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騎士団の物資

 俺が店に近づいた時、冒険者は憤慨した顔つきで店先から立ち去っていった……残されたのは申し訳なさそうな顔をした店員の男性――と思ったのだが、近くで見ると童顔っぽい感じではあるが所作なんかが大人びており、店員というよりは店主かもしれないと思った。

 店を見る。そこはどうやら魔法道具を取り扱っているらしい。俺はそちらへ目を向けながら男性へ話し掛ける。


「なんだか大変そうだな」

「……見ていらっしゃいましたか」


 苦笑する男性。物腰も柔らかく、相手に不快感を与えないようにしている。


「えっと、ご用ですか?」

「まあそんなところ。店に入っても?」

「はい、どうぞ」


 告げながら男性は俺を店内へと招いた。

 その中には様々な薬品の入った小瓶――ポーションの類いが並んでいた。ただ一口にポーションと言っても、色々な役割がある。


 例えば飲むことで体力を回復させる物……これは比較的ポピュラーで、多くの人間が所持している。体力だけではなくて傷を癒やす物もあるし、あるいは毒などを治療する物もある……もしくは、それらの効果全てを持たせるとか。ただこの場合は様々な種類のポーションを混ぜることになるので、値段が張る。


 薬草なんかは傷口に塗ることで癒やす……魔法なんかも同様だし、解毒魔法とかもある。けれど回復にはポーションが使われることが多い。魔法を使うにしてもどうしたって詠唱が必要だし、薬草なんかを使うには手間が掛かる。それに対しポーションは取りだして飲めば終わりということで、戦闘の際にも使用できると重宝されるわけだ。

 俺も実際に懐に魔力を回復させる非常用のポーションを仕込んでいる……で、この店はどうやら薬品関係を扱っている魔法店のようだ。色とりどりのポーションが目玉商品らしく、様々な物が並んでいる。


 棚をよく見ると、飲むだけではなく相手にぶつけるような系統のポーションもある……小瓶ごと投げつけると発火するとか、そういう物だ。俺は無詠唱魔法が使えるので必要とはしていないが、魔物相手に苦戦した時とか隙を作るために所持している戦士もいる。ただ、間違って飲まないようにしないといけないけど。うっかり口に入れたら大惨事である。


「ふむふむ……」


 で、俺は店内を見て回る。その様子を男性は眺めている……商品に目を向けながら俺は軽く彼と雑談をすることに。どうやら男性は店主らしい。


「騎士団が活発に動いているところを考えると、忙しいんじゃないか?」

「はい、そうですね。次の納品が差し迫っている状況で」


 と、ここで店主は申し訳なさそうに告げる。


「それでですね、飲むと傷を癒やしたり体力を回復させたりする経口系のポーションについては、店頭にある限りということでお願いします」


 ……なるほど、その言葉で俺は先ほど彼が頭を下げている理由を把握した。


「さっきの冒険者はポーションを買い求めに来たのに、騎士団に納品するとということで買えず怒っていたのか」

「はい、緊急事態故に騎士団が優先ということで……」


 まあそれはそうだ。もしかすると先ほどの戦士は騎士団を優先していることで戦士が下なのか、と不満だってあったかもしれない。


「作っても間に合わないのか?」


 俺の問い掛けに対し店主は苦笑する。


「はい、作った先から買われてしまうので」

「……魔物が出現したことで騎士団も準備に勤しんでいるというわけか」


 聖王国の東部は正直魔族の影響は少なかったし、この町に常駐する騎士団において戦闘経験のある人間はどのくらいいるのか……加え、備蓄している武器とかポーションとかの劣化更新だって必要だったはずだ。

 そもそも東部は元来魔物の出現数なんかも少ない。これは単純に魔界から物理的に離れているから……よって今回の騒動で戦闘を行った結果、消耗品とかが足らなくなったということなのだろう。


「ポーション以外にも武器とか、新しく作っている最中かもな」

「それは間違いないようです。鍛冶場が集中する地区では日夜問わず金槌の音が聞こえてきますので」


 ……騎士団が動いている点もそうだが、物資面でもかなり大変らしいな。


 もしかすると町にいる商人なんかは、ツーランドの要請を受けて武器なんかを売りに来た人間だっているかもしれない。たださすがにどれだけかき集めても次の戦いに備えられるのか。

 魔物との戦いに騎士団は勝利したが、冒険者の力を借りてなおかつ相当消耗した状態。それに加えて騎士達は魔族を探すために動いている……もし同程度の魔物が再び町を襲撃してきたら、どうなるのか――


「……ふむ」

「どうしましたか?」


 口元に手を当て考え込む俺に対し店主は疑問を寄せる。


「何か気になる物が?」

「……ああ、突然黙ってしまって申し訳ない」


 そう返すと俺は、一度店内を見回した。


「いくつか手に取って確認してみてもいいか?」

「はい、構いませんよ。ご用の際はお呼びください」


 にこやかに応じた店主は、店の片隅で何やら作業を始める。そうした光景を見つつ、俺は近くにあったポーションを手に取った。


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