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女剣士

「噂をすれば、だな」


 道場主が声を上げた矢先、ドタドタと道場に入ってくる人影が一つ。その姿は女性であり、


「やあっ! やってるか――」


 と、威勢のいい言葉と共に俺達の存在に気付いたらしい。こちらが首を向けると相手は、


「あれっ!? 兄ちゃんじゃないか!! 久しぶり!」

「……その兄ちゃんというのはやめてくれ。そっちだって、そんな呼び方をする歳でもないだろうに」


 頭に手をやりながら話す俺に対し、彼女――パメラ=ウィンレーは、豪快な笑い声を上げた。






 彼女との関係は平たく言うと、年の離れた妹。俺と八歳違いの彼女は、俺がこの町を出た時、子供でありながらずいぶんとたくましく生きていた。

 というか、同年代の子供と喧嘩した場合執念で勝利して支配下に置いていた……ガキ大将みたいな存在であり、そういう子供がいるということが、俺の耳にも入っていたくらいだ。


 彼女も開拓の町ならではの悲劇に見舞われた孤児の一人であり、それでいて笑顔を絶やさず生きていた……傍から見ればまぶしいほど生き生きとしており、だからこそ色々な人から注目されていた。この子は将来どうするのだろう、と。


 結果から言うと、彼女は俺と同じ十五という年齢で冒険者となった。彼女曰く「学んだ剣術を試したかった」そうだ。それだけの理由で無茶苦茶な世界へ飛び込んできて、小さい頃の面影がある彼女の姿を見て、俺は仰天した。


 そしてパメラは色んな戦士団を渡り歩きつつ、自由な冒険者稼業を続けている……ちなみに魔王との戦いには参加していなかった。軍に加われるだけの実力を有していたはずなのだが、召集命令が出た時点で彼女は王都から極めて遠い場所にいた……つまり、参戦に間に合わなかったのだ。


「そういえば、噂は聞いたよ」


 ニヤニヤとしながらパメラは俺へ近づき、発言する――その格好は、典型的な剣士スタイル。腰に剣と革製の鎧……その下に着る衣服で手のひら以外を覆っており、ついで言うなら両手には白い手袋をはめている。


 特徴的なのはその髪。緑髪――艶のある黒ではなく、文字通りの緑色をした髪を持っている。確か以前顔を合わせた際は腰くらいまで伸ばしていたのだが、今は異なりショートカットになっている。


「魔王を倒す部隊の一人だったんだって?」

「そういうパメラは参戦できなかったな」


 と、応じたところで彼女は突如申し訳なさそうに肩をガクッと落とした。


「うん、そうだね……」

「もしかして気にしているのか?」

「そりゃあ、それなりに功績積んで冒険者ギルドから連絡が来るくらいにはなっていたんだし……あとちょっとのところで、間に合わなかった……」


 そう返答した直後、すぐさま彼女は表情を戻し、


「でも、考えを改めた。なんでも現在、魔族は攻撃を仕掛けている……そうした騒動を解決すれば、あたしも名を上げることができるかもしれない、と」

「それでガルティアに戻ってきたのか?」

「拠点探しってところだね。だってほら、王都に拠点を構えるにしてもお金がないし」

「戦士団には所属していないのか?」

「今はフリーだね」


 ふむ、なるほど……こちらが彼女の状況をおおよそ理解すると、今度はパメラから質問が飛んできた。


「兄ちゃんはどういう経緯でここに?」

「だからその呼び方は……いや、言っても聞かないだろうからいいや。俺は――」


 ここで簡単に解説を行う。ただミリアの素性については話をせず……で、説明していくとパメラの顔がどんどん曇っていく。


「……兄ちゃん、魔王との戦いでは飽き足らずまだ首を突っ込んでいるの?」

「いや、別に率先してやっているわけじゃないんだけどな……」


 じーっと俺のことを見据えるパメラ。これはもしかすると「俺と一緒に旅をすれば、事件に遭遇して名を上げることができるのでは?」という雰囲気である。


 ――パメラの行動目的としては、名を売ることが大きな意味を持っている。有名になりたい、というよりは歴史に名を刻みたいという思いが強いらしい。その理由は「面白そうじゃない?」という短絡的というかものすごい簡潔な理由なのだが……。


「……先も言ったけど俺の目的は自分探しだ」

「でも魔族と戦っているじゃん」

「それは色々とあってだな……ともかく、まあ色々な理由があって帰郷しているけど、今後はもう少し落ち着くつもりだ。それに話が大きくなりつつあるし、国も動いているからな」

「……国かあ」

「パメラは関わりなかったっけ?」

「国と組めればいいんだけどなあ……」


 元来、アルザと同じように一匹狼みたいな立ち位置だからな。とはいえアルザは退魔の能力を有しているため、魔族や魔物との戦いで有名になった。

 一方パメラは特殊な能力などは持っていないのだが……と、ここでパメラの視線はミリアへと向けられた。


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