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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第一章

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生き方

「セリーナが副団長である限り、ディアスが出しゃばっても余計話がこじれるだけだろうな」


 と、ノクアはずいぶんとさっぱりした口調で語る……そうかもしれないけど、


「今頃ロイド達は大変だろうな……」

「ま、さすがに古参をないがしろにした代償は重いってわけだ」

「……ノクアさん、なんとかフォローを入れることはできないか?」

「ずいぶんと気にするんだな」

「そりゃあ、まあ。戦士団を去った身ではあるけど、俺のせいで団そのものが無茶苦茶になったなんて、寝覚めが悪いし」


 ノクアは俺の言葉に少し考え込んだ様子を見せ、


「ふむ、そういう解釈もあるか」

「経緯はどうあれ、俺は本当に気にしていないから」

「わかった、そういうことならミルドとかにも話をしてみるさ」

「どうも……しかし、思った以上に元団員が絡んでいるな」

「魔王との戦いのせいだな」

「魔王の?」

「侵攻してくるかもしれない、という可能性を危惧して国側が色々と手を打った。俺達元戦士団がコネを使って色々動いていたのも、そのためだ。もちろんロイドなんかが話を通してきたというのもあるが」

「魔王との戦いは人類にとって文字通りの総力戦……だからこそ、ありとあらゆるリソースを使う必要があったと」

「そういうことだ。ほら、ちょっと前に北の方で魔族討伐があっただろ?」


 俺達が参加した戦いかな。


「あれも、討伐隊が短期間で編成できたのは、魔王との戦いに備えて色々とやっていたためでもある」

「なるほど、ああいった潜伏している魔族の可能性を考慮して、準備はしていたのか」


 魔族が現れたことで魔王の策略を推測した俺とミリアだが、そのくらいのことは国側も認識して警戒を強めていたわけだ。


「その辺りの事情はよく知らなかったんだよな……」

「もしかするとロイド達が意図的に教えていなかった可能性もあるな」


 そうノクアは指摘する……さすがにそれはと考えたが、


「セリーナならやりそうだな……」

「だろ? 英傑として幅きかせていたからな……」


 ――戦士団を抜け、外に出てわかるセリーナの所業。だからといって彼女を責める気もない。


「セリーナは自分の目的を最優先としていたからなあ」

「家の再興を最優先……別に、俺もミルドも戦士団を踏み台にすることは否定していないさ」


 と、ノクアは肩をすくめながら答える。


「むしろ俺だって戦士団に所属していた時のコネとか利用しているからな。大きく国との関わりがある戦士団だから入った、なんて公言するヤツもいたくらいだし」

「ああ、確かに」


 俺は頷く。二十年所属していたら、色んな人が入ってくる。中にはセリーナ以上に面倒な団員もいたし、金が全てだとか欲望に忠実な団員も結構いた。


「だから、戦士団に対する想いとかはどうだっていい……むしろ戦士団に全てを捧げるなんて公言するヤツの方がどうなんだろうと思うくらいだ」

「そこまで言うか……」

「俺はディアスがそういう人間なんじゃないかと思っていたが」


 予想外の言葉に俺は目を丸くする。


「俺が?」

「必死に強くなろうとして鍛錬を欠かさず、なおかつ団員を補助する役を買って出ていた。そこから考えると、戦士団を守ろうとしていたんじゃないかと」

「俺は……ただ、恐ろしい速度で強くなっていく仲間に追いつくために必死に食らいついていただけだよ」


 そう――仲間を追随するために、全てを捧げた。命を賭すことだってあった。今振り返ればどうしてそこまでと考えてしまうことだ。むしろよくそんな風に生きてきた死ななかったものだと思うし、なぜ諦めなかったのかと疑問を感じるだろう。

 でも、その時の俺は、そうやって生きることが正しいと思っていたのだ。


「……なんというか、戦士団の中でディアスが一番苦労していたのかもしれんな」


 ノクアはそんな風に言うと、俺の肩に手をポンと置いた。


「今のディアスは楽しそうに見えるし、戦士団を離れた選択が良かったのだと俺は断言できる」

「どうも」

「ただ、やっぱり終わり方はちゃんとして欲しかったなという思いもある。人生を費やして戦士団に貢献してきたわけだからな」


 ……彼の言いたいことはわかる。俺自身は納得しているし、ロイドやセリーナを見て他に方法がなかったんだろうと理解はできるが、二十年所属していた人間にこれでは、さすがに……と反発してしまうのもわかる。


 ただ、


「……だとしても、フォローはして欲しい」

「ん、了解。ディアスの意見を尊重しよう」


 笑いながら話すノクア。ただ最後に俺は一つ、


「俺が横やりを入れたことは話さないでくれよ?」

「わかってるさ。そんなことしたら余計話がこじれるからな……まったく、魔王を倒し平和になったかもしれないのに、こんな騒動で気を揉むことになるとは」


 苦笑するノクア。ただその目は、旅をしている俺を見てどこか嬉しそうにも見えたのだった。


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