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講義終了の後

 その日は丸一日講義を聞いて、昼休みを入れつつ夕刻近くまで続いた……さすがに昼からは実技指導なんかも入り、結構濃密な体験ができたと思う


「――お二方にとって、私の知識がどこまで役立つかわかりませんが」


 締めの段階となって、店主トールは俺達へ述べた。


「きっと、英傑という称号を持つあなた方は、私には見えない何かが見えるかもしれません……どういう形であれ、今回の話によって旅が良いものと変わるのならこれに勝る喜びはありません。ご活躍、期待しています」


 ――そうして俺達は店を出た。ちなみについでにいくつかポーションも購入。ヘレンが通っていた店だし、信頼できると判断してのことだ。


「……ポーション作りについてだけど」


 ふいに、ヘレンが俺へ向け言及する。


「わざわざ自作しようなんて考えるのは、一緒に旅をしている魔族さんのためかな?」


 その問い掛けに俺は一時沈黙する。


「戦歴が長いディアスであっても、さすがに魔族と組んだことなんてなかっただろうし、色々と考えることも増えた。特に、強化魔法の改良と消耗品に関しての扱いとか」

「強化魔法についてはおおよそ終わったよ」

「なら次は、ポーションなんかの改良ってことか」


 ……今後のこともあって必要だろうと俺は考えたが、その理由にはミリアのことが含まれているのは事実だった。現時点で彼女にポーションなどを使用する事態にはなっていない。けれど、今後旅を続けていたらそういう事例が生まれる可能性は否定できない。


 もっとも、魔族との騒動に関わらなければいいのだが――


「さて、明日からはどうしようかなー」


 と、ヘレンは赤くなろうとしている空を見上げながら言及した。


「ディアス達は何か考えてる?」

「いや、何も……この町の騒動に関わる形になるけど、騎士達の調査を待った方がいいんだろ? なら、その間は町を見て回るくらいかな……ただ」


 俺は周囲に目を向ける。人通りは多いが、人々の表情は明るいと断定できるものではない。


「町そのものを堪能するには、事件を解決しないといけないだろうな」

「確かにそうだね」

「そういうヘレンはどうするんだ?」

「私? 念のため戦いに備えて買い出しとかして……かな? それも一日あれば足りると思うけど」

「騎士の調査はどのくらい掛かるんだろうな?」

「数日で終わればいい方かも」


 ……ふむ、なら。


「当面この町にいるのなら、冒険者ギルドで仕事でも探すかな」

「お金は切迫してる?」

「余裕はあるけど、騎士の調査がいつ終わるかわからないんだから、長期戦も視野に入れないといけないな……それと」


 俺は頭をかきつつ、


「この町に滞在している間に、他の場所で騒動が巻き起こる可能性も否定できない……情報集めくらいはやっとかないと」

「うんうん、そうだね。私も買い出しが終わり次第行動しようかな」


 ここでヘレンは俺に首を向けてきた。


「ところで、いつディアスの仲間と顔を合わせよう?」

「……顔を合わせるのは確定か?」

「共闘とは言うけど、別々に行動するのはあり……だけど、ここは一緒に戦った方がよくない?」


 正直、アルザとヘレンで戦力的には過剰な気もするけど。むしろ一緒に仕事をするとなったらなんか逆に騒動が起きそうな気配もある。


「む、何かやらかさないかと思ってる?」

「ああ」

「即答……そんな疑われるようなこと、したっけ?」

「とりあえず、実力を試すとか言って喧嘩をふっかけるところとかな」


 ――魔王との戦い前、幾度か顔を合わせた際に戦士に決闘を申し込んでいる姿を目にしたことがある。ちなみに彼女は同じ英傑であるニックやエーナにも声を掛けて実際に戦っている。その際にすったもんだあったみたいだけど……あとクラウスの場合はさすがに王族で拒否できなかったか、あっさり承諾して戦っている。


「ヘレン、英傑で戦っていたけど勝敗はどんな感じだっけ?」

「ニックには勝った。他の二人には負けた」

「……エーナに対しては槍だから近寄れなかったとかそういう感じか?」

「武器の相性とかもあるけど、やっぱりエーナほどの技術があると近寄るのも大変だった」


 いかに彼女と言えど、エーナには対抗できなかったらしい。


「それとクラウスは攻撃当てられなかったし……」

「クラウスの持ち味は鉄壁と称される守護だからな……装備の要因もあるだろうけど、今のアイツに攻撃を当てられる人間は英傑と言えどセリーナくらいじゃないか?」

「七人目の英傑と言われているディアスも無理?」

「俺の強化魔法でもあの防御を突破するのは厳しいかな」


 魔王にも使用した決戦強化魔法を使えば話は違うかもしれないけど……。


「あ、そうだ」


 そこでヘレンは思い出したかのように、


「私、状況を定期的に報告しているけど、ディアスのことも話していい?」

「……正直、また騒動に首を突っ込んでいるのかと呆れられてしまいそうだけど……まあ、いいよ。ちなみに誰に?」

「エーナ。冒険者ギルドを介した方が安全かなと思って」

「……エーナにヘレンの所在を聞いていればすんなり会えたのか?」

「私が一方的に情報送っているだけだから無理だよ」


 とことん居所を悟られないようにしている……か。本当、自由気ままにしているなと感じた。


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