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砦への奇襲

 俺達が砦近くの森へ入り込んだ時点で既に作戦に参加する騎士や魔術師は布陣済みだった。気配を可能な限り消すように動いてはいるし、俺の強化魔法を付与しているので、魔族の動きがどうなろうともある程度対応できるはず……残る問題はこの段階で魔族に察知されていたら、という点だがその心配はあまりなさそうだ。


 理由は、昼から夜になっても動きがないため。布陣する間に動かれてしまったら取り逃がす危険性もあったが、そうしたことはなかった……砦の周囲については調査しているはずだが、近辺の森にまでは索敵が及んでいないという見解で間違いなさそうだ。


 明日、騎士団が来て調査という情報を流している以上、動くとすれば間違いなく今日。あるいは、バレないという絶対の自信があるのなら砦に留まる可能性も……その場合はどう動くべきかと思案している間に、砦周辺に動きがあった。


「……ディアス」


 傍らにいるアルザが声を上げる。


「砦周辺に魔物が出現した」

「わかった」


 俺は使い魔で作戦を行う騎士、その隊長に連絡。すると騎士達は砦へ接近するように動き始め、俺達は追随する。

 俺は相手に気取られないように魔力を探る。魔物が出現しているが数は決して多くない。砦の周辺を探るための偵察用、といったところだろう。まだ姿は見えていないが……俺は使い魔を用いて様子を窺うことにする。


 砦付近を観察する小鳥が到着した時、使い魔の目を通して魔物の姿を捉えた。組織撲滅のために交戦した際は骸骨騎士ばかりだったが、今回は犬や虎、果ては獅子といった四足歩行の動物を象ったような姿をしている。

 なおかつ魔族については……夜でロクな明かりもないためわかりにくいが、先日戦った魔族と同様の見た目をしている。相変わらず顔は見えず、魔物を数体動かして周囲を確認している。


 この段階で奇襲を掛ければ、一気に魔族を倒すことはできるかもしれない……が、使い魔ですら瞬時に魔物を生み出したのを見る限り、リスクは高い。やはり完全に準備を整え退路を断った状態で攻撃を仕掛けた方がいいだろう。


「……問題は、魔族の力量だが」


 距離はあるし、感じ取れる魔力は微量だが……高位魔族かと言われると微妙だ。魔物をすぐさま生み出せる能力は脅威だが、素の能力は低いのか?

 疑問はあったが、遠距離から探れるのはこの辺りが限界か……魔族との戦いは情報が重要だ。前にあった地底における戦いではこちらもかなりの戦力を用意できたため、分析がなくとも打開できる状況にできたが、今回は違う。


 やがてピイィィィ、と、笛の音のようなものが聞こえた。包囲が完了し、今まさに攻撃を開始しようとする合図。

 それによって魔物の動きにも変化があった。突如雄叫びを上げて威嚇を始める。それと共に魔族は手を振った。途端、周囲に魔法陣が出現して新たな魔物を生み出す。


 同時、砦の周囲を隔離するように結界が構成された。これは言わば、相手を逃がさないための檻……俺達は動く。程なくして砦周辺に到達すると、俺は魔物や魔族と対峙した。


「今度こそ、決着をつけさせてもらうぞ」


 杖をかざしながら告げる俺に対し、魔族の反応はない。けれどこれが返事だと言わんばかりに魔物を生み出し続ける。

 生みだし制御できる魔物が無尽蔵だとは思わないが、相手の魔力量を考えると人間が相手するには相当な労力が必要だろう。


 だからこそ、瞬間的な判断が必要だ。砦の周辺には続々と騎士や魔術師が姿を現す。魔物を見て臨戦態勢に入っているが、魔物と戦うにはいずれ多勢に無勢という状況に陥りかねない。

 そしてこちらの勝利条件は魔族を倒すこと……敵の背後には砦。建物の中に逃げられたら面倒だが――


「はっ!」


 魔術師の一人が杖を地面に打ち付けた。次の瞬間、魔族の背後にある建物の前に魔力の壁が生まれた。半透明ではあるが、魔族を逃がさないようにするための処置……あれを破壊するには、多少なりとも魔族は隙を晒すことになるだろう。

 よって、逃げ道は塞いだ……魔族はどう動くのか。直後、魔族の周囲――その足下に新たな魔物が生まれる。数で押し込み、状況を打開する気だ。


 なおかつ、発露する魔力は……俺は魔物を見据える。四足で動く魔物は機動力が高く、真正面から交戦するにしてもリスクがある。魔法が使える俺や退魔の力によって容易く迎撃できるアルザならば問題ないが、ミリアは――


「とはいえ、この状況なら動くしかないな」


 俺は決断し、杖を魔物へかざす。


「俺は魔物を迎撃する! アルザ、手伝ってくれ!」


 ――その言葉でアルザもミリアも理解した。魔族へ挑むのはミリア――相手の能力を見て、俺はそう判断した。

 ミリアの表情に緊張が走る。だが、その顔には作戦を遂行しようという強い意思が見えた。


 そこで俺はミリアへ強化魔法を付与する。彼女用に調整したものであり、それを感じ取ったかミリアは少し驚いた表情を見せる。


「魔物を倒しながら援護する……決着をつけるぞ!」


 その言葉と共に、アルザとミリアは動き出した。


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