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険悪な態度

「俺が色々と戦士団について情報を聞き回っていることから、ここに呼んだみたいだが」


 と、俺はマレイドへ臆することなく語り出す。


「どういう用向きがあって呼んだ?」

「逆に問うが、そちらはどういう理由で戦士団のことを調べていた?」


 質問に質問で返してきた。なおかつその雰囲気は……敵意が確実にある。

 うーん、正直ここで喧嘩をするつもりはないのだが……そもそも、現段階だと別に犯罪をしているという確たる証拠もないわけだしなあ。


「……調べていた理由については、単なる興味だよ」


 俺は涼しい顔のまま、マレイドへ言及する。


「もしかすると俺達の所へ来るかもしれないって思っただけさ」

「それは自分が英雄だからか?」

「先に言っておくけど、別にチヤホヤされたいわけじゃないからな。単に同じ戦士として、何か話をする機会でもあるかと思っただけさ」

「ほう、なるほど」


 納得したような声を上げるマレイドだが、態度は相変わらずである。わざとそういう態度を見せてこちらを煽っているようにも見受けられるが……俺やアルザがまったく反応していないため、なんだか滑稽に思える。


 で、こちらの態度が変わらないことで戦士達は苛立った様子を見せる……ふむ、この様子だと悪い態度を見せ俺達に嫌な印象を持たせて因縁を作るのが目的だったのだろうか?


「……で、再度質問だがどういう用向きだ?」

「この戦士団をどうする気だ?」

「別に、特に何も考えていないけど」


 こちらの返答にマレイドは眉をひそめる。


「戦士団の評判は聞いているが、その内容については『蒼の王』に所属している人達が吟味するべきであり、俺が立ち入るような要素は一片もない。まあ、何かしら犯罪でもやっているなら話は別だけど、そういう場合であってもギルドとかから正式に対処依頼でもない限りは、特に干渉するつもりはないな」


 戦士達はさらに険悪な目つきをする。こちらは手出しするつもりはないと言っているのにこの態度である。やはり何かしらの理由をつけて干渉する気だったようである。


 しかし、それにしたってやり方が雑だな……ただ俺自身、内心では何かしらできないかとは考えている。この場にいる戦士達はマレイドを含めて『蒼の王』戦士団における上層部の面々だろう。その態度を見る限り、俺達に対する作戦の立案はマレイドがやって、上層部のメンバーはそれに賛同している様子だ。


 ということは、もし戦士団そのものを変えるならば上層部をまとめてたたき出すしかなさそうだ……こういう結論が得られたのは収穫と言うべきか。


「……犯罪、か」


 マレイドが呟く。そこで俺は肩をすくめ、


「裏でヤバい薬でも作っているとか、そういうのでなければ別に……ああ、ただ」


 と、俺は少し目つきを鋭くする。


「例えば魔族と手を組んでいる……もしくは魔族由来の武具を持っているとかなら、少し話は変わってくるな」


 ――マレイド達は特に反応はしない。ただ、戦士の中にはマレイドへ目を移す人もいた。何か心当たりでもあるのか、それとも他に要因があるのか。

 とはいえ、態度からする何か一波乱ありそうだな……マレイドへ視線を送るが彼についてはまったく表情を変えない。感情を悟らせないようにしている。演技は上手いらしい。


「ねえねえ」


 ここで、ふいにアルザが口を開いた。


「せっかくだし、屋敷の中とか案内してもらったらどう?」


 ……この状況でそれを言うのかと、思わず苦笑しそうになった。彼女の言葉はつまり、何もないのであれば別に屋敷内を確認しても問題ないよね? ということを言いたいわけだ。

 その意図が伝わったのか戦士達は明らかに表情が変わる。正直、今にも飛びかかってきそうだが……俺達と相手の距離二歩分くらい。近距離ではあるしつかみかかられたら面倒だけど、まあどうにか対処はできる――


「いいだろう」


 と、マレイドはアルザの言葉に応じた。


「こちらが招いたのだから相応のもてなしはしないといけないな。誰か案内しようという者はいるか?」


 周囲にいる戦士に問い掛けると、やや間を置いて一人の男性が手を上げた。


「なら、彼に屋敷内を案内させよう」

「この屋敷に団員はいるのか?」


 俺の質問に、マレイドは小さく肩をすくめ、


「全員常駐しているわけじゃない。ギルドへ赴き仕事をしている人間もいるからな」

「そうか……」


 ふむ、屋敷内を見て回って何かわかることはあるだろうか……俺は彼らの動きなどについても注目しなければいけない、と考えつつ案内役の戦士が歩き出したため、部屋を出ようとする。

 その時、俺は背中越しにマレイドが視線を送っていることに気付いた。単なる視線であれば、気付くのは難しかったが……明らかに視線は魔力を帯びている。やはり何かある……そんな予感を抱きながら、俺は部屋を出たのだった。


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