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生き方

 俺達はロスラの屋敷で厄介になることとなり、今後のことをまずは相談した。魔族アヴィンの情報を得る……その点についてはロスラが動いてくれると確定したため、俺達がわざわざ何かをやる必要性がなくなったわけだが、


「あなたの生い立ちを聞いて思ったのだけれど」


 と、ミリアが俺へ向け告げる。


「剣術道場……そこに行けば、私の技量面について、何か変化はあるかしら?」

「なるほど、道場か……現在運営している人間と顔を合わせてみて、頼んでみるか」

「お願いするわ。あ、お金については私がなんとかするから」


 別にその辺りはいいんだけど……と思ったが、彼女のことだから「その辺りはしっかりした方がいい」と考えているだろう。


「わかった。なら明日は剣術道場へ……アルザはどうする?」

「町を見て回ってもいい?」

「構わないけど、大したものはないぞ」


 と、意見してみるが彼女はそれでも行く様子だったので、明日はアルザだけ別行動、ということとなった。

 そして屋敷で一泊する……のだが、眠る前に色々と考え始める。あてがわれた客室のベッドに腰掛け、旅を始めて以降のことを思い返す。


 とはいえ、やっていたのは魔族や魔族との戦い……ここに来てようやく足を止め、自分探しに終始するということに……いやまあ、肝心の方法についてはまだよくわかっていないのだが、


「ミリアを剣術道場に案内して、俺はどうするかな」


 そこで知り合いと話をするだけでも意味はありそうだけど……色々と頭を悩ませていると、部屋にノックの音が。


「はい?」


 返事をしつつ扉を開けると、ロスラが立っていた。


「少し飲まないか?」

「……ああ、わかった」


 俺達はそこから食堂へ赴き、向かい合う形で酒を飲み始める。


「二人も仲間を引き連れているのは意外だったな。旅をするなら一匹狼と思っていた」

「まあ色々と理由があって、だな……それに、これはこれで楽しいと思えるし」

「旅そのものは楽しいのかい?」

「といっても、魔物や魔族討伐に始まりダンジョン攻略とかやっていたからなあ」


 そこまで言うとロスラは笑う。


「生き方は変えられていないようだね」

「これが俺の生き方、なのか?」

「戦士として活動し続けていたのであれば、むしろ正しい姿と言えるのかもしれないが……ただまあ、反魔王同盟なんて魔族の陰謀に首を突っ込もうとするのは、あまり感心はしないな」

「危険だから?」

「そうだね。後ろ盾がなくなっている以上、あまり危険な場所に身を置くべきではないと思うよ」


 そう述べながらロスラは酒を一口……彼としては俺の無茶を止めたいと考えているのだろうか。


「ディアス、ガルティアに身を置く可能性はあるのかい?」

「……故郷へ戻る、というのも旅をし始めた時に考えたけど、ここに俺の居場所はない。そもそも住まいすらないからな」

「だからといって、足を休める場所は他にないのでは?」

「旅の果てにそういう場所が見つかるかもしれないし、ある意味そういう場所を探しているという面だってあるかもしれない」


 俺の言葉にロスラは沈黙する。


「心配してくれているのは嬉しいけど、俺は俺なりに上手くやるからさ。それに、ミリアやアルザもいることだし、無茶はしない」

「……そうか。もし何かあれば遠慮なく頼ってくれていい。とはいえ魔族に狙われるなんて事態の場合、僕の所では心許ないな」

「おとなしく王城にでも駆け込んだ方がよさそうか?」

「それができそうなら、そっちの方がいいだろう……ディアスほどの功績なら、王城に入っても相応の地位に就くことだってできただろうに」

「他ならぬ俺が面倒だなと思ったからな……それに、俺が宮廷に入ったら嫌な顔をする人間もいるし」

「セリーナのことか」


 ――彼は魔法研究家ということでセリーナとも面識がある。彼女の顔を思い出したのか小さく肩をすくめ、


「ディアスから因縁云々は聞かされたけど、なんというかよく魔王との決戦で組めたね」

「確執があったとしても、戦わなければならない存在だった……ってことさ。俺は追い出される形で戦士団を離れて、どうやらその影響が色々とあるみたいだが……ま、後はセリーナがどこまで頑張れるか、だな」

「もしかして、セリーナのことを心配しているのかい?」

「対立していても、仲間だったからな」

「お人好しだねえ」


 呆れたようにロスラは呟くと、グラスをテーブルに置いた。


「ただ、その顔を見ていると……いずれ決着をつけなければならない、という風に考えていそうだ」

「そうだな……もっとも、セリーナとしては俺の顔も見たくないだろう。その時期は、近い内にというわけではなさそうだ」

「ディアスとしても、何か引っかかるものを感じているのかい?」

「どうだろうな……ただまあ、俺が旅をしてその果てに……セリーナとの決着というのは、果たさなければならないことかもしれない」

「死闘になりそうだな」

「かもしれない」


 俺はふと、彼女を含め英傑のことを思い出す。


 エーナはクラウスに冒険者ギルドで巻き起こった騒動の報告をすると言っていた。そこでセリーナとも顔を合わせるだろう。俺が戦いに参加していたと聞いたら、どんな風に思うのだろうか――


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