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蒼の王

 ロスラがノックの音に返事をすると、ここを訪れた時に対応した女性。


「お客様が……その、ディアスさんに」

「俺に?」

「戦士団の者だ、と」

「……俺が色々嗅ぎ回っているのに気付いたか」

「面倒事があっちから舞い込んできたね」


 ロスラはうんざりするように告げる。


「ディアス、どうする?」

「そうだな……そういえばミリアとアルザは屋敷に戻ってきているか?」

「ミリアはまだ外だね。アルザは戻ってきているよ」

「ならアルザに声を掛けて会ってみるよ……相手の反応も気になるからな」

「二人で大丈夫かい?」

「まあ問題ないだろ。懸念はこの屋敷へ干渉してくる可能性だけど」

「それなりに自衛の手段も用意しているし、もし何かあってもまあ……対応できるんじゃないかな。あと」


 と、ロスラはここで笑みを浮かべた。


「僕自身は別にここで戦闘になっても構わないけど?」

「……好戦的だよな、ロスラも」


 俺は小さく息をついた後、部屋の扉に手を掛けた。


「なら、心置きなく行動させてもらうよ……ただ、俺達が留守中は念のため気をつけてくれよ」






 アルザの部屋を訪れて事情を説明したら、彼女はあっさりと同行することを承諾して屋敷を出た。そこで難しい顔をした若い戦士が一人。


「で、どこに案内してくれるんだ?」

「……ついてこい」


 こちらの言葉にそう答えた戦士は、俺達に背を向けて歩き出す。こちらが動き出しているのも見ない様子であり、少なくとも歓迎されていないことがわかるな。

 まあ俺達としても友好的に接するつもりは微塵もないけど……俺とアルザは黙ってついていく。戦士は早歩きでこちらが意識しないと置いて行かれそうな感じでさえあったのだが……やがてずいぶんと敷地の広い屋敷へと辿り着く。


 外観は真っ白で結構よさそうな雰囲気ではあるのだが……ロクに手入れをしていない庭園とか、よくよく見ると外装とかが汚れっぱなしの屋根とか、どこか荒れた様子も見え隠れしている。

 まあ戦士団が屋敷のメンテなんてやるはずがないもんな……などと胸中で呟く間に、俺達は屋敷の中へ通される。案内する戦士はそれでもなお真っ直ぐ進んでいき……やがて廊下の突き当たりにある扉の前に立つと、ノックをした。


「開いている」


 中から声がしたと思ったら、案内役の戦士は扉を開けて俺達を見た。


「どうぞ」


 ただ一言。相も変わらず無愛想な様子に俺は辟易しつつも中へ入る。

 そこは事務室……みたいなのだが、エーナの執務室のように書類の束があるようなわけではない。仕事をする机はあるのだが、そこには物がほとんど存在しておらず、代わりに数人の戦士が立っていた。


 そして椅子に座っているのが……紫色の髪を持つ、俺のちょっと下くらいの見た目を持つ男性。


「ようこそ、英雄ディアス、剣士アルザ」


 俺達のことはリサーチ済みというわけか……こちらは「どうも」と返事をして、


「わざわざ屋敷に招いたのは理由があるのか?」

「ああ、もちろん。帰郷しているという噂を聞いて是非とも挨拶をしたいと思ってね……と、自己紹介をしなければ。戦士団『蒼の王』団長であるマレイド=アーザックだ」


 マレイドは笑みを浮かべる……が、それは懐にナイフを隠し持っているかのような雰囲気が確かにあったし、相手は隠そうともしていない。わざとこちらへ示している。


「それはどうも。とはいえ、挨拶だけではなさそうだな」


 こちらの言葉に、マレイドの周囲にいる戦士達の目つきが鋭くなる……敵意丸出しだな。


 この戦士団が俺やアルザのことを知ってどう対応するのか……という疑問はあったし、色々と可能性はあった。例えば俺達と干渉するとまずいとして俺達が去るまで穏当に過ごすか、あるいは媚びを売ってくるか。

 とはいえ目の前の彼らはそのどちらでもない……敵意むき出しの戦士達と、不敵な笑みを浮かべるマレイド――彼の目は、俺を見据え獲物が到来したかのような雰囲気があった。


 これはつまりどういうことかというと……俺達に取り入るのではなく、俺達を倒してその力を証明してのし上がろうという意図である。

 戦士団は基本血の気が多い連中の集まりではあるので、ことあるごとにどちらが上か、と喧嘩が勃発することはあった。あまりにひどい場合は決闘で決着をつけろとか、そういう展開もあり得る。


 俺が『暁の扉』在籍時にも色々と挑戦者が現れた。俺はあくまで魔法使いであるため頻度はそう多くなかったけど、以前決闘を申し込んできたシュウラのような光景も確かにあった。

 そして目の前のマレイドに加えて周囲の戦士達の敵意は、そういう目論見なのだと確信させられる……とはいえ俺もアルザも涼しい顔。正直、魔族などと比べればたいしたことのない殺気だし、正直こんな状況でも負ける気はしないのだが……相手はどうやらそうは思っていない様子。


 単に世間知らずなのか、それとも何かしら策があるのか……疑問に思いつつ、俺はマレイドへ向けさらに話し掛けた。


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