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捉えられなかった気配

「ねえディアス」

「どうした?」

「組織と交戦した場所に魔力があるけど、それは残留しているだけって言ったよね?」

「ああ、そうだな」


 変な顔をするアルザ。何か気になることでもあるのだろうか。


「砦周辺を調べたのか?」

「索敵範囲には入っていたし」

「結構距離があるはずなんだけど……相当意識を集中させたな」


 霊脈を利用してとはいえ、よくやる……などと思っていると、


「それでさ、ディアス。気配が砦の真下にあるんだけど」

「……真下?」

「ほら、地底に魔族の拠点があったみたいに」


 ……なんだか話が変わってきたぞ。もしかしてそういう拠点があるから、あの場所で集会をやったのか?


「前の状況と似たような感じだと言いたいのか?」

「あそこまで地底というわけじゃないけど……」

「でも戦っていた時に気付かなかったな」

「何かしらの形で隠蔽されていたのかしら」


 と、俺達の会話に割って入るようにミリアは告げた。


「現在探知できるのは、もう隠す必要がないから、とか」

「調査は終えて、騎士とかも引き上げているだろうしなあ……ただ、もし当該の魔族が残っているのだとしたら問題だぞ。騎士達にも連絡はしないとまずい」


 ……俺はガルティアの町へ目を向ける。騎士へ連絡すれば対処はしてくれると思うのだが。


「あるいは、最寄りの町にいる騎士達へ連絡するか。調査していた騎士がまだ残っているかもしれない」

「その方がよさそうね」

「……なんだか、まだ一波乱ありそうだな」


 そんな呟きと共に、俺は行動を開始した。






 組織へ攻撃を行った際に訪れた町へ再び赴き、詰め所を訪れ話を持ちかける。騎士は大層驚いた様子を見せつつも、


「わかりました。再度調査します……が、こちらが動けば向こうは気付くでしょうね」

「たぶんそうだろうな」

「現在は気配について確認できますか?」


 騎士からの問い掛けに対し俺は小さく頷く……というのも、町へ入る寸前に索敵魔法を行使した結果、戦闘を行った砦の真下にアルザが語った通り明確に気配を感じ取った。

 ただ、近づいてもか細いくらいの気配であり、むしろよくアルザは気づけたなと感心したくらいなのだが……ともあれ、あの場所のどこかに魔族がいるのは間違いない。ただ騎士が言ったとおり、もし再び砦へ足を踏み入れても気配を消してしまうだろう。


「地中にいることだけはわかっているんだが……仮に砦の真下だとすると、砦ではなく別所に入口があると考えていいのか?」

「砦には地下室がいくつかあり、その内の一つが通路になっている……という可能性もゼロではありませんが、調査は行い特にそれらしい物はないと報告は受けています」


 そこまで言うと騎士は頭をかきつつ、


「ただ幻術などで隠蔽されていたなど、調査の手が及ばない方法を用いて誤魔化した可能性は否定できません」

「そうか……とはいえ、馬鹿正直に踏み込んでも逃げられそうだな」


 どうにかしておびき出さないといけないか……などと考えていると騎士は、


「問題は魔族と戦う戦力ですね」

「組織撲滅の際に参戦した騎士はもういないのか?」

「はい、残念ながら……相手が魔族である以上は魔物との交戦も考慮しなければならないでしょう。だとするとそれなりの規模、戦力が必要です」


 ふむ、戦力的な意味合いを考えると不安ではあるな……かといって放置はできないし、なおかつここを逃したら組織に手を貸した魔族に逃げられてしまう羽目になる。組織撲滅の際、不満の残る結果だった以上、ここで仕留めたいところだ。


「ディアス、私達はどうする?」


 問い掛けがミリアからやってきた。それに俺は、


「二人が同意するなら参戦する……でも、俺達だけで戦うのもリスクはある。特に必要なのは魔族をおびき出す作戦と、相手が逃げられないようにするための方策だな。この二つが揃わないと、決着をつけられないと思う」


 俺はミリアとアルザの表情を窺う……両者はやる気の様子。であれば、俺は騎士へ言う。


「俺達は手を貸すよ」

「ありがとうございます……相手に逃げられないようにすることについてはこの町にいる騎士と魔法使いで対応できるかと思います。問題は魔族の討伐について」

「魔族である以上は、最大限の警戒をもって戦いたいところだな……ガルティアから人を引っ張るというやり方もあるけど」


 さすがに戦士団『蒼の王』全員を呼ぶなんてのはナシにしても、パメラなら手を貸してもらえるかも……。


「……いえ、ここは私達だけでどうにか」


 けれど騎士は俺へ向けそう述べた。


「魔族をおびき出す策としては、通用するかわかりませんが一つ思い浮かびました。敵が逃げる可能性を考慮すれば、すぐにでも始めたいところですが……いかがしましょうか?」

「それは騎士側が判断してもらえれば」

「わかりました。それでは――」


 そうやって話し合いは進んでいく。気付けば騎士もやる気となり……作戦会議は数時間にも及んだのだった。


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