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形を得る

 俺はロスラの屋敷へと戻る。そして彼の部屋を訪れると、


「状況はどうだ?」

「解析を終えて、目的は果たせたよ」


 ――俺は正体不明の魔族が残した塵を回収し、ロスラの分析を頼んだ。そして彼は魔力の質を解析できた……よって、それを利用し索敵することができるようになった。


「ただ、問題は魔法の効果範囲だ。話を聞いたところによると、遠隔で操作する必要もない処置をしていたわけだろう? だとしたら、近くにはいないんじゃないか?」

「その可能性は高いけど、今後仕事などで魔族と戦っていく中で、今回組織に技術を提供した存在が現れるかもしれない。それを確かめるのは重要だろ」

「なるほど、ね……ま、やりたいようにやればいいさ」


 そう言いながらロスラは机の上に小さな水晶球を置いた。


「この中に魔力の質……その情報を入れ込んだ。索敵魔法を使う際はこれに魔力を流せばいいよ」

「ありがとう……さて、戦士団と一緒に仕事をした、という回り道はしたけど……とりあえず、ガルティアでやることは終わりかな」

「旅立つのかい?」

「ミリアがもう少しパメラの指導を受けたいと言っていたから、それが終わればな」

「自分探しはできそうかい?」

「どうだろうな」


 俺は苦笑し、なおかつ肩をすくめながら話す。


「ただ、今回戦士団と関わって一つ思ったことがある……色々あったし、まあ半ば追い出された形で俺は戦士団を抜けたわけだが、あの場所はなんだかんだで楽しかったし、確かに俺の居場所があった」

「それを再認識しただけでも収穫ってことか……とはいえ、戻るつもりはないんだろ?」

「それはもちろん。旅を始めた時点では旅でもするかという気持ちが強かったし、悲しいと感じることもなかった……それは今も変わらないな。ただ」

「ただ?」

「俺が抜けて『暁の扉』は多少なりとも騒動が巻き起こった……その辺りをもう少し自覚していれば、戦士団は混乱しなかったと思う」

「そこは……追い出した側の責任じゃないかい?」

「それはそうなんだが、だとしてもケアくらいはできただろうって話さ」

「……ずいぶんと気に掛けるんだね。ま、所属し続けた戦士団だから、当然と言えるか」


 俺は小さく頷く……正直この辺りのことは今更後悔しても何かできるわけでもないけど。


「で、今後は今回みたいなことが起きたら、ちょっと首を突っ込もうかなと考えたわけだ」

「戦士団が困っていたら、という話かい?」

「そうだ。人の役に立つ、というのは気分は悪くないし、色々と助言し戦士団を立て直す……という仕事は、なんだか自分に合っていそうな気もしたし」

「ふむ、そうか……自分探しと言って結局新しい仕事を見つけるような話になってしまっているけど」

「そうかもしれないな」

「……ディアスが納得しているならそれでいいか」

「とはいえ、これが俺が探していた答えなのかはわからない。そうだな……現時点における一つの解答ってところかな」

「候補はまだまだあるかもしれない、か」

「ああ。今後はそれを見つけていこうかな」


 当ての無い、完全な手探りの旅だけど……ま、そういうのも悪くはない。

 ただ、今回戦士団と仕事をして一つ前に進んだような気がするのは事実。今まで漠然としか感じていなかった自分探しというものに、少しだけ形を得た気がした。


「というわけでロスラ。そう遠くない内に町を離れるよ」

「わかったよ。また気が向いたら……あるいは荷物を預けたくなったらここへ来るといい」

「単なる預かり所みたいな物言いだけど……」

「そうかい? でも、あんまり放置されていると本当に博物館にでも寄贈してしまうから、気をつけてくれ」

「どう気をつけろと……」


 俺の言葉に対し、ロスラは笑い――俺もまた、笑みを浮かべた。






 その後、騎士がロスラの屋敷を訪れて事の顛末を教えてもらう。


 魔族については、結局資料などを調べてもわからなかった。名称についても「魔族」と呼称されていたらしく、詳細は塵を回収したことで得られた魔力の質だけとなった。

 そして、彼らが所持していた武器も押収したのだが……結構ヤバい物も存在していたらしい。それが王城の中にいる人物が欲していたものなのかは不明だが、そうしたヤバい物を使って王都で商売をしようとしていたということを考えると、これから出たかもしれない被害を未然に抑えられた、と言えるのかもしれない。


 そして肝心の王城にいる人物については……当然ながら不明。で、ここからが問題なのだが、組織のボスに尋問してもわからなかったそうだ。


「おそらく、魔族が組織のボスを攻撃した際に記憶を消したのかもしれません」


 そう騎士は語っていた……それはおそらく当たりだろう。ただこの事実から魔族は組織そのものは潰えてもいいが、王城にいる存在については露見されたくなかったと解釈ができる。

 いやむしろ、王城にいる存在と魔族が手を組み、ああした組織に技術を与えていたという可能性もあり得る……王都襲撃からきな臭い話になってきたと思いつつ、俺は冒険者ギルド本部にいるエーナへ向け手紙を書いた。


 王城内に犯罪組織と結託している人間がいる……この情報は既に騎士を通して報告されている。けれど俺は……個人的な見解をエーナへ渡すことにしたのだった。


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