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とある可能性

 翌日、俺はミリアやアルザとは別行動で再び冒険者ギルドを訪れた。

 そして仕事の状況を見る……なおかつ、過去の仕事の履歴についても。


「兆候とかは……なかったみたいだな」


 魔物の襲撃。それについて何かしら兆候とかはなかっただろうかと調べに来ていた。例えば魔物討伐の依頼が多くなっていたとか……けれど、仕事内容の履歴を調べても特に変わりはなかったようだ。


「魔王との戦い……その影響についてもあまりなかったみたいだな」


 むしろ、魔王との戦いを経て何かしら変化が生まれたと考えることもできる。もしかすると、魔王が滅んだことをきっかけにして……?


「だとすると反魔王同盟絡みである可能性が高そうだけど……まあ考察はこのあたりにしておくか」


 正直、情報がないので考察が的外れの可能性も高いし……俺は資料の閲覧を中断して冒険者ギルド内を歩く。町の規模が大きいためこのツーランドにあるギルドの建物も相応に大きく、冒険者がひっきりなしに出入りしている。

 俺のことを見ても声を掛ける人物はいないため、さすがに王都で活動していた俺を知った人物はいないようだ。ちなみに名乗るようなことはしない。名前を出して下手に刺激するのは混乱を招くかもしれないので。


 あえて自分の名を示し情報収集するのも一つの手ではあるのだが……というか騎士団に名乗り出ない限りは同業者から情報を得るしかないし。


「ただ、今騎士団の下を訪れたら、手を貸してくれって言われるよなあ」


 別にそれ自体はいいのだが……俺はツーランドへ入ってからとある可能性を考えるようになった。


 それは、俺が旅を始めて以降の活動について魔族側がどう思っているのか……自分探しという名目で旅を始めたわけだが、やっていることは魔物討伐であったり魔族討伐であったり……で、人間界で騒ぎを起こしている魔族は人間界の世情を把握できる手段を持っているのは間違いないだろう。


 であれば当然、俺の活動によって魔族が滅んでいることは知っているはずであり……さすがにこれ以上関わったら徹底的にマークされるのではないだろうか?


「相手からしたら渦中にわざわざ飛び込んでいるからな。場合によっては戦士団時代の情報網を駆使して魔族を倒して回っているとか思われても仕方がないよな」


 実際はただの偶然ではあるのだが……さすがに二度三度、ついでに四度目ともなったら、他者からすれば偶然などと片付けるわけにはいかないだろう。魔族側からしたら、俺達の存在を注視するはず。

 しかもパーティーのメンバーは俺に元英傑、加えて人間に友好的な魔族かつ、魔王候補であるミリア。正直、こんな面子で自分探しの気ままな旅、という方がおかしいと思われても仕方がない。


 だとすれば、これ以上率先して首を突っ込むのは……などと考えつつ俺は冒険者ギルドを出ようとするのだが、


「あ、そうだ」


 もう一つだけ確かめようと思い、俺は近くにいた冒険者に声を掛ける。


「悪魔が出現したらしいけど、それを倒したのは冒険者……ツーランドを拠点として活動する人物なのか?」


 これは単純に興味本位からのものだった。悪魔というのは魔族においても精鋭的な意味合いを持っている。そうした敵を単独で打倒できる冒険者というのは、決して多くはない。


 俺の問い掛けに対し話し掛けた冒険者――男性は、


「いや、この町の人間じゃなかったよ。流れの冒険者だ」

「流れの……そうした人が飛び込みで戦ったのか?」

「ああ、そうだ」

「その人物は今も町に?」

「そういえば見かけないなあ」


 いつのまにか現れ、いつのまにか姿を消している……みたいな感じらしい。俺はそのことについて引っかかりを覚えつつも男性に「ありがとう」と礼を述べて立ち去った。


 冒険者ギルドを出る。人通りは多く、忙しない人々の流れが大通りにはある。ただ、全体的に表情は曇っている。城壁が破壊されたという事実を目の当たりにして、不安を覚える人が多いようだ。

 騎士団及び町の人間はすぐにでもこの状況を是正したいと考えているだろう。だからこそ騎士団は躍起になって活動している。ただ、あまり無理をすると魔族に付け入る隙を与えることになってしまう。大丈夫なのか。


「……騎士団の情勢も確認した方がいいのかな」


 そう呟きつつ、俺はひとまず歩き出す。目的地は決めていない。とりあえず、町を見て回ることにしよう。

 大通りの人々に視線を移しつつ、俺はゆっくりと進んでいく。そういえばどこかでアルザは大食いチャレンジでもやっているのだろうか……などと考えていると、


「……ん?」


 俺はふと、町の一角に注目する。冒険者風の男性と、店員らしき人物が何やら話し合っている光景。ただ、店員がやたら申し訳なさそうに頭を下げているのを見て、何やら大変そうだと思った。

 俺はなんとなく、そちらへ足を向けた……二人に割って入るつもりはなかったのだが、少しだけ気になり歩み始めた。


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