表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/487

夜襲

 俺達は夕刻まで話し合いをした後、食事と仮眠を行って準備を済ませる……ここまでやって敵が動かなければ骨折り損というわけだが、そうはならなかった。


 夕方の段階で鳥の使い魔を用いて組織の様子を観察したら、明らかに戦闘準備を行っているのが見えた。屋敷内ではなく庭園に戦士達が集まって何かをやっている。とはいえ元『暁の扉』に所属していた俺の知り合いはいない。たぶんだが、今回の攻撃に賛同した者ばかりが集まっているのだろう。

 そして、アルザが言っていた倉庫らしき建物……そこから武器を取り出して、配り始めた。向こうも準備は万端というわけだが――


「ロスラ、準備はできたか?」


 日が沈みいよいよ夜を迎える時刻。戦士団の様子からまだ攻撃するには時間が掛かると判断して俺は、彼の部屋を訪ねる。


「ああ、問題ないよ。残る懸念としては騒動が終結後の話だけど」

「魔族由来の武器を使っているみたいだし、それを証拠にして戦士団の調査を騎士へ願う、といったところだな。ま、犯罪組織と手を組んでいるのなら屋敷を丹念に調べれば証拠は出てくるだろ」

「現時点で証拠を隠滅している可能性は?」

「ゼロとは言わないけど、相手の様子からすると負けることは想定していないみたいだし、証拠を隠すような行動はしていないだろ」

「なるほどね……本来なら証拠なんてものは常日頃残さないようにするべきだけど……」

「屋敷の荒れ具合とかを見れば、まあ見つかるだろうな」


 まあロスラの屋敷へ夜襲を仕掛ける、なんて状況の時点で少なくとも戦士団の上層部は残らず捕まるだろうし、彼らの処遇がお咎めなし、とならないのは確実だ。ここについてはさほど心配していない。


「それじゃあ予定通りミリアやパメラが先陣を切る形で――」


 ロスラへ戦い方について解説し始めた矢先、戦士団が屋敷を出たのを使い魔の目が捉えた。いよいよだと考えると同時、俺はロスラへその旨を告げて部屋を飛び出す。

 すぐさま仲間達へ報告を行い……戦闘準備を始める。といってもさほど時間は掛からない。打ち合わせ通りの態勢になるまでに十五分と掛からなかった。


 そうこうしている内に戦士団が近づいてくる。使い魔による観測では、およそ二十名ほど。団員の総数がどれだけなのかわからないが、俺の知り合いなどがいないことを考えると全員というわけではないだろう。

 ただ、魔族由来の武器を持っているためなのか、全員が好戦的な気配を漂わせているのが暗がりでもわかる……俺とミリア、さらにアルザとパメラ……四人は揃って屋敷を出た。そして魔法の明かりを屋敷入り口で使用した際、足音と近づいてくる戦士団の面々を肉眼で捉えた。


「……さすがに、そちらも気付いていたか」


 と、先頭を歩く戦士……マレイドが声を上げた。


「それでも逃げなかったのは褒めてやろう」

「逃げたら追ってくる気だろ? さすがにそうなったら住民に被害が及ぶかもしれないからな」

「迷惑を掛けないことを優先したか。だが、周りを気に掛けている余裕が果たしてあるのか?」


 戦士達は剣を構える。大半は俺達と対峙する形だが、後方にいる五人程度は屋敷入り口周辺を見て回っている。退路を断つほか、見張り役らしい。


「そして、初めて見る顔もいるな」


 と、マレイドはミリアやパメラへ目を向ける。


「ディアスに同行している剣士についてはわからないが……パメラまでいるとはな。自分は関係ないと無視を決め込むのではと考えていたが」

「戦士団の評判は聞いてるよ。ずいぶんとご活躍しているみたいで」


 完璧な嫌みに対し、マレイドの顔がわずかに歪む。


「ま、どこかで一発ぶん殴ってやらないとまずいかな、とか思っていたし、これはこれでいいんじゃない?」

「勝つ気でいるのか? おめでたい奴だな」


 そして複数の戦士がマレイドの前に出た。握りしめる剣からは魔力が発露し、彼らの表情は狂気に捕らわれているかのように血走っていた。


「英傑クラスが二人……それを相手にする以上、相応の準備をしていると何故わからない?」

「そっちが無い知恵絞って準備したのはわかるよ」


 と、パメラは挑発的な言動でマレイドへ応じた。


「でもまあ、魔王と戦った兄ちゃん相手にはそれでも力不足じゃないかな?」


 ……たぶんだけど、パメラの方も武器を含めた相手の力量を察しているな。わかっていないのは他ならぬ戦士達本人……俺達は戦士団と顔を合わせた際、気配を押し殺して力量を悟らせないようにした。これは達人級の剣士とか、魔族相手では通用しないけど……戦士団には通用した。

 気配を押し殺したことさえもわかっていないというわけだ……挑発を受けてマレイドはさらに顔を歪ませる。


「わかった、問答は不要というわけだな。であれば、思い知らせてやる」


 屋敷の時、ポーカーフェイスを見せていた面影はなく、憤怒の表情でマレイドは告げる。自身も魔族由来の剣を握っているため、感情を制御する余裕がない、ということらしかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ