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町の噂

 そうして俺達は東部最大の町、ツーランドを訪れた……のだが、なんというか話に聞いていた状況とは少し違っていた。


「……かなり大規模な戦闘があったみたいだな」


 そう俺が述べたのは、町を囲う城壁の一部分が崩れているのを目に留めたためだ。よっぽど厄介な魔物が出現したのか、それとも城壁を破壊するだけの質量が襲い掛かってきたのか。


 町へ入ろうとする商人や旅人は皆一度は壊れた城壁へ目を向けている。中にはその有様を見て不安な表情を浮かべる人物もいる。もしかすると、聖王国内に色々な騒動が起こっているのを知っていて、ここでもと考えているのかもしれない。


「とりあえず、情報は仕入れておこう」


 戦いにはせ参じるかはともかくとして、冒険者ギルドから仕事が入る可能性も否定はできない。よって、現状を把握しておくことは重要だ。

 というわけで俺は宿をとってから一人で冒険者ギルドを訪れた。ちなみにミリアとアルザは別行動。違う場所へ情報収集をすることになっており、酒場で落ち合うことになっている。


 受付の女性へ声を掛けて、ギルド証を提示してから状況を確認。すると、


「現在、複数の冒険者が騎士団と連携して対応にあたっています」

「今も動いているのか?」

「はい。魔物は撃退しましたが、魔族を打倒しなければ終わらないだろうと」

「……魔族がいるのかどうかは不明なんだよな?」

「そうですね。しかし、大量の魔物は脇目も振らずこの町へ突撃するような状況でしたので、さすがに群れが独断で行動し……というのは考えにくいかと」


 なるほど、この町を狙っていたのであれば、誰かが命令を与えていたという説明が一番納得する。


 で、問題はこれ以上の情報が一切ないことである。そもそも魔物の襲撃は十日ほど前に行われたもので、現在は他に魔物がいないか索敵を行い、安全を確かめた上で商業活動などを再開しているらしい。

 つまり、騒動は現在進行形……敵を見つけ出す、という方法であれば俺やアルザの力があれば……と思うところだが、いきなり出しゃばって話をするというのもどうだろうな。


「知り合いがいれば話を通しやすいけど……」


 王都周辺ならば話は違ったかもしれないが、ここは俺自身ほとんど足を踏み入れたことのないような場所。知り合いがそんな簡単にいるとは考えにくいのだが――


「それに、俺達が索敵するにしても準備は必要だからな」


 霊脈を見つけなければならないけど、それをするのも一苦労だし、現実的ではなさそうだ。

 例えば騎士団から声を掛けてくれれば話は別だけど……ま、彼らが調査することで進展するかもしれないし、今考えても仕方がないか。


 俺は一通り冒険者ギルドを見て回った後、外へ出た。時刻は昼過ぎであり、ミリア達と合流するために酒場へ向かう。

 到着すると二人は既に待っており、席について簡潔に冒険者ギルドで得た情報を伝える。


 すると、最初に反応したのはミリア。


「私の方でも似たような情報……だけど、色んな場所でとある噂が出ているわ」

「噂?」

「これは魔王を滅ぼされた魔族による復讐だって」


 ……それならわざわざ東部の町へ狙いを定めるとは思えないんだが。


「私は正直、この可能性は低いと思うけど……」

「俺達からすれば反魔王同盟……その勢力による攻撃じゃないかと考えるところだな」

「ええ。たださすがに一般の人々に話をするわけにもいかないし、現在は噂が一人歩きをして人々の間に不安があるみたい」

「ある意味、魔族がつけ込みやすい状況ではあるな」


 俺の言及にミリア達は押し黙る。


「ただなあ……反魔王同盟の仕業にしても、肝心の目的とか狙いがまったくわからないんだよな」

「そうね。ここまでの事件だって、結局何一つ情報はないし」

「魔界側が何かをしようとしている……というのは間違いないと思う。ただ、それが魔族全体の方針なのか、それとも反魔王同盟という何かしらの組織……そこに所属している魔族の仕業なのか」


 ここで俺は腕を組む。


「ただ、確実に言えることが一つ。王都襲撃はダンジョンから魔物が大量に現れた。冒険者ギルド本部への攻撃も、地底に拠点が存在していた。そして組織撲滅……これについては反魔王同盟絡みなのか断定できているわけじゃないが、もしそうなら人間に技術提供までしている。相当準備が必要だし、遠大な計画もいる」

「加えて、資金もね」


 ミリアが口添え。俺はそれに深々と頷いた。


「そうだな……つまり、かなりのリソースを注ぎ込む必要がある……そこまでして人間界に干渉する理由は何なのか不明ではあるけど、敵が作戦を遂行し、それが成功した場合は聖王国がピンチ、とかいう可能性も否定できない」

「国としては騒動が大きくなる前に潰したいところよね」

「ああ、違いない……この町の騎士団はそうした国側からの指示を受けているのかはわからないが、町の情勢を見て早く解決したいと焦っているのかもしれない。それが悪い方向に転がらなければいいんだけどな――」


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