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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第一章

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決闘

 ――翌日、宿の一室で支度を済ませ、朝食をとって店を出た。ちなみにまだチェックアウトはしない。今日の決闘で怪我でもしたら、この町に滞在するかもしれないので。

 ミリアは俺に黙ってついてくる。英傑との戦い……それがどのようなものであるのか、興味津々といった様子だった。


 一度町を出て、東へ足を移す。街道から逸れて辿り着いたのは、森に囲まれた草っ原だ。どうやら事前に結界を編んだらしく、周囲には魔力が漂っていた。


「ようこそ」


 そしてシュウラが俺達を出迎えた。ここで俺は周囲に目を凝らし、


「人よけと遮音の結界か……」

「このくらいは最低限必要だと思いまして。地形が壊れた場合の修復についてもお任せください」


 ニコリとしたシュウラは直後、一転して目つきを鋭くする。


「では、始めましょう」

「ああ……ミリア、立ち会いを頼むよ」

「わかった」


 彼女は俺達の横へ移動する。それと共に、こちらは杖を構えシュウラと対峙する。


「互いに手の内がわかっている状況だからな……さて、どう出る?」


 次の瞬間、シュウラは手をかざした――彼の武装は杖でなく、腕輪。両腕にはめられた腕輪に魔力を溜め、魔法を発動させる。

 発動した瞬間、彼の周囲に多数の光の槍が生まれた――例えばセリーナの魔法は着弾したら大地が焦土と化すような、無差別で広範囲に影響を及ぼす、とにかく見た目的にも派手な魔法が多い。それは言ってみれば持って生まれた才覚によって裏打ちされたもので、文字通り人間離れした魔力によって発動するものだ。


 それに対しシュウラは、魔力そのものは一般人よりは当然多いにしろ、魔力量そのものが他の魔術と比べ特別秀でているわけではない。そこは俺も同じで、だからこそ強化魔法を活用し味方を強くするというのを主軸にしていたのだが、彼は違う。

 その答えは、綿密な技術によって構築された魔法。光の槍一本でも、魔族を容易く刺し貫くほどに練り込まれた魔力。派手さはないが、一撃もらえばそれだけで致命的になる……技術により、英傑に一人に選ばれたのだ。


 光の槍が多数、俺へ向け放たれる。それに対しこっちは杖を振り、無詠唱魔法によって光の矢を生み出した。

 とはいえ、魔力の練り上げ具合や収束の規模を考えれば力負けするのは明白……! だが俺は杖を振り魔法を解き放った。途端、真正面で爆音が響き、光が周囲を満たす。


 その間に俺は魔力を探り魔法の激突がどうなったのかを悟る。こっちの魔法によって槍の魔力を大きく削った……が、迫ってくる! 瞬きすらできない時間で、俺の胸元にまで魔法が迫る――


「ふっ!」


 すかさず声を発し、全身に強化魔法を施し……光の槍が飛んできた。俺はそれを杖をかざし……まずは、たたき落とした。

 続けざまに二本、光が迫るが俺はそれも杖で弾く――光の矢で相殺したからこそ、受け流すことができている。もし完全に魔力が練り上げられた状態だったらこう上手くはいかない。槍の勢いに押しのけられていたはずだ。


 もっとも、シュウラはさらに攻勢を強めるはずだ。なおも飛んでくる槍を俺は全てでいなして……まばゆい光が消えた。

 目前にあったのは、両手をかざし次の魔法を発射しようとするシュウラの姿。その周囲には先ほど放った光の槍に加え、無数の光弾。色は赤、青、緑と多種多様で、おそらく着弾すると様々な効果があるのだと推測できた。


「容易く防がれるとは……」

「いやいや、結構ギリギリだぞ?」


 俺は軽口で応じるのだが、シュウラ自身はそう思っていないようで……魔法が、一斉に解き放たれた。

 座して待てば、どれだけ強固な結界でも対応は不可能――俺は次の一手を即座に決め、まずは杖をかざして真正面に薄緑色の結界を構築した。


 無詠唱ではあるが、結界魔法は仲間を守るために練度も高く、調子が良ければセリーナの魔法を一度防ぐくらいの強度にはなるのだが……光の槍が多数突き刺さった瞬間、ヒビが入り結界は砕け散った。

 とはいえこれは想定内……ほんのわずかに魔法の動きを鈍らせる間に、俺は下半身に強化魔法を施した。その狙いは、


「はっ!」


 声と共に、駆ける。魔法を避けるように左側から迂回し、シュウラへ接近するつもりだった。結界を貫通し地面に魔法が着弾する音がする。既に俺はそこにはおらず、光を抜けシュウラの懐へ潜り込むべく加速する。

 それに対し相手は――視界に映した瞬間、突撃する俺へ右腕をかざして魔法を放とうとしていた。こちらの動きは想定済みということ。しかし多数の魔法を解き放った影響で、次の魔法発動までに多少の隙が生じていた。


 これなら俺の方が速い……そう判断した俺はさらに加速する。光の槍が生み出され、それを解き放とうとした瞬間――俺はとうとう、シュウラを杖の間合いに入ることに成功した。


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