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鍛錬の成果

 マレイドの前に出た戦士達が俺達へにじり寄ってくる。こちらの出方を窺っている様子ではあるのだが……俺はミリアへ目配せをした。それで彼女は頷き、剣を抜いて前に出る。


「……何?」


 さすがにこの行動は予想外だったらしい。こちらの動きを見たマレイドは眉をひそめた。


「どういうつもりだ?」

「彼女は俺達の仲間であり、パメラの指導の下で剣術を学んでいたんだが」


 と、俺はマレイドの質問に答える。


「その成果を試す機会をどうしようか考えて……結果、この戦いを利用させてもらうことにした」

「……ずいぶんと、ふざけた真似をするな」


 マレイドの言葉と共に戦士達はざわりとなった。まさか英傑ではなくその仲間が相手だというのは――


「勝てると思っているのか?」

「その言葉、そっくりそのまま返す。そうだな、こう言い換えようか? 俺達が出る幕はないって話さ」


 ――途端、前に出た戦士三人が俺達へ向け突撃を開始した。突貫の声は夜の闇を切り裂き、迫ってくる。


「パメラ、ミリアの援護を頼む」

「そのつもり」


 俺の言葉と同時、ミリアがとうとう戦士一人と肉薄した。一歩後方には左右から彼女を挟み込もうとする戦士がいて、瞬く間に彼女は取り囲まれそうになる。


 けれどミリアは真正面にいる戦士へ向け剣を構えた。同時、その戦士から斬撃が放たれる。魔族由来の武器による恩恵で剣戟は速く、ミリアの剣と激突――した直後、彼女は剣を容易く受け流した。

 パメラの技術を利用してするりと抜ける……と、戦士はあまりの手応えのなさに困惑する表情を示した。彼らの剣は元々の剣術に武器の力が加わって強力な一撃を生む……ということなのだと思うが、ミリアはそれを技術でいなした。


 そしてすぐさま反撃に転じ、ミリアの剣が恐るべき速度で戦士へ入った――無論、峰打ちである。けれどその斬撃は俺の目に一瞬ブレるほどの速度で放たれたものであり、これもまたパメラの技術――そう確信した直後、戦士が吹っ飛んだ。


「があああっ!」


 雄叫びのような声と共に地面に転がる戦士……ここまでの攻防は極めて短時間であり、左右からミリアを囲もうとした戦士がまだ移動をしている状況であった。

 ではその二人はどうするのか……表情は驚愕に満ちていたが、後退はしなかった。まず攻撃を――既に包囲することは失敗しているのに、それでもなお攻めようとする。瞬間的な判断ができていない……戦闘経験もそれほどないのだと予想できる。


 ミリアは続けて右側にいる戦士へ狙いを定めた。ミリアが放った剣戟に対し、戦士は剣を放ち――激突。金属音が高鳴ったと思うと同時、ミリアの剣が戦士の剣を大きく弾き飛ばした。

 これもまた技術を用いてのものだろう。剣同士が激突した瞬間、魔力の流れを操作して戦士の渾身の一撃……その刃に収束した魔力の流れを大きく乱して威力を殺す。そこへ彼女の全力の薙ぎ払い……これによって剣を弾いたのだ。


 ミリアの剣はすかさず追撃を戦士の体に叩き込み、またも相手を吹き飛ばす。残る三人目はいよいよ肉薄しようとしていたが、戦士が二人瞬時に倒されたことで動揺し足を鈍らせた。退却か攻撃か迷ったらしいが……この段においては致命的だった。

 そのまま勢いに任せ攻撃した方がまだ勝機はあったかもしれない。前へ進むことを躊躇った戦士に対し、ミリアは動きの鋭さを変えないまま剣を振った。戦士はそれを防御することもできず……三人目の戦士も吹き飛ばされて地面に転がった。


 攻防は一瞬の出来事であり、相手からすれば瞬く間に敵を倒したと見えるだろう……英傑クラスであれば「まだ遅い」と言うところかもしれないが、今回戦う戦士団の面々にとっては驚嘆するほどの状況……実際、ミリアの戦いぶりを見てリーダーであるマレイドすら顔を引きつらせるほどだった。


「……先に言っておくけど」


 と、俺は戦士達へ告げる。


「このくらいで驚いているようでは、俺達には勝てないぞ」

「……おのれ」


 ギリッ、と歯を食いしばったマレイドは号令を掛ける。


「囲め! そして押しつぶせ!」


 ――屋敷へ押し入ったはいいが、そこから先についてはあまり深く考えていなかったようだ。まあ俺達と顔を合わせ場当たり的に攻撃しようとしたのだから作戦も何もあったものではないか。


 戦士達はマレイドの指示に従って動こうとする……のだが、先んじて仕掛けたのはミリア。一瞬で側面に回ろうとした戦士一人へ標的を定め、剣を振った。


「くっ!」


 相手はそれに応戦したが、剣が激突した瞬間にまたもミリアの剣戟によって剣が弾き飛ばされ、斬撃を叩き込まれて倒れ伏す。ちなみに吹き飛んだ戦士達はピクリとも動いていない。気絶しているらしい。


 それと共に、俺はミリアの攻撃を見て動きを止める戦士達を観察する。命令を遵守しようと動いてはいるが、明らかに彼女を警戒し足取りは鈍い。そして握りしめる武器はどうやら使用者の魔力を吸い取っており……それにより強化を受けているはずだが、吸われ続けたら当然疲労で倒れるしかない。戦闘そのものは短時間しかもたないはず。


 その時、ミリアが動く。それに戦士達は対応できないまま……彼女の剣閃が、闇夜に煌めいた。


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