魔物殲滅
アルザが交戦を開始すると同時、俺は雷撃を用いて魔物を一体消し飛ばした。それと共に魔物達は吠え始め、突撃を開始する。
騎士や魔術師が応じる中、アルザは最初に激突した魔物を瞬殺すると、周囲にいた魔物もまとめて撃滅した。その間にも魔物は生成される……のだが、俺の魔法が撃ち抜いてその数を減らす。
一度に生み出せる魔物の数には限界がある様子……つまり、そのペースを上回るだけの速度で魔物を倒せば数は増えない。無茶苦茶な手法ではあるのだが、ごく短時間……ミリアが魔族へ挑み掛かる時間程度ならばいけると俺は踏んだ。とはいえ、
「あんまり無詠唱の魔法は得意じゃないんだが……」
一度や二度くらいなら問題ないけど、連射するとなると俺はセリーナやシュウラほど上手くはない……けど、必要であるならやるしかない。
そもそも二人のように無詠唱魔法で威力が出せるわけでもないし……そう思いつつも俺は雷撃を放ち続ける。大気を切り裂く閃光は魔物に直撃するとその全てが決定打となって魔物は滅び去る。今回の相手には十分な威力みたいだが……魔族が魔物を強化して生み出せば話は変わってくる。
相手も俺達の動きを見て出方を変えてくるはず……そしてミリアはアルザと共に斬り込んでいく。彼女の斬撃も十二分に威力のあるもので、獅子の頭部へ剣戟を決めると魔物は消滅した。
ただ、今回の魔物はパメラから得られた剣術で対応できるのか……と思っていた矢先、魔物の突進に対し剣を受けた。するとミリアは横にスルリと抜け、胴体へ剣を決める。それによって魔物は消滅――どうやら、技術の応用で受け流せるらしい。
これであれば魔物との交戦は問題ない。一方で騎士や魔術師達は……さすがに単独で魔物と戦えるほどの技量はない様子。もしここに組織撲滅のために動員された騎士がいたのであれば話は違ったかもしれないが、町に常駐する騎士では仕方がない面もある。
だが、連携は非常に良い……共に町を守る人間として常に訓練をしているから、ということだろう。この連携によって、上手いこと立ち回っている。
魔物の動きを騎士が縫い止めながら魔術師でトドメを刺す……という動きで、確実に魔物を倒し続けている。彼らの動きにおいても魔物の生成速度より撃破速度の方が上回っているようだ……この調子なら魔族の守りを崩して一気に肉薄することができる……であれば魔族はどうするのか。
なおも魔物を生成して俺達を除けようとする魔族。動きは変えず、どんどんと目に見えて魔物が減っていく……これ以外の手がないのか、それとも――
その時だった。魔族が魔力を噴出する。直後、生み出す魔法陣の数が明らかに増した。魔物の質を上げるのではなくさらに数を増やし、質よりも量で押し込もうという腹づもりのようだ。
ただ俺達にとっては好都合……! 俺はさらに魔法の連射速度を引き上げる。さすがに倍とかそういうレベルではないが、それでも魔物が倒れる速度が増す。それはアルザも同様であり、退魔の力をフル活用して一気に数体まとめて消し飛ばす。位置的に魔族の周囲ではなく間近に出現した魔物は、出現直後に瞬殺しているという状況だ。
魔物の作戦は理解した。であれば……と、ここでアルザとミリアが動く。魔物を消し飛ばしながらさらに前へと進む。魔族との距離はまだ少しあり、ミリアが挑み掛かるにはもう少し距離を詰めなければならない。魔物が大量に出現し続ける以上は攻めることはリスクもあるのだが……アルザが前に進んだということはいけると判断したようだ。
アルザが前に立ち、ミリアがその後を追う。そこで、俺も方針を転換した。魔物はなおも出現し続けるが、俺は彼女達の援護に動く。そこで騎士達は言わずとも理解できたか、周囲の魔物達を倒し始めた。
つまり、俺がアルザ達の直接援護に回り、防御が手薄になった俺の援護を騎士がやるという形に……防御が甘くなった以上、長くはもたないかもしれない。けれど、アルザ達ならば――
魔族も突っ込んでくる彼女達に対応せざるを得なくなる。魔物はなおも生みだし続けているが、自分の周囲に展開する魔法陣の数を増やす……けれどアルザは出現した魔物達を瞬殺する。
ここで魔族が後退する。背後には魔術師が生み出した結界があるため、退くのも限界があるけれど……いや、相手もこの状況がそう長くはもたないことを察している。時間稼ぎに終始すれば逆転できる……そういう考えである可能性が高い。
俺達の攻勢が勝つか、それとも魔族が粘り勝ちするか……その時、アルザの魔力が一際高まった。それに合わせ俺は彼女とミリアへ強化魔法を行う。ここだ、と直感したが故の決断だったが……それは見事的中した。
一気に大量に生み出された魔物達。けれどアルザの剣がその全てを振り払った。一気に消し飛ぶ魔物達。なおかつ新たな魔物が生み出されるまでにタイムラグがある……ミリアはそこを見逃さず、魔物へと肉薄した。