあった。それは――


「全員、聞き込みの結果を報告してもらっていいか?」


 こちらの問い掛けに対し、三人は一様に頷き……最初に口を開いたのは、ミリア。


「私は主に町の状況について聞いてみたけれど、やっぱり誰もが不安に感じている……近隣の騎士団から応援を呼ぶべきだと主張する人もいた」

「町の規模と比べ騎士団の人数は多くないからな……城壁に囲まれていたこともあって、守るだけなら少なくても応戦できたと考えていたのかもしれないけど……」

「正直、練度はそんなに高くなかったかなあ」


 続いて感想を述べたのは、アルザだ。


「騎士団の訓練風景とか見たけど、連携についてもあんまりだったし……」

「元々魔物の攻撃なんてものがなかった町だ。練度そのものは高くないのは仕方がないし、他から応援を呼ぶという意見が出るのも頷ける」


 俺はアルザに返答した後、ヘレンへ首を向けた。


「応援が来るという可能性はどうなんだろうな?」

「王都側の動きからしたら望みは薄いよ。一応、ツーランド周辺は警戒レベルは上がってるけど」

「ツーランドには来ないのか?」

「今回の襲撃規模については、国の上層部には伝わってるよ。その結果、冒険者や私の協力があったけれど撃退できた。その事実から、次があっても踏みとどまれるだろうと認識しているみたい」

「ヘレンは残っているし、俺もいるから……ってことか?」

「ディアス達が滞在していることについて情報が回っているかは不明。エーナには伝えたけど」

「そうか……まあともかく援軍はなしと」

「むしろ周囲の町を警戒している」

「ツーランドは防衛できた。魔族がまだ攻撃のチャンスを窺っているのなら、別の場所を狙うかも……ということか」


 一応、駐屯地はあるけどツーランド周辺を広域にカバーしなければならないだろうし、この町へ赴いて常駐するとは考えにくいな。


「今以上の戦力はないと考えていいわけだな……他に何か気になったことはあるか?」

「なら私から一つ」


 小さく手を上げながらヘレンが言う。


「町の人は基本的に町長側の人間が多かった」

「ああ、それは俺も感じたよ」

「仕事はきちんとするし、支持者も多い……ディアスへ魔族討伐の依頼を行ったのも、騎士団が頼りないとして行動に移した結果だ、と考えることもできる」


 そこまで言うとヘレンは口元に手を当てた。


「評判は良いし、町長側は別に魔族と手を組む理由はないかなって思ったけど」

「そうだな、俺もそこには同意する……が」


 と、俺は仲間達へ告げる。


「少しばかり腑に落ちない点がある――」


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