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名誉回復の道

 というわけで、俺はオクトの協力を受けて戦士団の状況を確かめる。残っている団員は総勢二十名ほど。ただ所属はしているけど実質戦士を引退している者もいるから、実質は十名ちょいといったところ。


 屋敷内に全員いたわけではないが、いる人員に少し話をしてみると、戦士団に残り続けるのかそれとも個人で活動した方がいいのか迷っている……、戦士団に所属しているメリットもないような状況だし、ついでに言うなら悪評が存在しているため、団に残ってもデメリットが大きいよな。


「何かしら功績を上げないと難しいだろうねえ」


 と、オクトはため息混じりに言う……無理もない。戦士も減った状況では大きな仕事なんて実行することが厳しい。

 上層部が丸ごと消えてしまった以上、もはや戦士団『蒼の王』については解散する以外にない……と思うしかないが、そうした中で俺は口を開いた。


「オクト、残っている戦士に関し個々の能力について、詳細はわかるか?」

「一応、それなりには……どうする気なんだ?」

「その情報を教えてもらうことはできるか? もちろん、公表することはしない」

「そこは心配していないけれど……わかっている範囲では――」


 と、オクトから話を聞いた後……俺は彼へ、


「うん、そうだな……じゃあオクト、まずは動ける戦士を全員集めてくれ」

「全員?」

「ああ。それで多少なりとも訓練してもらう。大きな戦いだから、ちゃんと準備をしないと」


 オクトが眉をひそめる。戦いとは何か――俺は解説を加える。


「さっき、俺に仕事が舞い込んできた。マレイドが手にしていた武器……それが犯罪組織の手によって販売されていた物で、近々騎士団が組織を倒すために動くらしい」

「……もしかして、それに参戦するってことかい?」

「戦士団が出した不始末は自分達でつける……という形なら、失った評判を取り戻すことは難しくとも、ある程度打開できると思わないか?」


 その言葉にオクトは納得した表情を示したのだが、


「でも、現状の戦力では……」

「戦士団だけでやろうってわけじゃない。騎士達がメインで動くし、俺も援護に入る……とはいえ、戦士団独自である程度動ける必要はあるから訓練をしてもらう」

「団員が賛同するのかしら?」


 と、ミリアからもっともな言及。それに対し俺は、


「そこはオクトに頑張ってもらうしかないな。幸い戦士に聞いて回ったところ、オクトの評価は悪いものじゃないみたいだし」

「……まあ、多少なりとも慕われているとは思うけどね。でも、戦闘においてまとめられるかどうかはわからないよ。それなりに場数は踏んでいるけど、組織を討滅するための戦場なんて――」

「確認だけど、外部の人間を中心に据えるのは良いのか?」

「ディアスがやるのかい?」

「いや、騎士団としては指示に従って動いて欲しいだろうし、俺じゃない」

「……多少なりともガルディアと縁がある人じゃないと難しいんじゃないかな」

「わかった。パメラ」


 突然名を呼ばれ、当のパメラはきょとんとなる。


「あたし?」

「確認だが屋敷を回って出会った戦士、見覚えはあるか?」

「全員じゃないけど、多少は……ガルティア出身者が多いみたいだね」

「なら、話は早い……パメラ、戦士団におけるエース格として、組織撲滅に手を貸してやってくれないか」


 ――さすがにその展開は予想していなかったらしい。彼女は驚いた声を上げ、


「あ、あたしが!?」

「ガルティア出身でそれなりに名が通っている……パメラなら納得の人選だし、ついてきてくれると思うぞ」

「で、でもあたし戦士団に加入経験はあるけど、団としての動きができるかどうかわからないよ!?」

「他の戦士の指示については他でやってもらえばいい……オクト、その辺りはどうだ?」

「現場の状況判断については、それなりに経験積んでいる人と私が受け持てばなんとか……でも、かなり難しいぞ?」

「人数が減った状況である以上は、多少強引でも無理を通さないといけない部分はあるさ。問題は団員がちゃんと指示に従い動いてくれるか、だけど」

「……そこについては私が説得はしてみるよ。戦士団に愛着を持っている部分はあるだろうし、パメラが加わってくれれば心強いし納得はすると思う。ただ」


 と、オクトはパメラへ視線を移した。


「この話、彼女にはメリットがないのでは?」

「た、確かにそうだよ!!」

「もちろん報酬は用意するぞ。パメラ、成り上がれるチャンスを用意するよ」


 と、俺のセリフでパメラは目の色を変える。


「え、どういうこと!?」

「残った団員で組織撲滅に協力……しただけで戦士団の名誉回復というのは難しいだろう。ただ、騎士側から戦士団の協力があって……という話にできれば、町の人の評価も多少は覆るだろ」

「それはわかるけど……」

「同時に冒険者ギルドへ伝える。残った団員で騎士達に協力した……その実績と共に今後もよろしくと。これならギルド側も仕事を回してくれるだろう。で、その際に俺はパメラのことをギルド側に伝えておく……そうだな、『六大英傑』のエーナ辺りに伝え懇意になれれば、目を掛けられる可能性が高くなる」


 つまり、今後成り上がれる可能性……その糸口を提供しようというわけだ。その言葉に対し、明らかにパメラの反応は変わり始めた。


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