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自信

 ミリアが次に標的にしたのは、マレイドの前に立っていた戦士。自分が狙われていると悟った相手は即座に剣を構えたが――動作は鈍く、ミリアは懐まで潜り込む。

 そして剣戟を決めた時、戦士は横に吹き飛ばされていた。これでマレイドとミリアの間に阻むものはなくなったのだが、


「ちぃっ!」


 マレイドは舌打ち一つと共に後退する。さすがにミリアは追うことはせず、周囲を見回す。


 左から一人の戦士がミリアへ仕掛けようとしていた。剣に込められた魔力はなかなかのものであり、直撃したら結構なダメージのはず……だが、ミリアは冷静に剣筋を見極めると、自身の剣で防御。即座にいなした。


 あっさりと避けられた戦士が驚愕すると同時、ミリアの剣がまともに入って吹き飛ばされる。残る戦士達もミリアへ狙いを定め突撃するが……統制が執れていない、バラバラな動き。せめて同時に攻撃すればミリアを後退させられたかもしれないが、これでは無意味だった。


 そして――彼女が足を前に出して戦士を存分にたたきのめす。相手は人数だけは多いのだが、如何せん動きはバラバラだし、ミリアの動きにもまったく対応できていない……この状況下では、どうやっても勝ち目はなさそうだった。

 マレイドはミリアへ向け攻撃を仕掛けるよう指示を出し、戦士達は呼応するのだが……彼の目は明らかに俺やアルザへ向いている。まあ彼からすれば、ミリアは前座とでも思っていたことだろう。けれど実際は彼女に一方的にやられている……実力を見誤ったという面もあるだろうけど、もう一つ大きな理由としては彼女が鍛練を重ねたことで強くなったため、だろう。


 ただ、鍛錬といってもパメラと出会ってごく短期間のはず……なのだが、俺はなんとなくこういう展開は予想していた。元々剣筋はしっかりしていて剣術道場でも十分だという評価をもらっていた。そこに魔族とも戦える技法が合わさったことで、一気に成長したというわけだ。

 ここで俺は横にいるアルザへ向け小声で、


「アルザの目から見てミリアの動きはどうだ?」

「十分だと思うよ」


 と、ここで俺は彼女の目が好奇に満ちているのがわかった。


「実は、手合わせしようと言ったことがあるんだけど、実力が足らないと断られたんだよね。無理強いはよくないから私も引き下がっていたけど……今なら良い勝負になるかもしれないね」

「目が輝いているな」

「そうかな?」

「ほどほどにしてくれよ……」

「わかってるよ。それと、もう一つ付け加えるとしたら自信がついたことが大きな要因じゃないかな」

「自信?」


 聞き返した時、ミリアは半分の戦士を倒した。すると後方にいた見張り役の戦士も援護のため前に出てくる。


「一緒に旅をする人が、元英傑と七人目の英傑ということで、萎縮していた雰囲気があるみたいだった。私達の戦いぶりを見て、自分は弱いという風に思ってしまったのかも」

「比較対象が俺達ではなあ……」


 別に俺自身は「自分は強い!」と豪語するわけではないけど、魔王を倒した戦いをくぐり抜けた人間である事実は間違いなく……そしてアルザも退魔という力を持っているし元英傑という肩書きから、ミリア自身考え込んでしまうのも無理はない……と、思う。

 俺達はさして気にしないとか言ってもまあ無理だろうというのは理解できるし……今回の戦い、正直相手としては数が多いだけといった案配ではあるけど、剣術を学んだことで圧倒できているのは間違いない。


 敵としては物足りない面もあるが、剣術だけで対処できているという事実から、魔族としての力がここに上乗せされれば今まで以上の戦力になってくれるだろう。ミリアも自信がついただろうか……などと考えている間に、彼女が向かってくる戦士を全て迎撃した。


「援護の必要はなかったね」


 パメラが言う……彼女の言うとおり、マレイド以外は全てミリアの剣で倒しきった。しかも峰打ちであり、加減もした上での結果だ。

 こんな状況はさすがに相手も予想外であり……マレイドは倒れ伏す戦士達を一瞥した後、顔を引きつらせながら、


「馬鹿な……何故……」

「それが理解できないのなら、その程度ってことだな」


 俺が言うと、マレイドはこちらを見返した。


「戦士としてアドバイスをしておこうか。相手の力量を推し量るのに魔力を探るのは有効だが、相手が達人級ならいくらでも隠し通せる。自分の能力を過信しない方がいい」


 ミリアが剣を構える。マレイドはそれで剣を構えたが、明らかに及び腰だった。


「俺達の能力が完璧にわかっていれば、こんな喧嘩はしてこなかったはずだ……残念だよ」


 マレイドが走る。その突撃は他の戦士と比較して鋭いものであったが、ミリアは即座に見切って……剣を差し込んだ。

 彼の剣は結局ミリアへ届くことなく吹き飛ばされる。勝負はあっさりと決し……騒動は、戦士団が全員気絶という形で幕を下ろした。


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