戦士団の役割
今回の作戦、指揮をするのはルードであるらしい。知り合いなので俺としても話を通しやすいなと思いつつ、詰め所の中で話を聞くことに。
「敵さんは既に砦の中に入って準備をしている。なおかつ構成員も既に集まっているようだ」
「この町に潜伏しているとかはないのか?」
と、俺が尋ねるとルードは首を左右に振った。
「幸いながら……この町に構成員が潜んでいるのなら、わざわざここに集合したりはしないさ」
「それもそうか」
「確かに組織はこの町にも影響を持っているようだが、奴らが拠点にしているのはここからそれなりに離れた場所だ」
「つまり、敵にとってこの周辺はあまり縁の無い場所ってことか?」
「そのようだ。疑問としてはじゃあなぜこんな場所に集合しているかだが……色々と推測できるが、攻撃するのに必要がないし、あえて語ることはしないでおこう」
まあそうだな、と俺は内心で同意する。
「敵さんとしてはあえて関係の無い場所に集合することで、国側の目を欺いたつもりなのかもしれないが、逆に言うと地の利を活かした防衛などができないってことだ。こっちも色んな所から騎士を引っ張ってきてまとまりがないから、そこについてはありがたい」
「大丈夫なのか? それ」
こちらが言及するとルードは肩をすくめ、
「なるようにしかならないな」
「おいおい……王都から騎士団を要請した方が良かったんじゃないか?」
「襲撃があるなど騒動が立て続けに起きたことで、騎士団も再編を余儀なくされているんだ。その関係で王都からは引っ張れなかった」
と、ルードはため息をつく。
「だから組織が大々的な動き始めても急造の部隊ってわけだ……というより、騒動が生じたことでこの隙に動けると組織側が判断したんだろ」
「なるほど……でも国としては舐められたくないということで今回攻撃すると」
「別にそういう理由じゃないけどな……ま、敵が集まる以上チャンスってわけだ。まさか総指揮を俺がやるとは思わなかったが」
「せめて指揮官くらいは王都側の人間が来れば良かったのに」
「向こうは向こうで大変なんだろ」
再びため息を吐くルード。彼も結構苦労しているようだ。
「まあいい……今度はこっちが質問する番だ。ディアス、一緒に同行している面々は戦士団だろ? ディアスが団長なのか?」
「残念ながら違うよ」
――俺は簡単に経緯を語る。それにルードは呆れたように、
「もう一度訊くが、自分探しの旅はどうした?」
「これもその一環ということで……」
「お前らしいと言えばらしいが……まあいいか。ともかく名誉回復のための行動というわけだな?」
「ああ。ただ、最前線に突っ込むとか無茶はできないぞ」
「そこは騎士が請け負うから安心してくれ……でも戦力事情を考えると頑張ってもらいたいんだが」
「具体的には?」
「騎士の後詰めを頼みたい」
結構重要な役割だなあ。ずっと後方支援で戦闘ナシよりはずっといいけど。
「今回編成された人数を考えると、敵を逃がさないように取り囲む必要性があるため、突入できる人員は決して多くない。それの援護を頼みたい」
「俺とその仲間も動員するってことでいいのか?」
「ああ、それで頼む」
……ルードはやや苦い顔。たぶん騎士達だけで対応したいのだろう。でも俺に依頼をしてきたことを考えると、
「騒動が起きている要因で、どこもかしこも人員不足だな」
俺の指摘に対しルードは神妙に頷いた。
「そうだな。俺が指揮をやっているということからもわかると思うが」
「……なあ、今回の攻撃する組織だが――」
「王都襲撃、冒険者ギルド本部への攻撃……それに関連していると言いたいのか? 現段階では不明だが、魔族が組織にいるのなら、可能性としてはあり得そうだな」
反魔王同盟の一件……それと関わりがあるのかどうか。もしそうなら、かなり厄介な話だが。
「ま、その辺りのことは組織を成敗して調べればいい。そういうわけでよろしく頼むぞ」
「わかった……というか、俺の強化魔法に頼る形だな」
「ガルティアにいて助かったぜ」
軽口みたいな言い方のルードに俺は苦笑する。
ま、名誉回復の機会が生まれたと思うことにしよう……話し合いを終えてオクトへ話すと、彼は緊張するような面持ちとなった。
「責任重大だね」
「俺達は騎士や戦士団を援護する形になりそうだから、可能な限り補助するよ」
「わかった。頼む」
……なんというか、かなり頼られている状況だな。俺はアルザとミリアへ視線を移す。二人は大丈夫なのかと思ったが……両者とも小さく頷いた。
特にミリアについては力強い表情……うん、修行によって自信がついたらしい。こちらとしては可能な限りのことをやった……そう改めて思った後、二人へ告げる。
「今日の夜、決戦だ。気合いを入れ直してくれ――」