表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
228/487

魔族の策

 魔族が何をするのか――直後、相手の足下に多数の魔法陣が形成される。魔物を生み出す気だ、とすぐに悟った俺は魔族へ向け雷撃を放った。

 戦士へ向かって放ったものと比べ遙かに威力を伴った一撃。しかし、俺の魔法は魔族に届く寸前にパアン! と弾かれて消える。体の周辺に結界を構成している。普通の魔法はどうやら届かないらしい。


 考える間に魔法陣から魔物が出現し始めた。その間に騎士達は組織の構成員を全て気絶させたが……魔物が出現したことで、まずい状況に陥る。


「こいつ……!」


 俺は魔族がこの局面を待っていたのだと悟る――魔物は主に骸骨騎士という出で立ちをしたものばかり。剣と盾を持ち俺達を威嚇するように剣の切っ先を向けてくるのだが……中には倒れ伏す構成員に向ける魔物もいる。この場における構成員を全て殺して魔族に関する情報を隠滅する……そういう動きだ。

 つまり、騎士達は気絶する構成員を保護しなければいけない……騎士が倒れる人間を無視することはできない。けれど際限なく魔法陣から出現する魔物達の対応をしていたらいずれ――


「アルザ! ミリア!」


 俺は叫び、騎士達よりも前に出て魔族と相対する。


「組織の人間を保護してくれ!」

「あ、ああ……!」


 騎士は承諾し、動き始める。その間にも戦況には変化が。後方でボスの護衛を倒したパメラ達が戦士団のメンバーを伴って広間に入ってくる。


「うわ! 何これ!?」

「パメラ、悪いが魔物の討伐を手伝ってもらうぞ!」


 人数的にはこれでどうにか倒れる構成員を守りながら戦えるか……ただ、組織のボスについては魔族の傍らで倒れている。そして魔物達は俺達を阻むように立ち塞がり、個体の中には倒れるボスに近づいていく個体が――


「はっ!」


 そこで、アルザが魔物を斬った。所持している退魔の力を活用して魔物を瞬殺した彼女は、かなり強引に魔物の間を縫うように突き進み――組織のボスへ刃を突き立てようとした魔物を、倒した。

 そして彼女はすぐさま倒れる組織のボスを抱える――小柄な彼女が恰幅の良い男性を抱えるという奇妙な光景だが、魔力による身体強化で成せる技だ。


「そらっ!」


 声と共にアルザは騎士達へ向け男性を放り投げる――結果、ボスを救出することに成功。直後、周囲にいた骸骨騎士がアルザへ襲い掛かってくるが、


「ふっ!」


 退魔の力によって一蹴。するとそこで魔族が反応した。


「……退魔か」


 そんな呟きが俺の耳に入ってくる。その直後、さらに魔法陣が輝いた。

 再び魔物が出現し、襲い掛かってくる――アルザは一度退いて構成員を保護している騎士の援護に。俺やミリア、そしてパメラや戦士団も同様……迫り来る魔物達を迎撃し、時間を稼ぐ。


 やがて、広間に新たな騎士――増援が到着した。そこですぐさま広間から気絶する人間を出していく……面倒だったのが入口から反対側で倒れ伏す俺の魔法で気絶した戦士。とはいえそこもアルザに加えミリアが前に出て、どうにかこうにか救い出した。


 ミリアもまたこの戦いにおいて奮戦している。今回の魔物は剣を持っているためか、パメラによって習得した技術を遺憾なく発揮できているらしい。魔物の剣を上手くいなして反撃で対処している。魔族の力を活用すればおそらく圧倒できるはずだが……仲間も周りにいるような状況では危険と判断しているのだろう。それがなくとも上手く連携し、対処できている。今回の戦い、間違いなくミリアにとっては自信に繋がったはずだ。


 そうして人を救い出す作業を始めて……時間にしておよそ十分にも満たない程度。騎士達は迅速に作業を進め、広間には俺達と魔族だけとなった。


「よし、それじゃあ本格的に始めるか」


 魔物は際限なく出現しているが、魔族の攻撃は魔物生成一つだけ。接近すれば魔法などで反撃してくるだろうけど、現段階では数が多くて厄介なだけで応じることができている。


「そういうわけで、魔族……人間と組んで何をやっているのかは知らないが、ここで終わりにさせてもらう」


 その言葉に対し魔族は反応せず、さらなる魔物を生み出した。そこで俺達は反撃に転じる。魔物の群れへ突撃し――俺は魔法、他の者達は剣を用いて激突する。

 直後、俺の雷撃が骸骨騎士を粉砕したかと思うとアルザやミリアの剣が複数体の魔物をまとめて消し飛ばした。俺達が先陣を切って倒したため、その勢いに乗じてパメラも戦士に号令を掛けて足を前に出す。


「いけーっ!」


 号令というか、もはや雄叫びに近い声を張り上げながらパメラは魔物と交戦する。剣を持つ魔物が相手であるため、彼女の技術が遺憾なく発揮される……そして戦士達も鍛錬の成果が出ているか、魔物を倒し始める。

 敵としては剣を持つ魔物を生み出すことで対処を難しくさせたい意図があったように思えるが、実際はこちらが有利な状況となった。剣を扱う敵であるため、元々組織の戦士と交戦する想定で考えていた訓練が役立っている。


 こちらが魔物を倒すペースは明らかに早いはず……俺は魔族を見た。なおも佇む相手ではあるが……そこへ向け、俺は再び杖をかざした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ